N-BOXの爆売れの理由は「おもてなし設計」。N-BOX、タント、スペーシアを比べれば分かるその魅力とは?

●2019年も爆破的に売れた「軽スーパーハイトワゴン」の3台

N-BOXフロント
2019年年間販売台数は25万3500台で一位のN-BOX
タントフロント
2019年の年間販売台数は17万5292台で2位のタント
スペーシア
2019年年間販売台数は16万6389台で3位のスぺ―シア

2019年、国内の自動車年間販売台数ランキングは、1位がホンダN-BOX(25万3500台)、2位がダイハツタント(17万5292台)、3位がスズキスペーシア(16万6389台)と、「軽スーパーハイトワゴン」がTOP3を独占する結果となりました。

2019年登録車トップのプリウスが12万5587台というのですから、3位のスペーシアですらプリウスよりも売れたことになります。

似たようなボディスタイルをもつ3台ですが、何故かホンダN-BOXが圧倒的に売れています。その理由とはいったいどこにあるのでしょうか?

★ホンダN-BOX  G・Lターボ Honda SENSING 4WD
車両本体187万1100円+付属品合計38万1964円 (10%税込)

★ダイハツタント X 2WD
車両本体149万500円+付属品合計41万7340円 (10%税込)

★スズキスペーシア  HYBRID X 2WD
車両本体149万6000円+付属品合計46万3155円 (10%税込)

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■3台のボディサイズはどれだけ違う?
■いまや軽にも必須の先進安全技術、しかしACCとLKCがないスペーシア
■運転席からの視界は、N-BOXが一番見やすい!
■カタログ燃費はスペーシアが優位だが、実燃費は3台とも「変わらない」

■3台のボディサイズはどれだけ違う?

N-BOXフロント
丸いヘッドライトが特徴的なN-BOX
タントフロント
長方形のスクエアなヘッドライトと、ブラックのグリルが精粋なイメージのタント
スペーシアフロント
大き目のヘッドライトと口の字のグリルが特徴的のスペーシア

この3台とも、軽自動車の制限サイズ枠いっぱいの全長3,395mm、全幅1,475mm。全高はタントが1,755mm、N-BOXが1,790mm、そしてスペーシアが1,800mmという順列で高くなります。(※ただしN-BOXの試乗車は、4WDであったため1815㎜)。

特にN-BOXとスペーシアの後席は、さすがの広さを誇っており、シートを最も後方までスライドさせれば、足を組んでなお余りある前後スペースと、大人でも腰をかがめれば車内を移動できる程の広さを誇り、クルマの中で着替えなどをするにも余裕があります。

N-BOXサイド
2トンカラーが可愛い
タントサイド
ミラクルオープンドアが特徴的
スペーシアサイド
ボディに入ったキャラクターラインが独特。

とはいえ、どのクルマも全幅よりも全高が高い「ハイトワゴン」ですので、高速走行中に横風の影響を受けたり、コーナーでの走行安定性に不安なところが出てしまいます。このウィークポイントを、3台がいかにしてカバーしているのかは別記事にてレポートいたします。

N-BOXリア
N-BOXのテールランプはボディの縁ギリギリに位置している
タントリア
リアゲートはN-BOX並みに広く開くタント。
スペーシアリア
2台と比べるとやや狭い開口部のスペーシア。

■いまや軽にも必須の先進安全技術、しかしACCとLKCがないスペーシア

いまや軽自動車にも当たり前に先進安全技術が装備される時代へとなりました。衝突被害軽減ブレーキ、踏み間違え防止機能、後退時誤発進抑制機能は、3台ともに装備されています。

ただし、スペーシアには、タントやN-BOXにはある前走車に追従してくれるクルーズコントロールと、車線逸脱を防止してくれるハンドルアシストシステムがなく、前走車の追従機能がないクルーズコントロールと車線逸脱警報がオプション設定であるのみとなっており、スほかの2台と比べて先進装備が見劣りしている状況です。

N-BOXには、ACCやLKAS(車線維持支援システム)を備えた最新の「HONDA SENSING」が標準装備されていますし、タントにも「スマートアシストプラス」としてACCとLKC(レーンキープコントロール)がオプションとして設定されています。背高で運転が不安定になりがちな「軽スーパーハイトワゴン」にこそ、こうした装備は必要に感じます。スペーシアには、早急な対応が望まれます。

N-BOXインテリア
ホンダセンシングは、軽自動車の魅力を一気に引き上げた
タントインテリア
メーターが見やすく、遠い位置にある。
スペーシアインテリア
最もオーソドックスなインテリアだが、艶のあるダッシュボードがクラシカルな雰囲気を持っている

■運転席からの視界は、N-BOXが一番見やすい!

軽スーパーハイトワゴン特有のピラー窓によって、3台とも前方の視界は良いのですが、最も視界が優れているのはN-BOXです。

Aピラーが運転席から見たときに細く設計されており、ピラー窓の効果を最大限発揮しています。このN-BOXのAピラー、細く見えますが、実は奥方向には厚みを持たせてあり、車体剛性はしっかりと確保されています。

N-BOXインテリア
Aピラーが細く死角が少ない
タントインテリア
助手席側の補助ミラーが外にあるため、やや見にくい
スペーシアインテリア
明るい雰囲気で艶のあるインテリアはオシャレ

またN-BOXとスペーシアは、助手席側の外の視界確保も工夫されています。タントは、左のサイドミラーの下にある「小さくて見えにくい」曲面ミラー式ですが、N-BOXとスペーシアは、車室内にミラーを設けて外の景色を映す、という仕組みとなっています。この方式だと、死角がドライバーの近くで確認できるため、比較的、確認しやすいのです。

わずかな違いですが、こうした「おもてなし設計」に一番長けているのは、N-BOXといえるでしょう。

N-BOX補助ミラー
助手席側の死角が少ない
タント補助ミラー
雨が降ると死角の確認が厳しくなる
スペーシア補助ミラー
大きめで見やすい

■カタログ燃費はスペーシアが優位だが、実燃費は3台とも「変わらない」

3台のカタログ燃費は以下の通りです。

ホンダN-BOX G L HONDA SENSING 2WD…27.0 km/L(JC08モード)
ダイハツタント X 2WD…27.2 km/L(JC08モード)
スズキスペーシアHYBRID G 2WD…30.0 km/L(JC08モード)

マイルドハイブリッドシステムを標準装備するスペーシアがJC08モード燃費では一番いい、という状況ですが、実燃費により近いWLTCモード燃費表示がスペーシアにはありませんでした(タント・N-BOXにはあり)。

いずれも200㎞程度走行した印象では、実燃費は、リッター15~17km程度で、3台とも燃費性能は、ほぼ同等、といったところです。

(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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