ドライブに行く際、「その地元の美味しい食材をいただく」ということを大きな目的にしている人は多いのではないでしょうか。
新鮮な魚介類、採れたての野菜ももちろんですが、多くの地域にあるブランド牛もいただきたくなるひと品です。
世界のセレブにも愛される和牛は、その脂質と肉の入り具合、いわゆるサシの入りかたでランク付けされていました。ところが、さらにその評価に新たな基準を設ける動きがあります。
その評価基準が脂質中のオレイン酸です。このオレイン酸が55%以上含まれているものを、とくに優れた和牛とする、という基準です。
オレイン酸が多く含まれると、濃厚な和牛ながらもしつこくない味わいと、後味ががややさっぱりとするのが特徴です。これから熟年世代の国内旅行需要が増えていくことを考えると、和牛は食べたいけどそれだけでもうお腹いっぱい、というイメージも変わっていくかもしれません。
このオレイン酸を多く含む和牛をブランド化しようと、いち早く3県が名乗りを上げました。
鳥取県、長野県、大分県がその3県です。都内で行われたPRイベントには(写真左から)長野県の阿部守一知事、鳥取県の平井伸治知事、大分県の小風茂副知事らがかけつけ、地元和牛とその他の物産についてアピールしていました。
3氏は手を組んで「三国同盟」を結び、オレイン和牛のブランド化を誓い合ったということです。
オレイン酸に詳しい昭和女子大学の渡辺睦行先生によると、オレイン酸には、動脈硬化を防ぐ役割が知られています。これは、高オレイン酸含有キャノーラ油は脂質異常症の患者の悪玉コレステロール(LDL)を低下させるからです。そのほかにも、オレイン酸は善玉腸内細菌の増殖を促進する。 アトピー性皮膚炎の患者は血中のオレイン酸含有量が少ない。 オレイン酸は大動脈血管内皮細胞の炎症を抑制する。マクロファージによる炎症物質の産生を抑制する、といった身体にいい影響があるとされているそうです。
通常、和牛の脂質中には50%程度のオレインが含まれていますが、オレイン和牛と呼べる和牛には55%以上の含有率が基準とされます。それを測定する専用の装置も開発されています。
このようにいいことづくめに見えるオレイン和牛ですが、このオレイン酸を多く含む牛を育てる方法もまだ確立されているとは言えず、遺伝によるもの、飼料の違いなどが関係するだろうとされ、種牛の厳選や飼料に特定の米を使うなどの方法が試みられています。
実際にいわゆる普通の和牛(左)とオレイン和牛(右)を食べ比べさせていただきました。
そして、いよいよ各県のシェフがそれぞれの地元の名産品とともにオレイン和牛をあわせた料理が登場します。同時に、それぞれに合う地元ワインも供されます。
・鳥取和牛オレイン55 イチボのロースト サルモ―リオソース添え
ブランドにオレインの含有率を明記した鳥取の銘柄牛のイチボ(お尻の肉でも特に柔らかい稀少部位)をロースト。肉本来の味わいとオレイン酸たっぷりの脂分がバツグンのコンビネーション。ワインは北条ワイン 砂丘 赤2009。
・信州プレミアム牛肉ランプ肉のパイ包み焼き〜信州プレミアム牛肉のコンソメスープ 山里の香りを添えて〜
信州の野菜に松茸まで加え、プレミアム和牛で作ったという贅沢なコンソメでパイ包み焼きにするという素材も手の込んだ技も最上級の逸品。牛肉料理と思えない複雑で奥の深い味わいが広がります。ワインは、安曇野ワイナリー メルロー樽熟成2010。
・豊味いの証 ロース肉 安心院赤ワイン蒸煮 地野菜添え
オレイン酸の美味しさがわかりやすい脂分の多いロース肉を赤ワインで蒸し煮にし、大分安心院の野菜を添えた逸品。濃厚な脂身もオレイン酸が多いため意外なほどさっぱりといただけます。ワインは、安心院葡萄酒工房 メルローリザーブ2009。
どれも、言うまでもなく素晴らしい出来映えで、これらを一気に試食しても、まったくしつこさは残りませんでした。
世界に名だたる日本の食ブランド「Wagyu」。これにオレイン酸の美味さと効能を加え、さらに世界中のセレブを中心に話題となって育っていって欲しいと願いたいですね。
鳥取和牛オレイン55(鳥取県)http://www.tottorigyuniku.com/orein55/
信州プレミアム牛肉(長野県)http://www.oishii-shinshu.net/original-food/premium/
豊味(うま)いの証(大分県)http://www.pref.oita.jp/soshiki/15450/umainoakasi.html
(小林和久)