クルマを思い通りに走らせるためには、いまクルマがどんな状態にあるのかを正確に知り、そして何のストレスもないように様々な操作ができる必要があります。そのうえでインパネまわりは、ドライバーの意思とクルマをつなぐ極めて重要なものとなります。
しかしそれと同時に、乗員にとってクルマは乗ってしまうとどんなカタチなのがまったく見えません。スポーツカーなど走るためのデザインを重視したモデルでは、ことさらエクステリアのイメージが、室内にいてもしっかりと伝わってくることが重要にもなってきます。ここではいくつかのスポーツカーのインテリアを紹介していきます。
フェラーリ・カリフォルニア ルーフを格納してオープンエアも堪能できるクーペカブリオレ。単なるスポーツだけでなく、足代わりに流す手軽さも加味。豪華セダンにも負けないラグジュアリーな表情がそのインパネからも見えます。
フェラーリ458イタリア 走りに徹した造形。ミッドシップによる低いボンネットに併せ視界のよさも徹底。ステアリングスイッチになったウインカーが示すように、ステアリングを握る手をできるだけ離さずに主要な操作を可能にする考え。
レクサスLFA 誤った操作をさせないように同じ動作のスイッチの集合部分をできるだけ減らすように配置。主要な機能と操作方法・方向を特定して設定することで、ドライバーの意識にすり込む狙いのようです。
フェアレディZ タコメーターを中心として典型的なレイアウトに、伝統的な3連メーターを象徴的に配置しています。視線を大きく動かさずにメーターを確認できることに配慮している点も特徴。
BMW Z4 BMWらしく、操作系を高い位置に配置し手色分けもしてゾーニング。ウィンドウへの反射を極力抑えるマットなブラックのダッシュボードに、控えめなカラーリングと思い切りのよいデザインで華やかさを与えています。
日産GT-R 超高速での快適操作のために、ブラインドタッチで機能の判別がしやすくデザインされています。操作方法の同じスイッチをできるだけとなり合わせない配列が基本ですが、隣合っているものには十分な間隔を取っています。
ポルシェ911カレラGTS 小さなエアバッグによって、メーターを確認しやすくしています。走りの機能に特化したレイアウトで、オーディオ、エアコンは凝縮ぎみですが、ボリューム、温度調整など最低限のものの操作方法を独自化しています。
スポーツカーにとっては速く走れるように設計することが、美しいデザインにつながると言えます。しかし、ここに紹介したように、スポーツカーはまったく異なるキャラクターを持っています。当然使われ方は異なり、そのシチュエーションに併せてインパネデザインも大きく違ってきます。見やすい、扱いやすいということに加えて、そのクルマならではの演出こそが、デザイナーの腕の見せ所なのでしょう。来週は、セダンのインパネを取り上げてみましょう。
(MATSUNAGA, Hironobu)