アウディA6に環境と走りをプレミアムに併せ持つ初のハイブリッド【Audi A6 hybrid】

アウディ ジャパンは、A6シリーズに、アウディ初のハイブリッドモデル、Audi A6 hybridを追加して9月24日より発売すると発表しました。

アウディのハイブリッドというとあまり耳慣れない感じがしますが、実はその歴史は古く、1989年アウディ100アバントをベースにしたプロトタイプ「Audi DUO I(ローマ数字の1)」まで遡ります。DUO 1は市販されなかったものの、1997年のA4をベースとしたDUO III(ローマ数字の3)は官公庁などで実際に使用されたそうです。

そして、海外では2011年にアウディQ5 hybrid quattoroが登場し、一般に市販されましたが日本には未導入で、A6 Hybridが逆転して先にリリースされました。欧州車の常として、革新的なシステムは比較的モデル末期(=フルモデルチェンジが近い)車種にまずは導入されることが多く、車両の他の部分の信頼性が上がっている状態に搭載することで、新システムだけの不具合や改良点を洗い出す意味があると言われています。Q5もまもなくフルモデルチェンジがウワサされ、その新型Q5にハイブリッドモデルが登場したタイミングで日本にも導入されることになるようです。

Q5がアウディ独自の全輪駆動システム「Quattoro(クアトロ)」であるのに対し、A6 hybridはFFです。エンジンとトランスミッションの間にモーターを持ったフルハイブリッドとしては比較的シンプルな構造のハイブリッドシステムです。普通のガソリンエンジン車で発電を受け持つオルタネータは排され、減速時のエネルギーはモーターによって電気エネルギーへと変換されます。

駆動用バッテリーはリチウムイオン電池で、電圧は266V、容量は1.3kWh分を搭載し、EVモード(=電動モーターのみでの走行)では3kmほど走ることができるそうです(60km/h定地走行)。また、エアコンは電動コンプレッサーとなっており、停止時にエンジンがストップしてもエアコンを使用することができます。このバッテリーはトランクルーム部分に搭載され、通常のA6に比べると最大の積載量は減じていますが、トランクスルーなどは採用されて、その犠牲は最小限に抑えられています。

エンジンはダウンサイジングされた2リッターの4気筒ターボエンジン。つまり、アウディとしては、これまでのダウンサイジング化の次のステップとしてモーターを組み合わせた進化を遂げているわけです。日本メーカーがハイブリッドから始まっているのと対照的ですね。

エンジンと電動モーターを合わせた最大トルクは410Nmとなっており、少し前なら5リッター、V8エンジンくらいで出しているような大トルクになっているのが特徴です。

メーターにはタコメーターに代わってパワーメーターが装備されます。これは、現在走っているのが電動モーターによるものか、エンジンパワーによるものか、減速してチャージしている状態かを表示させます。針の動きで、視覚的に知ることができるメーターです。

 

今回、このAudi A6 hybridに短時間ですが試乗することができました。

通常のDレンジでの発進時には、モーターのみで発進します。

アクセルの踏み具合により、ちょっと踏み込めばすぐにエンジンがスタートしたり、軽く踏んだアクセルをなるべく一定に保ちながら走行すれば電動モーターのみでも走れます。

100km/hまでモーターのみで走ることもできるとのことですが、通常の道路での走りでは40km/hくらいではエンジンがかかるような気がしました。エンジンがスタートしたときのショックも最小限だと思います。

また、グッとアクセルを踏み込んだ時には、モーターとエンジンがフルにパワーを発揮し、ブーストモードとしてかなりな加速を見せてくれます。S6ほどではないですが、V6エンジン搭載モデルと短時間の試乗では大きく違いはない、むしろモーターによるアシストはガソリンエンジンだけでは実現できない力強さを感じられます

燃費は今回の試乗ではわかりませんが、Jc08モードで13.8km/Lとなっており、欧州車は比較的このモード燃費に近い値が実用上も出されるし、長距離ではさらによくなることもありそうなので、この走りを実現可能にして、省燃費であることは、素晴らしいできばえだと思います。

価格は690万円ですが、取得税、重量税は100%免税、自動車税は50%の減税となります。このクラスの減税は大きいですね。

アウディ初のハイブリッドは、現在の環境意識も保ちつつ心地よい走りも併せ持つプレミアムを実現しているクルマと言えそうです。

(小林和久) 

 

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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