キャデラックATS上級グレード日本発表!ぶつからないどころか自動操縦の領域に踏み込んだ!

走りが凄いと評判のキャデラックATSに、大本命のグレード「プレミアム」が追加されました。

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 3月初旬にすでに販売が開始されたATSラグジュアリーに18インチホイールとサンルーフ、パドルシフト、減衰力可変サスペンションシステムの「マグネティック・ライドコントロール」、そして「オートマティックブレーキ」などの先進的装備を追加して、なんと60万円しか車両本体価格が変わらない消費税込み499万円という戦略価格!

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オートマティックブレーキはスバルで言うところのアイサイトみたいなもの、と思われるかもしれませんが、いまや149万円のVW UP!にまで搭載されているわけですから、その程度で大騒ぎできるようなご時勢ではありません。

ATSプレミアムに搭載されるオートマティックブレーキは、後退時でも効くのです。バックで障害物を感知した場合、シートの座面で警告の振動が起りますが、それを無視してまだ下がり続けるとサイドブレーキによる強烈な制動がかかります。GMの広報の方のお話によると「あくまでも補助的なもので被害を軽減させるもの」ということですが、実際にこれを体験すると補助というにはあまりにも強烈な制動で、本当にガッツリと止まります。あまりにも強烈過ぎてビックリするとともに、今後はこれを効かせない様に慎重にバックするだろうな、という気分にさせることで安全を啓蒙できるのではないかと思います。

そしてATSプレミアムには、このオートマティックブレーキのテクノロジーとクルーズコントロールを組み合わせた画期的な機能が追加されています。それが「アダプティブ クルーズ コントロール」。

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走行中にクルーズコントロールをセットすると一定の車速で走行しますが、前車との車間距離で速度を調整し、なおかつ前車が停止すると安全な車間を保ったままこちらも停止する、という驚きの機能。この間、ブレーキもアクセルも一切使っていないのです。そして再発進もクルーズコントロールのスイッチを押すだけ。すると設定車速まで加速し、前車との車間距離が狭まれば減速するということを繰り返します。

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 大磯プリンスホテルの駐車場でレクチャーを受けた後、西湘バイパスで実際に「アダプティブ クルーズ コントロール」を使ってみましたが、その精度の高さには驚きです。70km/hに設定しても前車が50km/hで走っていればこちらも50km/h走行。前車が出口から西湘バイパスを降りるとすぐさま70km/hに加速し、ちょっとした渋滞で追いついた前車が停止すると、こちらも安全に停車します。基本的に安全な車間距離を保つと、心無い他車に割り込まれてしまいますが、その場合でも有効な安全車間を確保するために減速を行うという安全重視なプログラミング。そもそもクルーズコントロールを使っているような状態で目くじらを立てて前者との車間を詰めようなんて方はいないと思いますので、このセッティングは極めて有効ではないでしょうか。

休日にちょっと出かけようと思えばすぐに渋滞する日本。この「アダプティブ クルーズ コントロール」はそんな渋滞にこそ真価を発揮しそうな機能といえるでしょう。

そして、この「アダプティブ クルーズ コントロール」は、運転制御テクノロジーがすでに自動操縦の領域に入ってきた、ということを示していると考えます。

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 驚愕の安全機能とともに注目な装備が減衰力可変サスペンションの「マグネティック・ライドコントロール」。旅行、スポーツ、スノーと3種類のモードがあるのですが、旅行とスノーはサスペンションの設定は同じでオートマティックトランスミッションの設定が変わります。そしてスポーツは足回りがビシっと引き締まって、なおかつATがエンジンの高回転を使うように引張り気味の設定となります。

その「マグネティック・ライドコントロール」を搭載したATSプレミアムを箱根ターンパイクで走らせて見ました。

「マグネティック・ライドコントロール」は減衰力が切り替え式ではなく可変式というところがポイント。車速に伴う前後左右の重量変移に合わせてサスペンションをコントロールするので、ドライバー側が受ける印象はそのモードごとで常に一定に近いのです。旅行モードは乗り心地重視で柔らかめではありますが、ターンパイクの各コーナーを、どんな車速で走っても同じくらいの柔らかさで通過します。多くの方がキャデラックに持っている印象どおりの柔らか設定ですからあまり飛ばそうという気にはなりませんが。

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スポーツモードはATSプレミアムの基礎的なダイナミック性能を考えると筆者では評価しきれないので、clicccarではスーパー耐久のNOPROデミオでお馴染みの野上達也選手にドライブしてもらいました。

「(スポーツモードは)ロール量が極端に減ります。固いというよりは引き締まる印象。固くなったからといって脚の動きが制限されているわけではなく、懐が深いというか、脚自体はすごくよく動いてタイヤが路面を掴む感じがよくわかります。ラグジュアリーのオールシーズンタイヤからプレミアムは18インチのポテンザ050に変わっていましたが、そのグリップをかなり引き出せているという印象でした。」

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筆者自身もスポーツモードでドライブしましたが、一気に引き締まる脚の感じは凄いの一言。どんな状況でもタイヤを食いつかせようとする可変式サスペンションの所作は、旅行モードのドライバー重視とは逆に、性能重視になっているという印象。車重1580kg、出力272馬力、ブレンボのフロントブレーキ、18インチのポテンザ050とスポーツカー以上のスペックを持つATSの「本気モード」として捉えれば、スポーツモードは決して大げさではないセッティング。この脚とブレーキは箱根ターンパイクの下りでも、一切の不安を覚えません。

旅行モードの足回りでは「アダプティブ クルーズ コントロール」で快適で安楽に、そして安全に目的地に移動し、スポーツモードではその性能をフルに発揮してホンキで攻めることができるというキャデラックATSプレミアムですが、本当に信じられないことが499万円という価格。欧州ライバルにこれだけの機能が付いていれば余裕の600万円オーバーは間違いなし。それが499万円で手に入るとなれば、キャデラックATSプレミアムは、プレミアムDセグメントの大本命であることは間違いないと言えるでしょう。

(文・写真:北森涼介)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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