【アウディA6アバント試乗】落ち着いた乗り味で上質さを感じられるプレミアムワゴン

●安定した加速感、スムーズな始動性。すべてがプレミアムなA6アバント

アウディA6はアウディ100をルーツにもつ、ミドルクラスのモデルです。アウディ100はセダンとクーペでスタートしましたが、3代目のときにステーションワゴンを追加しました。アウディ100は4代目まで製造され、A6にバトンを渡します。

試乗したモデルは5代目ですが、A6では全世代にステーションワゴンが用意されてきました。日本車ではどんどんステーションワゴンが消滅しているだけに、ドイツ車のステーションワゴンは貴重な存在でもあります。

搭載されるエンジンはV6の3リットルで、最高出力は340馬力、最大トルクは500Nmとなります。必要にして十分なパワー&トルクスペックですが、このエンジンに48V電源のリチウムイオンバッテリー&モーターが組み合わされ、マイルドハイブリッドとなっています。

48Vという中途半端に思える電圧にはワケがあります。12Vでは駆動アシストするにはちょっと力不足、かといってストロングハイブリッドレベルにするとシステムが大きくなり、重量が増える。現状でのバランスがいいのが48Vシステムと言われています。また、感電事故が起きない安全圏の電圧であることも採用が増えている要因のひとつです。

モーターアシストによって発進は力強いものです。ミッションがDCTなのでクリープがないのですが、モーターによるアシストのおかげで以前のピュアエンジンよりもずっとスムーズな発進ができます。DCTのネガティブな部分をモーターが上手にカバーしているところはとても評価できるところです。

一般道を走行中、前方の信号が赤になってアクセルをオフにするとクルマが停止する前にアイドリングストップモードになります。資料によれば22km/h以下でのアイドリングストップモードへ入るとのこと。停止後、アクセルを踏むとふたたびエンジンが始動します。

アシストとエンジンの再始動を担当するのは、ベルト駆動式オルタネータースターター(BAS)と呼ばれるものです。簡単にいえばオルタネーターの性能を拡大したようなもので、スターターモーターによる始動とは異なり、エンジン再始動時の振動もほとんどなく、スッとエンジンが始動します。

試乗時はかなり強い雨が降る状況だったのですが、クワトロ式フルタイム4WDの駆動方式を使うA6は安定した加速を見せます。500馬力のパワーは強大ですが、それを持て余すようなことはありません。非常に安定した加速感を味わわせてくれます。

A6のエネルギー効率向上のひとつの手段が、コースティング走行です。55~160kmの間でアクセルをオフにすれば、エンジンが停止して惰性で走るコースティングモードへと入ります。コースティングモードからでも、アクセルペダルを踏み込むとエンジンが静かに再始動し、即座にフル加速に移行できます。

乗り心地はじつに快適です。試乗車にはダイナミックオールホイールコントロールと呼ばれる4輪操舵装置がオプションで用意されます。このダイナミックオールホイールコントロールとクワトロの組み合わせによる、高速域での安定性は抜群に高く、非常に快適です。また、最小回転も小さくなるので、取り回し面も楽々です。

新型のアウディA6はA7スポーツバッグやA8と共通のプラットフォームを持ちます。ホイールベースは2925mmで、A7と同じです。基本的には同じクルマと言ってもいいくらいなのですが、A6のほうがずっといいフィーリングだったのです。

全体としてまとまり感があるというか、落ち着き感があるというか……非常にザックリした印象ですが、それは確かなものでした。その印象を広報担当者にむけたところ返ってきた答が「そうなのです。じつはA7もA8も2019年モデルはずいぶん良くなっています」でした。

とくに、何を更新したというわけではありませんが、明らかに違うのです。そういうところがあるのがクルマの楽しい部分だと私は思います。

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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