「コストダウンのために高価なシートを採用する発想」はコストダウン最優先のクルマ創りからは生まれない

6シリーズ・グランクーペのフロントシートは6シリーズ・カブリオレ、6シリーズ・クーペと同じシートを使っている。

「それがどうした?」

ごもっともです。部品の共通化は当たり前です。でもそれはコストダウンのためのはず。実は6シリーズはカブリオレから開発が始まった。のちにクーペができて、そのあとにグランクーペが登場した。ピラーがないカブリオレのために開発した、3点式シートベルトのアンカーを全部シートに取り付けたインテグレーテッドシートベルトなのである。

これは相当コストが高いシートだ。なにせ衝突したときには何トンにもなってしまう乗員を支えるために、フレーム、リクライニング機構、レール、フロアの剛性まで頑強にしておかなければならないからだ。

通常はラップベルト(腰ベルト)の2点、あるいは片方の1点がシートに付いているものが多く、ピラーがあればショルダーベルトのアンカーはBピラーに付ければ、これほどシートに凝らなくてもいいはずだ。

この6シリーズのシート、しっかりしていて座り心地もとても良い。こんなに良いシートなのだから6シリーズ全部で使おうとなったのかどうかは知らないが、とっても贅沢なことだ。

そもそもピラーがなくてもインテグレーテッドシートベルトにはなかなかしない。コストダウンばかりが優先するクルマ創りからは生まれてこない発想だろう。

(菰田 潔) 

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