東京オリンピックでの公道使用を予定。ナンバー取得可能で公道走行が可能な電気自動車「LQ」【東京モーターショー2019】

●「未来の愛車体験コンセプト」を具現化したコンセプトモデル

トヨタが東京モーターショーで初公開するEVの「LQ」は、2017年のCESや東京モーターショーで公開された「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」で表現された「未来の愛車体験コンセプト」を具現化したというコンセプトモデルです。

トヨタ LQ
トヨタの公道走行可能なコンセプトカー「LQ」の外観

コンセプトカーといっても2020年の東京オリンピック・パラリンピックで聖火リレーの隊列車両、マラソン競技などの先導車としても使用される予定になっています。ナンバーの取得が可能で、東京オリンピック・パラリンピックでは、組織委員会などの運営側に託されて、スタッフの方々がステアリングを握ることも想定されているそう。

トヨタ LQ
トヨタ LQのリヤビュー
トヨタ LQ
トヨタ LQのサイドビュー

トヨタには、今までiQ、eQというモデルがありましたが、豊田章男社長は、LQについて「台数を追う時代は効率化が重要だった。ここで必要だったのはiQ」「次に完成性能の時代が来た。ここではeQが必要だった」、そして「これからの時代に必要なのは愛、すなわちLQだ」とコメント。

「愛車」というキーワードを大切にしている豊田章男社長、トヨタ自動車の「新しい時代の愛車」という想いが込められています。

LQは、「Learn,Grow,Love」をテーマに掲げ、アメリカで人工知能や自動運転・ロボティクスなどの研究開発を行っているToyota Research Instituteと共同開発されたAIエージェント、自動運転技術が搭載され、SAEレベル4相当を実現するとしています。

ボディサイズは全長4530×全幅1840×全高1480mm、ホイールベースは2700mm。車両重量は1680kg、乗車定員は4名、航続可能距離は300km程度とされています。

エクステリアデザインは、キャビンを前に出した未来的シルエットが特徴。車両中央にある「YUI」を起点に、内外装をシームレスに連続させる「INSIDE OUT」をデザインテーマとして掲げています。

外観は、ドアの下部もガラス面とすることで、ドア部分と車内空間がシームレスにつながり、より洗練された造形が目を惹きます。タイヤは、ブリヂストンの「ECOPIA EP500 ologic」を装置。

内装は、エアコンの吹き出し口を乗員から見えない場所に配置するインビジブルレジスタが採用されていて、インパネ周辺の凹凸が少ないシンプルな造形になっています。また、センターコンソールには、トポロジー最適化という設計手法と3Dプリンター工法の組み合わせにより、強度確保とデザインに分かれていた構造を一体化。乗員から見える支持構造体を減らすことで、先進的なキャビンの実現に貢献。

トヨタ LQ
トヨタ LQのインパネ

「YUI」と命名されたAIは、乗員の表情や動作から感情や眠気などを推定し、会話を中心としたコミュニケーションに加えて、覚醒・リラックス誘導機能付のシート、音楽、車内イルミネーション、空調、フレグランスなどの各HMIを使って乗員に働きかけることで、安全、安心、快適な移動に貢献するとしています。「YUI」の開発、サービス向上のため、JTB、AWA、NTTドコモとの協力により開発が進められているそう。

トヨタ LQ
トヨタ LQのフロントシート

カメラ、ソナー、レーダー、2次元路面マップを使い、レベル4の自動運転では、無人自動バレーパーキングシステムを搭載。隣のクルマと20cm感覚で駐車できるそうです。

トヨタ LQ
トヨタ LQのリヤシート。4人定員

さらに、パナソニックと共同開発によるAR(Augmented Reality)、つまり拡張現実の表示が可能なHUD(ヘッドアップディスプレイ)も搭載されます。ウインドウシールド越しに見える風景に、車線や標識、経路案内などの運転をサポートする情報を立体的に表示。230インチ相当の大画面表示となっています。

トヨタ LQ
トヨタ LQには大型のHUDを搭載

そのほか、世界初の覚醒・リラックス誘導機能付きシート、新しいHMIも用意されています。新HMIは、ルーフやフロアマットをHMI領域として活用。イルミネーションをフロアマットやルーフに搭載し、自動運転と手動運転モードで異なるカラーを点灯するなどの工夫が凝らされています。

また、車内外のコミュニケーション手段として、ヘッドランプに内蔵された100万個の微少なミラーの切り替えによって、複雑な図形や文字を路面に描画できるDMD(Digital Micromirror)式ヘッドライトを搭載。

さらに、有機ELメーター、走行時に光化学スモッグの原因となる地表付近のオゾンを分解する大気浄化塗料など、「走れば走るほど、空気がきれいになるクルマ(マイナスエミッション技術)」も含まれていて、同技術は市販車両への搭載を検討するとしています。

モーターショーに出展されるこうしたコンセプトカーは「どうせ、夢物語でしょう?」と冷めた視線で見られることもあるかもしれません。しかし、EVの「LQ」はナンバーの取得が可能で、東京オリンピック・パラリンピックでは実際に走行する予定です。

トヨタでは今回、「先行開発」→「コンセプトカー」→「市販車開発」という流れに変更することで、市販車を示唆するモデルであったり、市販前提の技術として提案されることになります。なお、LQからは、効率的な少量生産への挑戦というテーマも加わっているそうです。

(文/塚田勝弘 写真/角田伸幸、塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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