欧州に於ける新車販売は1990年代半ば以来の最低水準に落ち込んでおり、自動車メーカーの各工場は稼働率を大幅に引き下げて操業しているものの、従業員数や設備の規模は好況期から変わっていないと言います。
以前に「フランス政府が雇用維持でルノーに日産車の生産を要請 !?」でお伝えしたとおり、フランス大手ルノーが販売不振を理由にコスト削減のため、本年1月15日、2016年末までにフランス国内従業員の14%に相当する7500人を削減するリストラ計画を発表。
これを受けて労使対立が鮮明化、同社従業員による大規模な過激デモが発生しました。
そうした厳しい欧州市場環境の中でもドイツのメルセデスは2013年1‐3月の欧州販売累計が15万台(前年比+1.2%)と着実に結果を出しているのに対して、ルノーは19.3万台(前年比‐14.1%)と販売低迷が続いている状況。
フランス政府は今もルノーに対して15%を出資する筆頭株主。ルノーの経営状況を重く見た仏アルノー・モントブール産業再生相がルノーのカルロス・ゴーンCEOに「日産がフランス工場を支援すべく、フランスの生産ラインに仕事をもたらすべきだ」と要請。
両社のCEOを兼務する立場ながら「日産にとってプラスにならない協業はしない」として、これまでもルノーからの様々な支援要請を断って来たカルロス・ゴーンCEOでしたが、大株主のフランス政府から圧力が入った以上、安易なリストラ策に走る訳にも行かず、赤字経営に苦しむルノー救済に向けて動くことに。
その支援策が2013年4月26日に日産側から発表されました。
「欧州向けコンパクト車をルノーの欧州工場で生産」するというもので、正に仏アルノー・モントブール産業再生相からの要請に基づく内容となっています。
日産は次期マイクラ(日本名:マーチ)を、ルノーの欧州域内の工場で生産することを決定。2016年に年間82,000台の規模で生産開始を予定しており、欧州の左ハンドル市場に供給されると言います。
カルロス・ゴーンCEOは今回のルノーへの日産車生産委託発表に際し、「日産にとって、投資の抑制、為替影響の低減、さらにサプライチェーンの短縮による在庫の削減などの効果が見込まれる」と説明しています。
日経新聞によると、現在のルノーの日産への出資比率は43.4%、日産のルノーに対する出資比率は15%となってはいるものの、2012年度決算で2500万ユーロ(約30億円)の営業赤字を抱えるルノーは既に生産台数でルノーを大きく上回る日産にとって重荷となりつつあるようで、日産内部でも出資比率の見直し等、ルノーとの資本提携の枠組みを見直しても良いのでは ?という意見が出ていると言います。
具体的には「ルノーの日産への出資比率を現在の43.4%から33.4%以下に引き下げ、その売却益でルノーを再建すべき」というもの。
ルノーの日産への出資比率が3分の1を下回れば、日産が合併や増資、事業譲渡などをしようとした際に大口株主として拒否できる権利が無くなってしまうものの、背に腹は代えられないという訳です。
既にルノーは2012年12月にボルボ株を全て売却済みのようで、ルノーの業績悪化が今後も続けば日産株の売却構想は現実に近づく可能性も。
当然ながら日産社内の生産部門では今回のルノー支援を巡って慌しい準備を強いられているものと思われ、今後のルノーと日産のパワーバランスに影響が出るのは必至。
日産・ルノーアライアンスは日産の頑張りで2012年度の世界販売で810万台を売上げており、世界第4位の座を獲得。2013年度の上海モーターショーでも数々のショーカーを投入するなど、中国市場への売り込みにも力が入っています。
ルノー・日産提携成功の最大の要因として、両社が対等の精神を掲げ、忠実に実践して来た事にあるとされており、そうした関係維持の観点からも今後のルノー再建の行方が大いに注目されます。
〔関連記事〕
・フランス政府が雇用維持で「ルノー」に日産車の生産を要請 !?
https://clicccar.com/2013/01/22/211372/
・仏自動車工場で従業員らが抗議デモ ! 労使の対立が鮮明に !
https://clicccar.com/2013/02/01/211975/
・ルノー・日産の2012年度 世界販売台数ランキング4位が確定 !
https://clicccar.com/2013/02/06/212189/
【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】 https://clicccar.com/?p=218840