新品タイヤに付いてるヒゲ「スピュー」を喜ぶ国があるって本当?【タイヤ豆知識・2022年版】

■オーストラリアでは新品の証拠としてヒゲを喜ぶとか!?

タイヤのヒゲ「スピュー」
新品タイヤのヒゲ「スピュー」。走っているうちに消えてしまいます

タイヤショップやカー用品店に展示してある新品タイヤを眺めていると、トレッドの表面やサイドウォールからヒゲのような糸状の細いゴムが生えているのを見かけたことがあるかもしれません。このヒゲ……名前を「スピュー」と言います。最近の国産タイヤではこの「スピュー」をカットしているのですが、じつはこの「スピュー」が喜ばれる国があるというのです。

オーストラリアでは「スピュー」があることでタイヤが新品と認識されるといいます。この話はあるタイヤメーカーで聞いたのですが、そのときも「私が聞いた話では……」という前置きでした。

なるほどおもしろい国民性だなーと思って、オーストラリア人に確認したら、そのオーストラリア人は否定していました。とはいえ、火のない所に煙は立たないもの。きっとそういう風潮もオーストラリアの一部ではあったのだと思います。

●なんでタイヤにヒゲができるの?

タイヤのヒゲ「スピュー」
日本の市場ではスピューはカットされていることが多いようです

さてこの「スピュー」、どうしてあんなものがあるのでしょう? 答えは空気抜きの穴から押し出されたゴムです。タイヤはさまざまな素材を重ね合わせた後、モールドと呼ばれる型に入れて成形されるのですが、そのときに内側から圧力をかけて膨らますようにして作ります。空気穴がなければ均一に圧力が掛からず、タイヤが変形してしまいます。そこで小さい多数の穴を開けて、そこから空気が逃げることで圧力を均一にしているのです。そのときにゴムの一部が押し出されてヒゲになるんですね。

そう聞くと、ヒゲの数が多いほど均一に作られたタイヤのようなイメージが湧きませんか? でもそんなことはなく、きちんと計算されてヒゲは生えているのです。

(文・諸星陽一)

※この記事は2022年4月5日に再編集しました。

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この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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