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■ホンダ「NSX」のようにアルミボディを採用した高級車やSUV、スポーツカーなどが出現
●エンジンやパワートレイン部品に加えてボディや主要部品などアルミへの置換が進行中
比重が鉄(7.8)の1/3のアルミ(2.7)は、自動車の軽量化構造を実現する第一候補の素材です。すでにエンジンやパワートレインではアルミ化が進んでおり、最近はボディの骨格や外板にも積極的に採用するモデルが増えています。
鉄の材料置換として軽量化を牽引しているアルミの採用例や動向について、解説していきます。
●アルミニウムとは
アルミニウムは「軽金属」を代表する金属で、自動車の軽量化を牽引する材料としてプラスチックとともにすでにさまざまな部位へ採用されています。
軽金属とは、比重が4.0より軽い金属の総称で、2次電池のリチウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属などから成っています。
アルミの原料は、ボーキサイトと呼ばれる粘度状の鉱物です。ボーキサイトの主成分は、酸化アルミAl2O3ですが、残念ながら日本では産出されません。
アルミは、大きくは以下の2つプロセスから生成します。
・ボーキサイトから純粋な酸化アルミAl2O3を抽出
・酸化アルミAl2O3を還元してアルミを単離
軽量のアルミですが、純金属のアルミの強度はそれほど高くありません。そのため、アルミにシリコンやマグネシウムなどを添加して強度を向上させた「アルミ合金」として使用します。通常、アルミ製品と呼ばれるもののほとんどはアルミ合金です。
●自動車部材への適用
自動車には、燃費向上と排ガス低減に加えて衝突安全性や快適性の向上も求められています。さまざまな対策が取られていますが、その中でも車体の軽量化は特に効果的です。
アルミは、軽量化に加えて強度や加工性、耐食性、熱伝導、リサイクル性などの優れた特性も持つため、エンジンやパワートレイン部品に加えてボディや主要部品のアルミへの材料置換が行われています。
以下に、アルミの自動車用部材への適用例と動向について、紹介します。
●エンジン部品
アルミの軽量や熱伝導の高さ、生産性の良さなどを利用して、まずシリンダーブロックやホイールなどにアルミダイカストやアルミ鋳物が使われました。その後、シリンダーヘッドやトランスミッションケース、クラッチハウジング、インテークマニホールドなどもアルミ化されました。
ダイカストや鋳物の場合、それぞれ用途に応じて高温強度や耐摩耗性、強度などが高いレベルでバランスしているアルミ合金を使い分けています。
●ボディパネル
エンジンフードやドア、トランクリッド、フェンダー、ルーフなどは、鋼板からアルミに材料置換した場合、張り剛性が重要となるため軽量化のポテンシャルが高い部品です。
要求特性としては、成形性や張り剛性、曲げ性であり、アルミ(Al-Mg-Si)合金が多用されています。
高級車やSUV、スポーツカーを中心に、アルミボディパネルのクルマが市販化されています。成形の難易度に応じて、フード、トランクリッド、ドアおよびフェンダーの順に適用が進んでいます。
●ボディ骨格
通常乗用車はモノコックボディを採用しており、外板に強度や剛性を持たせることで内部空間を広く、構造の簡素化と軽量化を図っています。
1990年にホンダからアルミボディのNSXが発売され、大きな注目を集めました。国内初のスーパーカー、世界初の量産アルミボディとシャシーで構成され、車体全体で200kgの軽量化を実現しました。続いて、1994年のアルミ製スペースフレーム構造を採用したアウディA8は、スチール製に対して40%の軽量化を達成しました。
以降、アルミ製ボディ骨格を採用した多くのモデルが市販化されました。
アルミボディは、高級車やSUVを中心に、HEVやEVにも採用が広がっています。
ただし最近の軽量化のトレンドは、アルミへの置換だけでなく、高張力鋼板やホットプレス、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などを適材適所で併用する「マルチマテリアル化」です。
(Mr.ソラン)