新型でも変わらない、ミニバンの中で抜きん出たデリカD:5の悪路走破性

●最低地上高の数字に騙されてはいけない。デリカD:5の走破性は旧型から確実に進化

先日、雪が積もったテストコースで新型デリカD:5を試走する機会がありました。

テストコースと言っても、そこは正確に言えばモトクロス用のオフロードコース。上りあり下りあり……なんてもんじゃなくて、そのアップダウンの激しさは「名ばかりのSUV」なら尻尾を巻いて逃げ出すレベル。そこへ浅くない雪が積もっているのだから、人間が自分で歩くのだって苦労するような場所でした。

というか、人間だったら滑ってしまい坂を登れないはず。今回のように事前に走れることを確認して「走れるから大丈夫」という確認がとれていなければ、スタックが怖くて自分で運転するクルマで入って行こうという気にもならない……といえば、その激しさが想像できるでしょうかね。

でも、デリカD:5はガシガシ入っていき苦労しているそぶりも見せずに走破するわけですが、その正直な印象は「普通のミニバンは4WDでもこうはいかないだろうな」でした。

そう感じた理由はふたつあって、ひとつは最低地上高。185mmあるデリカD:5の最低地上高は、お世辞抜き(数字で表れていますからね)に他のミニバンとは全く違うレベル。車体の下を擦るように積もった雪、深い轍、そして吹き溜まりなんかでも安心感が全然違う。かつてはパジェロのシャシーにミニバンのボディを乗せた構造だったデリカの血統が、しっかり生き続けていることを実感せざるをえません。

もうひとつ特筆すべきなのは、他のミニバンと一線を画するの4WDシステム。デリカD:5は新型でも凝ったシステムを搭載していて、その特区長は電子制御カップリングの特性を手元で変更できること。運転席のダイヤルで「LOCK」を選べばトラクション重視の制御になって、他のミニバンでは入り込めないような悪路も走り切れるというわけなのでした。

ちなみに砂地や深い雪でのトラクション性能は、ATを8速化したことで1速のローギヤ化によりさらに高まっているのだとか。またトラクションコントロールも対角線上のタイヤが浮いてトラクションが抜けかかった状態でもしっかり効くようにプログラムされている、なんていうのもミニバンとしては異例のクルマ作り、というか配慮ですね。そういう細かい部分の積み重ねが、高い悪路走破性と頼れる雰囲気を作り上げているのだなと納得です。

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
続きを見る
閉じる