●スポーツカーゆえ絞り込んだ運転支援装備
後篇ではBMW Z4 M40iに搭載される運転支援機能を紹介していきましょう。ここで紹介するのはいずれも日本仕様に標準装着されるものです。
「ストップ&ゴー機能付きアクティブ クルーズ コントロール(ACC)」は、30〜160km/hの範囲で起動可能、先行車が停止すると追従して停止し、再び発進するときにはアクセルペダルを軽くタッチすれば追従走行を始めてくれます。
いわゆるレーンキープの機能は盛り込まれませんでしたが、車線をはみ出そうとすると警告してくれる「レーン・ディパーチャー・ウォーニング」、車線変更時に他車との接触が懸念される場合に働く「レーン・チェンジ・ウォーニング」は搭載されます。また脇見運転のときなどに働く「前車接近警告機能」や、実際にブレーキを作動させ衝突を防ぐ「衝突回避・被害軽減ブレーキ」、追突されそうになった場合にハザードを点灯させるなどして備える「後車衝突警告機能」も組み合わせられます。
駐車サポート関連では並列駐車/縦列駐車時にステアリングを自動操作する「パーキング アシスタント」、後退時に側方から交通がある場合に警告してくれる「クロス・トラフィック・ウォーニング」がZ4では新しい装備です。障害物との距離を超音波センサーで測る「パーク ディスタンス コントロール(PDC)」と「リアビューカメラ」ももちろん搭載されます。このほか、ナビや空調などiDriveの機能の一部を音声で操れる「BMW インテリジェント・パーソナル・アシスタント」も装備します。
●ACCの仕上がりはサルーン並み
「自ら操る」のが主眼であるスポーツカーゆえ、Z4に搭載される運転支援機構の種類は、先発の新型3シリーズよりも限られたものとなりました。しかしレーダーセンサーと単眼式カメラを組み合わせた、ストップ&ゴー機能付きACCの能力はほかのBMW製サルーンに遜色なく、かなり巧妙に前車との間隔を維持してくれますし、カーブなどで隣の車線のクルマを間違えて先行車として捉えてしまうようなケースが少ないように思えました。
レーン・ディパーチャー・ウォーニングは、従来のBMWより介入する頻度が少なくなった反面、車線逸脱を検知するとグイッと強めに操舵して車線中央に戻そうとします。前車接近警告機能および衝突回避・被害軽減ブレーキについては、今回ブレーキの作動まで試す機会はありませんでしたが、メーターパネルに警告が出てから警告音になるまでかなり我慢している感じで、できるだけドライバーの操作を妨げないようにという配慮がうかがえました。
これほど出来のいいACCが備わるなら、レーンキープも入れてくれれば楽チンなのに、と思う人も少なくないかもしれません。しかしその設定は日本仕様に限らずZ4には存在しないようで、スポーツカーに対するBMWの考え方を反映したものといえるでしょう。
なおトータル170.6km走った今回の取材における通算燃費は、オンボード・コンピュータ上で6.8km/L。平均速度20.8km/hと、高速巡航の時間が短く、市街地走行の時間が長かったことは勘案すべきですが、パワフルな6気筒エンジンをそれなりに元気に走らせようとすると、燃料もそれなりに消費することを示しています。いつもの周回コースにおけるデータは8.1km/Lで、スバル・レヴォーグ1.6GT-S アイサイトの9.1km/Lよりも、アウディA8 55 TFSIクワトロの7.9km/Lに近い数値となりました。
(花嶋言成)
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