■同じ85kWの3気筒エンジンを積み、全長も近似の4115mm。
注目度Max! トヨタが2020年秋に発売するヤリスクロスはヒット間違いなしと評判の新しいクロスオーバーSUVです。
以前にもお伝えしたように、トヨタのSUVラインナップでいうとライズとC-HRのちょうど中間的なサイズ(全長)で、ラインナップの谷を埋めると考えられます。つまり、同一ブランド内でユーザーを奪い合うのではなく、SUVマーケット全体を拡大する戦略的なモデルといえるわけです。
ヤリスクロスの全長は4180mm、これは国産ブランド全体を見てもライバル不在といえる絶妙なサイズで、あえてサイズ的なライバルとしてピックアップできるのは1.4Lターボエンジンのスズキ・エスクード(全長4175mm・全幅1775mm・全高1610mm)くらいのものです。
では、グローバルにもヤリスクロスはライバル不在なのかといえば、そうではありません。ボディサイズやパワートレインといった面でガチンコのライバルとなりそうなモデルがあります。
それがフォルクスワーゲン・T-Crossです。
ご存じのように、T-Crossは同社のポロのアーキテクチャを利用したクロスオーバーSUVで、日本に上陸済み。全長はヤリスクロスの4180mmより少々短めの4115mm。全幅も5mmしか違いません。
エンジンは最高出力85kW(116PS)の1.0Lガソリン直噴ターボで、7速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせています。
この85kWという数値、どこかで見覚えがあると思ったら、ヤリスクロスの1.5Lハイブリッドのシステム最高出力も同じ85kWなのです。ガソリンターボとハイブリッドでは特性はかなり違うでしょうが、 パフォーマンス面でも同等のガチンコライバルといえそうです。
さらにいえば、T-Cross、ヤリスクロスともにエンジンは3気筒というのも共通しています。意外にも似た部分がある2台です。
全長も近ければ、ホイールベースも10mmしか変わりませんから、まだフォトデビューしかしていないヤリスクロスのキャビンを想像するのにT-Crossは参考になりそうです。
では、T-Crossの室内スペースはどうなのでしょうか。タンデムディスタンスといわれる前後の距離はコンパクトな印象を受けますが、室内高に余裕があり、なおかつ後席はちゃんとした姿勢で座れるシートとなっていることもあって、外観から想像するよりも「ちゃんと4名乗車できる」SUVに仕上がっています。
実際に座ってみないとヤリスクロスのキャビンも同様に余裕を感じるものなのかどうかわかりませんが、少なくともT-Crossの居住性のよさは、コンパクトにみえるクロスオーバーSUVでもパッケージング次第では十分に快適なスペースを実現できることを示しています。
そう思うとヤリスクロスの居住スペースにも余裕が感じられそうと期待が高まります。
さらにヤリスクロスでは、リアのオーバーハングをヤリスに対して180mmも長くしているといいます。つまりラゲッジスペースが拡大しているわけで、そこもコンパクトクラスのSUVとして魅力となりそうです。
さて、ライバル比較的にヤリスクロスとT-Crossを比べていくと、日常的に感じる最大の違いとなりそうなのがパーキングブレーキ。
T-Crossはハンドレバーを引いてパーキングブレーキをかけるオーソドックスなタイプですが、ヤリスクロスは電動パーキングブレーキ(EPB)が備わっていることが公開されている写真から確認できます。
EPBは先進運転支援システムにおいて停止保持関連で「できること」が増えますから、よりドライバーの負担が軽減されることが期待できるのです。
なによりヤリスクロスに期待したいのは燃費性能。ヤリスのハイブリッド(FF)の燃費性能はWLTCモード36.0km/Lと非常に優れたものです。
パワートレインの基本はヤリス譲りですからSUVカテゴリーとしては並外れた好燃費を実現しているはずで、その点においてはヤリスクロスはライバル不在となる可能性大です。
(自動車コラムニスト・山本晋也)