■CX-8でモーグルコースを含む悪路を走るとどうなる?
マツダのSUVというと「Be a Driver.」というキャッチフレーズからも想像できるように、オンロードでの走りに重きを置いたモデル、という印象を受ける方も多いと思います。もちろん、雪上走行などの生活四駆としての機能は十分に果たしてくれるけれど、「泥が似合う」という雰囲気は少なくとも外観からは漂ってきません。
それは、「鼓動デザイン」による洗練された意匠や、エクステリアの下部をグルリと囲むスポイラー類、さらには全高を低く見せる手法も盛り込まれているといった要素によるものでしょう。
今回、マツダが用意した試乗ステージは、有名な富士ヶ嶺オフロードコース。CX-5、CX-8、CX-30を異なるコースで乗り比べるというもので、この3台がオフロード専用コースを走っている様子は、運転するまではやはり多少の違和感がありました。
まず、乗り込んだのはCX-8。じつは、CX-8の最低地上高は200mm(CX-5は210mm、CX-30は175mm)あり、SUBARUフォレスターの220mmには及ばないものの、トヨタRAV4の190〜200mm、日産エクストレイルの200〜205mmなど、オフロードでの高い悪路走破性を謳うSUVと遜色のないクリアランスが確保されています。アプローチアングルなどは、先述のスポイラーなどによりライバルよりも余裕はなさそうに見えますが。
■「オフロード・トラクション・アシスト(OTA)」の効果は絶大
CX-8とCX-5のトピックスは「オフロード・トラクション・アシスト(OTA)」が商品改良で追加された点。トラクションコントロールとAWDの協調制御で、制動力と駆動力をコントロールするシステムです。
AWDのトルクを最大化すると共に、空転輪に対しては、強いブレーキを掛けることで「LSD(リミテッド・スリップ・デフ)効果」を得ようというのが狙いです。最近の電子制御式4WDに多いタイプ。
利点としては、コストを抑制できるほか、重量増の抑制、オンロードでのコントロール性も犠牲にしない点などがあります。一方で、デフロックを備えたオフロード系のような左右締結による高い駆動力を確保したり、LSD搭載車のような連続的な駆動力伝達までは至りません。
それでもマツダは、走行シーンで95%に達するオンロードでのコントロール性を確保しながら、悪路走破性にも対応するとしていて、乗用系SUVとしては当然採用されるシステムといえるでしょう。
CX-8のオフロード試乗コースには、モーグルコースやすり鉢コースが含まれていて、モーグルコースでは1輪が完全に浮き上がるようなシーンもありました。モーグルコースでは、そのアプローチアングルが少し気になりながらも、「オフロード・トラクション・アシスト(OTA)」をオフにした状態でもモーグルをクリアできそうな印象。
一度、モーグル上で停止させてから再発進すると、OTAにより空転輪のスリップを抑制し、設地輪に駆動力が伝わるのが伝わってきます。OTAにより雪上でスタックしてしまっても脱出が容易になるはず。また、今回のオフロードコースのような林道やキャンプ場などはあまりないかもしれませんが、凸凹の多い路面でより安心して走破する際にもOTAは威力を発揮しそう。
すり鉢コースでは、いまでは多くの乗用系SUVでも採用している「ヒルディセントコントロール」が設定されていないのが気になりましたが、ブレーキ操作でもロックすることなく急勾配(下り)をクリアできました。さらに、OTAをオンにすると、急な登り勾配での再発進でも後退するのを防いでくれるので、雪上などの登り坂でも安心感が得られるはず。
また、オルガン式アクセルペダルを採用するマツダ車らしく、微細なアクセルワークに対応してくれるのも悪路ではありがたく感じられました。
オンロードでの走りが身上であるため、オフロードでは足のストローク感が伸び、縮み側共にやや不足気味に感じられました。また、乗り心地も引き締まっているため、それなりに揺すられる感じはします。それでも、実際にオフロードコースを難なく走破できましたし、これならキャンプやウインタースポーツの相棒としてAWD仕様は、十分に応えてくれます。
(文/塚田勝弘 写真/長野達郎)