最後のFRで伝統的クラウン?旧型なりたての15代目クラウンはどんなクルマだった?

■TNGAを採用し走行性能を向上させスタイリッシュなデザインとなった意欲作

2022年7月15日(金)、新型トヨタ・クラウンが発表されました。基本駆動方式をこれまでのFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)へと駆動方式が変更されたほか、外観のデザインも一新されています。また、クロスオーバーをはじめ4モデルが公開され、クラウンの明治維新と呼ばれています。

旧型クラウン外観07
2.0RSアドバンスのフロントスタイル

クラウンは1955年の誕生以来、様々な先進技術を搭載し、日本が誇る高級車として君臨してきました。その伝統を受け継ぐ最終モデルとなった旧型クラウンは、2018年6月に登場しました。

ここでは、最後のFRクラウンになるかもしれない旧型モデルを振り返ってみます。

●TNGAにより走りが磨かれた旧型クラウン

旧型クラウンの特徴といえば、大きく2つ。全車に車載通信機DCMを搭載しつながる機能を強化したコネクテッドカーであること。そして、トヨタのクルマ構造改革であるTNGAに基づき走行性能に磨きを掛けたことです。

旧型クラウン外観08
2.0RSアドバンスのリアスタイル

旧型クラウンは、クルマの基礎にあたるプラットフォームにTNGAに基づく新プラットフォームを採用しました。エンジンなどのパワートレインを従来モデルより低い位置に配置し、低重心化するとともに、ボンネットやフェンダーなどに軽量なアルミニウムを採用し軽量化を実現しています。

旧型クラウン外観09
2.0RSアドバンスのフロントアルミホイール

そして、前後重量配分の最適化によって優れた走行性能を実現しました。サスペンションはフロント、リアともにマルチリンクサスペンションを採用。また、構造用接着剤の塗布量を大幅に増やすなどボディ剛性を大幅に強化することで、意のままのハンドリングと目線がぶれないフラットな乗り心地が特徴となっています。

旧型クラウンのボディサイズは全長4,910mm×全幅1,800mm×全高1,455mm、ホイールベースは2,920mmと、全長とホイールベースが大幅に拡大されました。この延長分はリアシートの居住性に使用され、フロントシート下の足入れスペースを拡大するなど、足元の心地良さを向上させています。

旧型クラウン外観11
3.5HV Gエグゼクティブのフロントスタイル

ボディサイズが大型化された要因として、グレード構成が挙げられます。従来のクラウンは、後席重視のショーファーモデルとしてクラウンマジェスタ。タクシーやハイヤーといった法人向けのクラウンロイヤルサルーン。パーソナルユーザー向けのクラウンアスリートと、3モデルを用意していました。

旧型クラウン外観12
3.5HV Gエグゼクティブのリアスタイル

しかし、旧型クラウンでは1モデルに集約。同じスタイリングの中で異なる味付けによるグレード構成となりました。グレードはスタンダードなB、そしてS。ランアバウトスポーツの頭文字を取ったスポーティなRS。そしてラグジュアリー仕様のGというモデル体系となっています。なかでもGエグゼクティブは、ドアLED照明や3席独立したエアコンを採用するなど、後席装備を充実させています。

旧型クラウン外観04
2.5HV Gのフロントスタイル

また、スポーティグレードのRSには18インチアルミホイールをはじめ、専用のフロントスタビライザーやリニアソレノイド式AVSという電子デバイスを搭載することで、路面から大きな入力が入っても適切な減衰力を瞬時に発揮させ、無駄な動きを抑えて、走行性能の向上に実現させました。

●社会とつながるT-Connectも採用

そして旧型クラウンのもう一つの特徴が、コネクテッドサービスです。これはドライバーと社会がつながることで新しいサービスのT-Connectが3年間無料で提供されます。

旧型クラウン外観05
2.5HV Gのリアスタイル

T-Connectの中には「ヘルプネット」や「eケア」といった安全・安心をサポートするサービスに加えて、オペレーションサービスをはじめとしたカーライフを快適にするサービスも提供されます。さらに、スマホの連携も強化し、スマホアプリから目的地登録ができる「LINEマイカーアカウント」や、安全・エコな運転のレベルをスマホで確認できる「マイトヨタフォーT-Connectドライブ診断」の新サービスなどがあります。

旧型クラウンで注目を集めたのは、外観デザインです。これまでの骨太なCピラーが特徴な4ドアセダンから、クラウン初となる6ライトウィンドウの採用による伸びやかなルーフラインをもつ流麗なサイドシルエットを採用しました。

インテリアは適度に囲まれたコクピットと開放感を両立させ、運転に集中できる居心地の良い空間を演出。運転中でも見やすい遠方配置の8インチディスプレイと操作性を考慮し、手前に配置した7インチディスプレイの2つを連携させた新開発のダブルディスプレイが先進性を主張します。

2画面化を活かして、インストルメントパネル上面を低く抑えることで、上面を低く抑えて圧迫感の少ないインテリアでしたが、2020年の一部改良で、ダブルディスプレイは廃止され、インストルメントパネルのデザインが変更されています。

旧型クラウンに搭載されているパワートレインは最高出力245psを発生する2L直列4気筒直噴ターボエンジンをはじめ、高い熱効率と高出力を両立したTNGAエンジン、2.5Lダイナミックフォースエンジンのハイブリッドシステム。そして、3.5L V6エンジンを採用したマルチステージハイブリッドシステムの3種類です。

組み合わされるトランスミッションは2Lターボが8速AT。2.5LハイブリッドがCVT。3.5Lハイブリッドが10速ATとなります。駆動方式はFRを中心に2.5Lハイブリッド車に4WDを設定。JC08モード燃費は12.8~24.0km/Lでした。

そして、先進の運転支援システムは第2世代へと進化したトヨタセーフティセンスを全車に標準装備。夜間の歩行者や昼間の自転車を検知し、衝突回避または被害軽減を図るプリプラッシュセーフティをはじめ、カメラで認識した道路標識をディスプレイに表示するロードサインアシスト、先行車両の追従走行を支援する全車速追従機能付レーダークルーズコントロール。そのレーダークルーズコントロール使用時に、同一車線内の中央を走行できるようにハンドル操作を支援するレーントレーシングアシストなど、様々な新機能が追加されています。

また、トヨタブランド初となる対後方歩行者ブレーキサポートブレーキを採用。リアカメラで歩行者を検知し、衝突の危険があると判断した場合は警報およびブレーキ制御で被害軽減を行います。

2020年の一部改良で、体調急変などドライバーの無操作状態が継続している場合、徐々に車両を減速させ自車線内に停車。早期救命救急をサポートする「ドライバー異常時対応システム」など機能を追加し、安全性を向上させています。

旧型クラウンは4年間販売され、大幅な改良は行われていません。最後のFRクラウンというだけでなく、国産セダンの代名詞と呼べる魅力は色褪せていません。

(文・写真:萩原 文博

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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