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■心地よい音は残し不快な騒音だけを取り除く
●低減方法は5つに大別できる
エンジンンの吸気系管内には、間欠的な空気の吸い込みによって吸気脈動が発生します。この吸気脈動が特定のエンジン回転で共鳴を起こし、大きな吸気音となって問題となることがあります。
吸気系上流に装着するレゾネーターの吸気音低減原理と効果について、解説していきます。
●なぜ吸気音は発生するのか
エンジンは燃焼に必要な空気を間欠的に吸入するため、吸気系の管内には脈動が発生します。吸気脈度は、吸気弁付近で発生した負圧波が上流の吸い込み口へ伝播し、解放端で反射することによって発生します。
吸気音は、特定のエンジン回転数で共鳴が起こり、吸気脈動が増幅することによって発生します。また共鳴の発生は、吸気脈動の周波数を決定するエンジン回転と、吸気系の管長や管径など吸気系レイアウトに依存します。
●吸気音の低減手法
吸気音の低減には、大きく分けて5つの手法があります。
・吸音型
吸音材といわれるグラスウール(ガラス繊維)を使って、主に高周波の騒音を低減させます。音のエネルギーの一部が、グラスウールの振動に変換されて音が減衰されます。
・拡張型
容積を持つエアクリーナーやサージタンクが相当し、低・中周波の低減に有効です。パイプから出てきた音圧が一気に広い空間に解放されることで、音のエネルギーが減衰します。また内部の壁で反射が繰り返され、音が減衰します。
・干渉型
他系統の音同士を干渉させ、逆位相の周波数を組み合わせて低減します。特定周波数の低減はできますが、対応できる周波数域は狭いです。
・抵抗型
通路を一時的に絞ることで、広範囲の周波数域で低減が可能です。圧力損失が発生するので、使用は限定されます。
・共鳴型
ヘルムホルツの共鳴器の原理を利用したレゾネーターです。詳細は、後述します。
●共鳴型レゾネーターによる吸気音の低減原理と効果
吸気系の上流に一定容積の共鳴室を装着する吸気レゾネーターは、「ヘルムホルツの共鳴器」の原理に基づいて、吸気音を低減します。
レゾネーターは、以下の式で示す特定周波数の低減に有効です。
f (共鳴周波数) = c/2π×√(S/VL) (c:音速、S:連通管面積、V:共鳴室容積、L:連通管長さ)
共鳴室の容積と連通管の径、長さによって決まる特定周波数で共鳴室内の圧力が振動し、共鳴室内の反射波によって振動が減衰し、また連通管を流れが往来するときの摩擦によって音のエネルギーが低減します。
共鳴室の容積が小さいと振動幅が小さくなり高周波成分の低減、容積が大きいと振幅幅が大きくなるので低周波成分の低減に有効です。
複数の周波数成分の音を低減するために、共鳴室を分割する、あるいは複数の共鳴室を設ける場合もあります。
低周波数の吸気音は、拡張型のエアクリーナーである程度は低減できますが、中・高周波の吸気音は共鳴型レゾネーターで低減するのが、一般的です。レゾネーターの取り付け位置は、吸気音の低減効果だけでなく、吸気効率にも影響するので注意が必要です。
騒音の改良は、「もぐら叩き」のようです。何かを抑えると、それまでマスクされて目立たなかった成分が際立つようになります。
加速とともに増大するリニア感がある音は、不快でなく、むしろ加速感を表現するために必要です。ところが、特定条件の共鳴で唐突に発生する吸気音は、ドライバーを不快にさせる騒音なので、改良が必要です。
(Mr.ソラン)