新しく投入されたプジョーのフラッグシップ、プジョー508。アッパーミドルセダンでありながら、エンジンの排気量はわずかに1.6リッターしかありません。最新のダウンサイジングターボが、予想外にパワフルなのは知っていますが、プジョー508はどんな走りになっているのか? そこが試乗前の最大の興味でした。
まずは、駐車場から出発。電動油圧式のパワーステアリングは、パーキングスピードで手応えが重めです。ギヤ比はスローな印象。アッパーミドルクラスのクルマに相応しい重厚感ですね。そして、エンジンはといえば、おっ! と思うように、ドンとトルクが出ます。低速度では予想以上に力強く感じます。
そして、スピードを上げてゆけば、今度は鼻先の軽さに気付きます。ジワリとステアリングを切れば、ゆっくりと鼻先の向きは変わるのですが、その先がスッと軽いんですね。レーンチェンジや回り込むようなコーナリングでは、クルマ全体から軽快感を強く感じることができます。車体は、全長4790mm×全幅1855mmとアッパーミドルセダンそのものの寸法ですが、ひとクラス下のような軽快さがあります。鼻先に搭載される1.6リッターエンジンの軽さが、ハンドリングに大きな影響を与えているのでしょう。
しかも、1.6リッターターボ・エンジンは1400回転も回れば最大トルク240Nmを発揮します。下から充分なトルクがあるので、コーナリングの加減速でグイグイと車体を押し出します。気がつくと、ついついペースを上げたくなってしまうんですね。ことさらスポーティという演出はないのですが、その気になって走りたくなるドライバーの気持ちにしっかりと応えてくれるというわけです。
ただし、街中やワインディングではパワー不足を感じなかったエンジンですが、高速道路での追い越し加速などでは、車両重量1520kgに対して115kW(156ps)の限界を感じました。必要充分というもので、パワフルというほどではありません。ですが、法定速度+アルファで走る分には不足はありません。あくまでも思い切りな加速をした場合に感じる欲求不満といったところでしょうか。
そんなこんなで走らせてみると、ドイツのプレミアムカーとは異なった、プジョー508独自のキャラクターがあることが分かります。アッパーミドルセダンでありがならも、軽快に走るんですね。しかも、パワーにまかせてという力ずくなものではなく、文字通りに軽い動き。これこそが、プジョーならではのエモーショナルなドライビングと言っていいでしょう。楽しい走りを味わうことができました。
プジョーの公式サイトはこちら→http://www.peugeot.co.jp/
<鈴木ケンイチ>