■「このクッション、気持ちいいね」
出張帰りの彼女を空港まで迎えに来た。
……というのは単なる大義名分で、本当は買ったばかりのBMW「740Ld xDrive」でドライブを楽しみたかったからだ。
7シリーズはBMWの頂点に立つセダンでメルセデス・ベンツ「Sクラス」やアウディ「A8」、そして国産だとレクサス「LS」あたりがライバル。だけど、7シリーズは他とはちょっと違うと思っている。それは運転する楽しさだ。
フラッグシップセダンではあるけれど、後席にふんぞり返るためだけのセダンじゃない。それは交差点を普通に曲がるだけでも感じられ、ドライバーのハンドル操作に応じて軽快に曲がる俊敏さがBMWらしい。「駆け抜ける歓び」が詰まっているのだ。あくまで「大きなセダンのBMW」じゃなく「BMWの大きなセダン」。運転が好きなら、その違いはすぐにわかるんじゃないかな。
「このクッション、とても気持ちいいね。」
彼女が7シリーズに接するのは今日がはじめて。荷物をトランクに入れるなり、「こっちのほうがこのクルマの良さを感じられそうだから」と後席に乗り込んだ。その直観力はさすがだと思う。
そして凝ったステッチの入った、肌触りのいいレザーシートに身をゆだねた彼女がまず目を付けたのは、ヘッドレストだ。
ヘッドレストにはエクステンションともいうべきクッションが別体で追加されていて、そのソフトな使い心地はこのクルマの後席が特別な空間であることをアピールしている。その心地よさを彼女は気に入ったらしい。
「なんだか寝ちゃいそう。くつろげるから」
空港ターミナルをあとに走り始めると、彼女はちょっと眠そうな表情でクルマを褒めた(のだと思う)。
フラッグシップセダンだけに、後席スペースは広い。しかし単に広いだけでなく、ラグジュアリーなことも7シリーズの自慢だ。リッチな表皮のシートには電動調整機能が組み込まれていてリクライニングできるし、シートヒーターやベンチレーションも内蔵。そのシートのコントロールを、センターコンソールに組み込まれたタブレットでおこなうのは斬新だ。
「こうやって操作するのってなんだか飛行機みたいだね。シートの座り心地がよくて快適だから、遠くまで出かけても疲れなさそうだね。」
それは飛行機でも最新のビジネスクラスでしょ?……と言いかけたけど、やめておこう。
ドライバーのボクは運転を楽しめる。いっぽう後席はリラックスで疲れ知らず。そんな2面性が7シリーズの真骨頂じゃないだろうか。出張帰りの彼女は疲れているみたいだけど、ちょっと遠回りして帰ろうか。だって、後席で心地よさそうに寝ているから。(後編へ続く)
(文:工藤貴宏/今回の“彼女”:久保まい/ヘア&メイク:牧 詠子/写真:ダン・アオキ)