ディーゼル、ダウンサイジング、アトキンソンサイクル、多様なトヨタの次世代エンジン

 ハイブリッドカーの拡大をつづけるトヨタ。2015年までに、さらに21モデルの新型ハイブリッドカーを投入、毎年100万台以上の販売を見込むと宣言しましたが、だからといって内燃機関を無視しているわけではありません。次世代パワートレインについても全方位的に展開するという発表がありました。

まず、ハイブリッドカーといってもエンジンは欠かせない要素。その次世代ハイブリッドカー用エンジンとして「2.5Lガソリンエンジン」を発表しています。これはカムリ(ハイブリッド)などに搭載されている2AR型をベースに進化させたもので、ハイブリッドシステムに最適化したアトキンソンサイクルであることは従来通りとしながら、さらに直噴D-4Sシステムを採用しているのが特徴。これにより、ガソリンエンジンとしては世界最高水準の最大熱効率38.5%に達するとのこと。このエンジンを搭載したハイブリッドカーは2013年以降に市場投入の予定ということです。

 

つづいて、同じくAR型エンジンの進化版として、2.5L自然吸気にかわるダウンサイジング指向のエンジンとして用意されているのが、「2.0Lターボチャージャー付きエンジン」。このエンジンを搭載したモデルは2014年以降に登場するということです。

 

ガソリン、ガソリン・ハイブリッドばかりではありません。小型ディーゼルも用意されています。

乗用車用コモンレールディーゼルエンジンとしては歴史のあるND型を最新トレンドに合わせて進化させています。かつてはBMWミニにも搭載された、この「1.4Lディーゼルエンジン」をリファイン。欧州の排出ガス規制「EURO6」に対応させたということです。このエンジンは2015年以降に登場する新型車への搭載を考えているということ。

 

 

日本ではハイエースなどに搭載されるKD型の進化版といえる「3.0Lディーゼルエンジン」には『i-ART:intelligent Accuracy Refinement Technology(噴射特性自律補償システム) 』と名付けられた燃料噴射システムを採用。すでに2012年4月に、ブラジル向けハイラックスに搭載されているそうです。

 

 

トランスミッションでは、世界的な多段化トレンドに則した、「FF用8速AT」が注目点。

2012ニューヨークオートショーにおいてレクサスRX350 Fスポーツに8速ATがセットされると紹介されていましたが、いよいよ、その8速トランスミッションが登場する、というわけです。

一方、小排気量ガソリンエンジンに組み合わせるトランスミッションは、現行カローラから採用している新しいCVTの搭載を拡大することをメインに考えているということ。

 

ブランニューのエンジンを開発するというよりは、既存ユニットのリファインによって現代的な基準をクリアするというスタンスからは、エンジン以外にリソースを集中したいという狙いも感じられるところではありますが、ダウンサイジング過給エンジン、小排気量ディーゼルなど世界的なトレンドを追いかけた内容といえそうです。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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