【自動車用語辞典:視認性「概説」】死角のない視界を実現するためのさまざまな技術

■ミラーに続き、カメラや各種センサーも

●安全運転の前提は視界の確保

スタイリングや構造などを優先させると、視界が阻害されて安全性が低下する場合があります。安全性向上のため、ドライバーが確認でない死角は、ミラーやカメラ、各種センサーを使って可視化します。

安全運転に直結する視界確保のための最新技術について、解説していきます。

●ウインドウガラス

ウインドウガラスは、運転者の視界確保および衝突時の乗員保護のため、保安基準によって種類や品質が規定されています。クルマ用のガラスは、一般のガラスに対して割れにくく割れても飛散しにくい「安全ガラス」であることが規定されています。

一般的には、強化ガラスと合わせガラスが使われます。

視界と安全を確保するだけでなく、多くの機能を持たせています。特にUV(紫外線)カットやIR(赤外線)カットガラスのような断熱性能を重視した仕様は、快適性だけでなく燃費にも大きな影響を与えます。

●ミラー

1983年以前は、フェンダーミラーが主流でした。1983年に空力やデザインに有利なドアミラー装備が解禁されました。

さらに、2018年にはドアミラーの代わりにカメラとディスプレーを用いて後側方の状況を確認する電子ミラーが、トヨタ・レクサスESで実用化されました。通常のドアミラーに対して死角が減り、視認性が向上するなど多くのメリットが期待できます。

安全運転のために不可欠なミラーですが、空力やデザイン、車室内空間確保の観点からは目障りな存在かもしれません。最近の運転支援技術や自動運転の大きな流れの中で、ミラーはデジタルデータに変換できるカメラやモニターに置き換わりつつあります。

各種ミラー
各種ミラー
電子ミラーの視野範囲
電子ミラーの視野範囲

●カメラモニター

ミラーでも確認できない車両周辺の死角を映像で見せてくれるのが、カメラ映像のモニターです。カーナビ画面に後方死角を映すリアモニターに始まり、最近は車両の全周囲を確認できるアラウンドモニターも一般的になりました。

クルマの運転で苦手な上位2つは、縦列駐車とバックです。モニターシステムは、これらの運転が苦手なドライバーにとっては、ほんとに有難い救世主のようなシステムではないでしょうか。

●ヘッドライト

ヘッドライトの光源としては、ハロゲン(電球)からHID(キセノン)、LED(発光ダイオード)へと進化し、さらに最近レーザーを使った光源も実用化されました。

現在LEDの普及率が急速に増えています。デザイン性や配光性に優れ、省電力で燃費向上やEVの航続距離の延長が期待できるからです。

ヘッドライトのHIDやLEDの採用によって明るさが向上する一方で、対向車にとっては眩しさによって危険な状況になる場合があります。明るさを確保しながら眩しさを避ける方法として、さまざまな配光制御が採用されています。

最も一般的な配光制御は、ハイビームとロービームを切り替える自動ハイビーム制御です。さらに、対向車や歩行者などを眩しくさせないように配光制御するADB(配光可変ヘッドランプ)、ステアリングを切った方向に照射して視界を確保するAFS(配光可変型前照灯システム)、車両の上下動に応じて照射方向を水平に保つオートレベリングシステムなどがあります。

ADBの効果
ADBの効果
AFSの効果
AFSの効果

安全運転の大前提である視界の確保のためには、どんな環境下でも自車の周辺が良く見えること、遠くがよく見えることが基本です。そのためドライバーの目だけでなく、カメラやレーザー、各種センサーを駆使して死角を解消しています。

本章では、視界を確保するさまざまな技術について、詳細に解説します。

(Mr.ソラン)

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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