その日はお台場で仕事でした。私はD1グランプリのオフィシャルライターをやっているもんですから、お台場特設コースで行われた開幕戦の取材に行ったわけです。
ところが、遅れちゃいけないと思って早めに行ったら、着くのが早すぎた。
オフィシャルのパスを持っているから場内には入れるのですが、ほとんど人がいません。
「これはチャンス!」ということで、D1グランプリのコースにマイカーで進入。ゆっくり走ってみることにしました。
スタートからゆるい右カーブの1コーナーまで、選手はフル加速するはずです。
ところがここの路面が荒れている。ふつうの道路だとしてもかなり荒れてるほうです。ここを500psオーバーの車高の低いクルマでフル加速するんだから、そうとうしなやかなサスペンションじゃないとダメでしょう。
1コーナーをまわって、D1選手気分でクルマの向きを左に変えます。選手が振り返しをするあたりです。ところがここに、カマボコ上のふくらみがふたつある。選手によって振り返すポイントはけっこうちがって、この手前だったり奥だったりするそうですが、けっこうな出っ張りです。ヘタをすると姿勢が乱れそうです。
また、このあたりけっこうコース幅が広いのですが、ラインの自由度が高いみたいで、どこを通ったらいいのかわかりにくい感じでした。
そして2コーナーに進入します。えっ!? こんなに狭いの? 2コーナーから3コーナーまでのコース幅が、外から見て想像するよりはるかに狭い。ということは……そう、アウト側のカベが想像以上に近いんです。しかも3コーナーにかけてコースはどんどんタイトになっていきます。とうぜんここでは、選手たちは3コーナーの先へ目線を送っているはずですが、すぐ右後ろにはスポンジバリアがあります。私は徐行しただけですが、外側のカベが気になってちゃんと目線が送れません。そうして3コーナーに入ると、これまた外から見ている以上にRが小さい。というわけで、徐行で行ったにもかかわらず完全にラインを外しました。
悔しいのでもう2周ほどしたのですが、どうしても外のカベが怖いので、そっちに意識が行ってしまって3コーナーに目線が送れない。さらにいえば、お台場特設コースはただの駐車場なので、コースは白線が引かれているだけでハデな縁石があるわけでもないので、そもそもクリッピングポイントを見つけることすら難しいんです。運転に関しては素人の域を出ない私の場合、徐行でもラインがトレースできません。がくっ……。
自分のダメさ加減と同時に、この難コースをフルスピードでドリフトし、あげくのはてには追走までやってしまうD1GP選手のすごさを、身をもって思い知らされました。ハッキリ言って、けっこうカルチャーショックでした。いい経験になりました。
この記事を読んだひとは、どうせ「お前がヘタレなだけだろ」って思ってるんだろうな。ヘッ、あの感覚は走ってみたことがあるヤツにしかわからねえよ。悔しかったら走ってみろ(逆ギレ)。
(まめ蔵)