近頃の欧州車、中でもBMWのボディサイドを貫くキャラクターラインがどんどんシャープになっている事にお気付きでしょうか?
自身の記憶ではBMWに変化が現れ出したのは2000年デビューのアルファロメオ147がボディサイドにアイスクリームをスプーンですくったような特徴的な凹レリーフを採用後、1シリーズなどでそれと似たレリーフを取り入れて以降だと認識しています。
BMWはそれまでも「三種の神器」として特徴的なキャラクターラインをボディサイドに設けていましたが、現在ほどクッキリとしたものではありませんでした。2005年にデビューした現行3シリーズから本格的に彫りの深いレリーフ導入を開始、現在では画像の如く、5シリーズ、7シリーズ、そして先頃デビューした2代目1シリーズへと既に全面展開されています。
ところで、この強く摘み出したような深いレリーフ、実は製造部門泣かせなのです。その理由はプレス時の割れや面歪みの原因となり、歩留まり(良品率)が落ちるからです。
何せ大手カーメーカーの生産技術屋は量産性重視で、4工程以上の手間のかかるプレス作業を良しとしません。デザインや設計部門がゴリ押しすると、製造部門との間に衝突が起きるのが常。プレス成型性のコンピュータ解析が進んだ現在でもそれは余り変わらないようです。
特に近年のサイドメンバーパネルは画像のように非常に大きな一枚物となっており、細部の絞り成型とエッジの効いた美しいプレスラインを両立させようとすると、その分、余計な工程や手間が増えるのです。
BMWが何工程かけているのかは定かでは有りませんが、クラウンですら採用していないぐらいですから、恐らくそれなりの手間をかけているものと思われます。またそれをBMWシリーズのアイデンティティにしているのでしょう。
確かにフェンダーアーチ部以外に明快なキャラクターラインが無いクラウンを見ると、少々締まりが無い気も・・・ ベントレーなどはアルミ製ボディパネルに深絞りのレリーフを入れる為に特殊な加熱・加圧式の「スーパーフォーミング成型」を採り入れているようです。
ユーザーサイドから見れば普通のレリーフとビシッ!とエッジの効いたキャラクターラインとでは見た目にも質感の差が歴然としています。日本車は韓国車からも追い上げられる現在、技術力にモノを言わせる為にも、このような所への手間を惜しむべきではない時代が来ているのかもしれません。
こちらも併せてお読み下さい。 https://clicccar.com/2011/06/15/33756
(Avanti Yasunori )
【画像がすべて見られない方は>>> https://clicccar.com/52070 】