ボディ軽量化の最先端、いま「ハイテン」が熱い!

いま新型車に求められるのは省燃費性能。

そのために有効なのがボディの軽量化。もはやアルミは当たり前、カーボンの市販車採用が脚光を浴びています。

 

しかし、そうした素材はコスト高になってしまうのも事実。

 

そこで、コストと軽量化、生産性のバランスを考えたときに定番といえるボディ素材が高張力鋼板、いわゆる「ハイテン」であります。

 

ハイテンとは、引張強度に優れる合金の鋼のこと。

メリット・デメリットはありますが、単純にいえば同じ強度レベルを実現するのに薄くできる=軽くできるのが最大のメリット。

 

それが、軽量化につながるというわけ。さらにシンプルにいえば、引張強度が高い(数字が大きい)ハイテンを使うほどボディは軽くできるということです。

 

そのハイテンを使った、軽量ボディ技術が相次いで発表されました。

 

まず日産。

世界初1.2GPa級高成形性超ハイテン材(冷間プレス用超高張力鋼板)を開発

世界で初めて自動車の車体構造部材の冷間プレスが可能な引張強度1.2GPa(ギガパスカル)級の高成形性超ハイテン材(高張力鋼板)を新日本製鐵株式會社、株式会社神戸製鋼所の両社と、それぞれ共同で開発したと発表しました。

2013年に発売する新型車からこの超ハイテン材を車体のセンターピラーレインフォース、サイドルーフレール、フロントルーフレールなどの車体構造部材に適用し、グローバルに採用を進めていきます。

今回開発した超ハイテン材を適用することにより、通常のハイテン材と同等の車体性能を保ちながら鋼板を薄くできるため、1台あたり約15kgの軽量化が可能となり、車両の燃費や走行性能を向上させることができます。

従来は980MPa(メガパスカル)級だったハイテンを桁違いの1.2GPa(1200MPa)級とすることで、リリースにあるように15kg/台の軽量化が可能ということ。また、このハイテン鋼は通常のプレス工程や溶接工程で扱えるというのがポイント。

 

一方、マツダからはさらに引張強度の高いハイテンを使うという発表がありました。

世界最高強度の自動車用高張力鋼板を新型SUV「マツダ CX-5」に採用

マツダ株式会社は、住友金属工業株式会社、アイシン高丘株式会社と共同で、世界最高の強度をもつ1800MPa級高張力鋼板を用いた自動車用部材の開発に成功しました。新開発したのは、フロントおよびリアバンパーの内側に設置し衝突時に車体が受けるダメージを低減させるバンパービームで、従来の部材に比べると強度は約20%高く、重量は約4.8kgの軽量化を達成しています。

 

こちらは日産のハイテンよりも引張強度の高い1.8GPa級のハイテンを利用するというもの。もっとも日産が冷間プレスに対応したハイテンなのに対して、マツダはホットスタンプと呼ばれる鋼板を加熱して成形する工法を前提としたもの。

 

なおリリースにある”従来の部材”は1.5GPa級のハイテン。こちらもホットスタンプにより成形されていたもので、製造の手間が変わるわけではないといいます。

 

 

何れにしても、従来から素材にハイテンを使っていた部分を、さらに引張強度の高いハイテンに置換することで、キログラム単位での軽量化ができるのですから、まだまだ鋼(ハガネ)は侮りがたし。

 

またハイテンは鋼材の使用を減らすという面ではコストダウンにつながるのも、贅沢な素材を使った軽量化とは異なるメリット。

 

安くて軽いボディにつながる、ハイテンを取り巻く技術進化に期待しましょう!

 

 

※参考画像は日産自動車・追浜工場 組立ライン

 

(山本晋也)

 

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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