車外騒音試験とは?世界標準で定められた加速走行時の騒音を計測【自動車用語辞典:車体系の試験編】

■実際の市街地での加速走行時の騒音レベルを再現した試験

●クルマの騒音の根源はエンジンであり、その寄与度が最も大きい

車外騒音試験は、2016年に世界基準の試験法に変更されました。従来の定常走行騒音と近接排気騒音の規制は廃止され、加速騒音規制のみに変更されましたが、規制レベルは非常に厳しくなっています。

規制対象になっている車外騒音の試験方法について、解説していきます。

●クルマの車内、車外の騒音メカニズム

クルマの騒音は、車室内の乗員の快適性に影響を与える車内騒音と、道路周辺環境に影響を与えるため規制対象になっている車外騒音の2つがあります。

車内騒音は、固体伝播音と空気伝播音に分けられます。

・固体伝播音
起振源からの振動が車体構造物を媒体として伝播して、パネルなど板部で放射する騒音です。ロードノイズやエンジン振動伝達音、駆動系振動伝達音など、主として低周波の騒音が相当します。

・空気伝播音
エンジンの燃焼圧力や機械的加振力、吸排気系の共鳴音などを音源として、音波が車体パネルやフロアパネルを通過してくる騒音です。加速時エンジン透過音やタイヤパターンノイズ、風切り音など、主として高周波の騒音が相当します。

●現在の車外騒音規制

車外騒音は、エンジンの燃焼圧力や機械的加振力、吸排気系の共鳴音などを音源とした音波が、エンジン下面の開口部や部品間の継ぎ目、パネル(ボンネット、フェンダなど)から外部に伝播する騒音です。

車外騒音の音源寄与率の約半分はエンジン騒音であり、その他大きい順にタイヤノイズ、排気系、吸気系です。

車外騒音は、道路周辺環境に悪影響を与えるので規制されています。1971年に日本独自に施行された従来の車外騒音規制の試験法は、クルマの出力がそれほど高くない時代のものでしたが、クルマの出力が大きく向上した現在の実態とはかけ離れています。

自動車世界基準調和世界フォーラム(WP29)のGDB(騒音専門委員会)が、世界基準の新しい騒音規制を提案し、欧州は2016年から導入しました。

日本も、欧州から3ヶ月遅れで新騒音規制を導入しました。同時に、これまで規制対象であった定常走行騒音規制と近接排気騒音規制を廃止して、欧州と同様の加速走行騒音規制のみに変更しました。

●車外騒音試験法

新加速騒音試験法は、実際の市街地における加速騒音レベルを再現することを目的とした試験法です。日本を含む各国のデータをもとに算出された市街地を代表する加速度における騒音値を評価します。

騒音値と加速度は比例関係にあることを前提に、全開加速走行時の騒音値と定常走行時の騒音値から計算で求めます。

試験は、車速50km/hからの定常走行と車速50km/hからの全開加速時の騒音レベルを計測して、規制対象となる加速騒音値を求めます。試験は4回行い、試験区間は20mで中間地点にマイクを設置して騒音を計測します。

この規制は2016年に始まり、2020年、2024年と段階的に強化される予定です。2024年の規制値は、エンジン車はもとより、EVのタイヤ騒音のみでも規制値をオーバーするほど厳しいと言われており、現時点において技術的目途は立っていません。

加速騒音試験
加速騒音試験

世界的な規制基準や計測法の統一化が進む中、車外騒音についても世界標準化が施行されています。

クルマの騒音の根源はエンジンであり、その寄与度が最も大きいですが、2024年の規制計画ではEVであってもクリアできないほど厳しい基準になる予定です。

今後も、パワートレインだけでなく、クルマ全体の騒音低減技術の開発が求められます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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