「自然吸気エンジン×アイサイト」のレガシィのB4とツーリングワゴンをベースにしたSTIのコンプリートカーが「レガシィ2.5i EyeSight tS」。
「Rシリーズ」や「Sシリーズ」もあるSTIコンプリートカーのなかで、「tSシリーズ」はエンジンはノーマルのまま足回りにSTI流の味付けを施したコンプリートカーという立ち位置です。
乗ってみると、コーナリング時の不安定なロールや加減速&路面の段差による車体の揺れが上手に排除されていてひとことでいうと「落ち着いた乗り味」になっているのが印象的。サスペンションは硬められているのですが、路面からの衝撃もしっかりと吸収するから乗り心地が悪くないのはさすがです。これなら普通にファミリーカーとして使えますね。
正直に言うと速度の低い領域で車体の上下動はノーマルよりも大きめに思えましたが、速度が増すほどフラット感が高まっていく、高い速度域にスイートスポットを設定する欧州車のような雰囲気でした。
そんな「レガシィ2.5i EyeSight tS」の、ベース車の「2.5i EyeSight S Package」に対する価格アップは70万円弱。
たしかに安い額ではありませんが、実はバーゲンプライスなのです。
その理由は、装着されているアイテムの多さ。
STIチューニングのビルシュタイン製ダンパーやバネなど足回りにはじまり、18インチホイールやタイヤ、そして専用仕立ての内外装などSTIのモデファイは多岐にわたり、部品単体として計算すると金額は100万円を超えてしまうのです。そして、取り付けるには工賃だってかかりますよね。
それが、コンプリートカーとしてベース車+70万円弱なのだからお買い得すぎというわけなのですよ。
でも、その割安感はこのクルマの魅力のほんの一部。
最大の魅力は、部品を取り付けただけでは実現できない味に仕立てているという事実です。
乗り味を作っている足回り部品に関しては、スペック表に掲載されているのはすべて市販品。しかし開発スタッフによると「その部品を装着しただけでは、コンプリートカーの8割の味付けにしかならない」のだそうで。
なぜなら、コンプリートカーにはスペック表にかかれていない隠し味が使われているから、なのです。その隠し味が「あとの2割の味付け」ということですね。
それらの隠し味を部品でいえば、ブッシュやブラケット、そしてボルトといった細かいもの。それらを加えてトータルでチューニング(=調律)することにより、はじめてSTIコンプリートカーの味が出せるのです。
(工藤貴宏)