「運転が上手になるクルマ」でした【スバルBRZ試乗レポート】

先日、サーキットでスバルBRZを試乗することができました。そこでのインプレッションを紹介したいと思います。

まず、乗り込んでみると視界が良好なのが好印象です。左右のフロントフェンダーの山も見えますし、サイドミラーごしにリアフェンダーの膨らみが確認できます。前後のタイヤの位置が把握できるので、車両感覚がつかみやすいですね。また心なしかAピラーも細く感じます。運転になれていない人でも、BRZに馴染むのにそれほど時間はかからないでしょう。

ステアリングの操舵には、それなりに力が必要です。またブレーキも重め。ブレーキに関しては、最近よくあるサーボの強いもの(ちょっと踏むとガク!とものすごくよく効くブレーキ)ではありません。一瞬、「ブレーキ力が足りないのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、しっかりと強く踏めば、それに応じてブレーキ力も強くなります。ちなみに、サーキットでリミッターが効いている速度から一気の減速を4~5回繰り返しましたが、フェードもせずにフィールはほとんど変わりませんでした。17インチ仕様ですが、ノーマルブレーキの性能の高さに、ちょっと驚きです。

水平対向エンジンのサウンドは、歯切れ良く乾いた勇ましいものです。レッドゾーンの7000回転までスムーズに回り、トルクは下からフラットに出ています。ドラマチックではありませんが、なかなかに速度のノリが良くて、アクセルを踏み続ければスピードメーターの数字はリミッターがあたるところまでスルスルと伸びてゆきます。2リッターNAマシンとしては、十分な速さでしょう。

コーナーにちょいオーバースピードで飛び込めば、リアがブレイクしますが、流れるスピードはゆっくりと、しかも一定であり、対応に慌てずにすみます。ドリフトが収まるときにトリッキーな動きもしません。まるでサーキット用にチューニングしたクルマのよう。ノーマルのままでサーキットをこれほど自在に走れるのは嬉しいばかりです。

ちなみに、ブレーキが足りないまま(=荷重移動が不十分なまま)コーナーに飛び込めば、当然のようにアンダーが出ます。つまり、運転しだいでアンダーもオーバーも出るというわけです。クルマの性能に抱っこにおんぶではありませんから、スバルBRZで走りこめば、運転が上手になるのではないでしょうか。

また、一方でスポーツ走行の楽しさをアピールするための驚くような演出はどこにもありません。あくまでも、運転手の言うとおりにクルマが動くだけなんですね。そして、クルマの動きが非常にわかりやすい。そのため、自分の運転が上手になったような気分になってしまいます。

「運転が上手になるクルマ」という言葉を思い出しました。

この言葉は、かつてスバルでクルマの味付けを担当する実験部隊の長から聞いたものです。その方は、今は定年となりBRZの開発に携わっていないはずですが、その考えは、そのままスバルに残ったようです。これがスバルの走りの伝統なのでしょうね。

<鈴木ケンイチ>