ホンダはN-BOXの快進撃に続き、軽市場のド真ん中めがけて、新型N-ONEを送り出してきました。昭和のN360をモチーフにしたデザインは、とても新鮮で魅力的に映ります。しかしその背景には「フィットを超えろ!」という大号令の元、軽事業を刷新したホンダの「日本のものづくり」戦略がありました。
■開発陣の合言葉は、フィットを超えろ!
これまでホンダが、軽市場で低迷していたのは、軽の生産効率と商品力が決定的に不足していたためでした。一方で、ダウンサイジングが加速する国内市場では、軽のシェアは更に拡大すると判断。そこでNシリーズ開発責任者の浅木LPL(ラージプロジェクトリーダー)は、ホンダの軽事業を抜本的に見直し、最新プラットフォームから多品種を産み出すことで生産効率と商品力強化の両立を図ったのです。しかも新型N-ONEでは、開発陣に「フィットを超えろ!」と大号令をかけたのですから、生半可な覚悟ではありません。実は、ホンダ軽事業の存亡を掛けた大勝負だったのです。
■ダウンサイジングには割安な税適用と高い品質が不可欠
N-BOXが子育てファミリー層向けなら、新型N-ONEはその前後世代の若者とシニア層がターゲットです。難しいのは、目の肥えたシニア層に選んでもらうこと。そこでN-ONEでは「軽のプレミアム」を目指し、軽を感じさせないデザインと質感、大人4人がゆとりを持って過ごせる室内空間と静粛性を実現しました。更にターボを「ダウンサイジング・ターボ」と位置づけ、走りの質感を高める排気量増幅装置として活用。軽の割安な税適用を受けつつ、1.3Lのフィットを凌ぐ走行性能を実現したのです。
■懐かしさと新しさが融合したデザイン!
「昔のデザインをやってはいけない」というホンダの伝統や「ワゴンRやムーブに対応できるクルマが欲しい」という要望が渦巻く中、N360のモチーフを採用するには紆余曲折があったとのこと。浅木LPLは「俺たちは軽ではなく新しいスモールを作って新たな市場を開拓していく。ライバルを追いかけても無意味だ。」と主張し、「真似ただけならゾンビカーだが、N-ONEはN360のデザインと志を引き継いだヘリテージカーだ。」という信念を貫いたのです。まさしく昭和世代には「懐かしさ」を、平成世代には「新しさ」を感じさせる魅力的なクルマに仕上がっていると思います。
日本の自動車産業は、リーマンショックと超円高の影響で、国内販売と輸出の減少に見舞われ、産業空洞化が進行してしまいました。浅木LPLの「日本のニーズに合っているのは軽自動車。ホンダの国内戦略は、日本のものづくりと雇用を守ることにもつながる。」というコメントに、「日本企業としての誇り」と「ホンダ魂」を感じずにはいられません。頑張れ、NEW NEXT NIPPON NORIMONO!
■新型ホンダN-ONE
http://www.honda.co.jp/N-ONE/
(拓波幸としひろ)