僭越ながら、わたくし伊藤 梓はいかにしてクルマ好きになったか?

前回「ロードスターでレースに出場するまでの軌跡をお伝えします!」と大々的に発表したものの、今回はレースはひとまず置いておいて(すみません)、まずはそもそも私が何者で、なぜクルマの記事を書いているの?というところからお話したいと思います。

いまはクルマが好きで好きでしょうがない私。でも、昔からクルマが好きだったわけではありませんでした。東北の田舎で生まれ育ったので、まわりを見れば様々なクルマはあふれていました。「あの丸っこいクルマは何て言うんだろう」「“ミニクーパー”ってかわいいな」「ひし形のマーク(ルノー)とか山が重なったマーク(シトロエン)のクルマも素敵」……そのときはメーカーも車種名もよく知らずにクルマを眺めていたのはよく覚えています。きっと潜在的には好きだったんでしょうね。ただその自分の気持ちを深く知ることはなく、そのうちに社会人になっていました。

大学では工学部に所属していたのですが、昔から漫画や絵が大好きで美術系の仕事への夢が捨てきれず、結局グラフィックデザイナーとして就職することに。そこで様々な仕事を経て出会ったのが「トミカ」でした。その職場では、キャラクターと融合させたトミカを扱っていたのですが、とある先輩が作るトミカが異様に素晴らしいデザインをしていることに気づいたのです。キャラクター商品としての可愛らしさはもちろん、なにより「クルマ」として可愛く、かっこいい。何が違うんだろう?とその先輩に話を聞いてみると、なんと彼は元々カーデザイナーだったというのです。

先輩いわく「クルマはたとえば、人が何人乗るか、荷室容量はどのくらいか、エンジンの大きさはどのくらいか……そういったクルマの中身を知らなければ、きちんとしたクルマのデザインはできない」と。その話に感銘を受けた私は、クルマの参考書を買い集め、クルマの中身や仕組みを勉強しはじめました。そして、いつの間にかクルマの雑誌まで定期的に読むようになり、そのうちに気づいてしまったのです。「世の中でクルマほど面白いものはない!」と。

これまで興味があったクルマのデザインはもちろん、運転してみるとクルマごとにそれぞれ受ける違う感覚、部品のひとつひとつに込められているであろう様々な人の苦労……。知れば知るほど、クルマほど隅から隅まで楽しめるものはないと思ったのです。そして、「もしその魅力を知らない人がいるのなら、絶対に伝えなくちゃいけない!」という、よくわからない勝手な使命を感じ、突然デザイナーから自動車雑誌の編集者へと転身。そして、いまは自動車雑誌から独立してより広くクルマのことを伝えられたらと考えています。そんな嘘のような本当の話が、わたくし伊藤梓のクルマ大好き人生のはじまりというわけなのです……。