トルコンの常識を覆された気分を前回お伝えしましたが、いよいよそのSKYACTIV-DRIVEが今回採用されたマツダ・ビアンテに乗ってみることにします。
外観は、ノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンなどの「5ナンバーサイズ」のミニバンより、幅が少し広くなっております。
正直言ってそれらのミニバンよりマーケット的にはやや水をあけられている感のあるビアンテ。「やっぱり全幅が広く5ナンバーサイズじゃないところがお客さんに躊躇させるんですかね(というか、きっとそうですよね)」と( )内を心の中で訳知り風に思いながら尋ねてみると、「いいえ、5ナンバーサイズじゃないことを気にされて購入を踏みとどまるお客様はそれほどでもないんですよ」と意外な答。
「いやぁ、そんなことないでしょ。日本の道路、駐車場は5ナンバー向きに作られてて・・・はっ!」と言いかけて思いとどまりました。いや、ここでもオートマ限定免許ができる以前からクルマのことを気にかけていた古い人間の常套句が「5ナンバーサイズ」であったことに気付きます。幅が1.7mを超えて3ナンバーになると税金が高いイメージ、なんてとっくにないんです。5ナンバーサイズ神話、すでに崩壊済みだったようです。
横幅が広いということは、室内が広いだけでなく立派に見えるわけで、立派に見えると言えば今度のビアンテには顔が二種類用意されています。ひとつが今までの歌舞伎役者風、そしてもうひとつが立派に見えるアル/ヴェル・エルグランド風とでもいうのでしょうか、メッキグリルがどーんとしている顔です。
歌舞伎風も好きじゃないですが、ひげクジラが笑っているようにも見えるエラそうバージョンも、内容の堅実さが顔に表れていないように見えて気に入りません。
と、先に「内容が堅実」と言っちゃいましたが、それくらいビアンテはマジメに作り込まれていると思いました。歌舞伎の顔さえなければもっと受け入れられたはずです。
セカンドシートやサードシートの作りも実用を考えたもので、3列目も使う前提のミニバンになっています。2列目は前後の他に左右にもスライドするカラクリシートを採用。3人掛けにも2人掛けにもすぐに切り替えられます。まあ、これは乗員人数がころころ変わる人を除けば、普段は家族構成に合わせてどちらかに選択、固定になりそうな気はしますが、切り替えられるのは悪いことじゃありません。3列目の乗降性は向上しますね。
さて、いよいよ走り出しましょう。
シートポジションを決め、エンジンをスタートさせてゆっくりハンドルを切りながらクルマが動き始めました。と、ここでけっこう「おおー、何じゃこりゃ」と思わせるくらい驚きがありました。
ステアリングシャフトの剛性が高いというのか、路面とハンドルがつながっている感じがよくわかるというのか、スポーツカーを動かしている感じです。目線は高いですが。
そのカッチリしたステアフィール、とっても好みです。気持ちいいです。切っただけ、タイヤが向きを変えたのが手に取るようにわかる気がします。
乗って動かした瞬間に「えー、こんなミニバンが日本にあったんだ」と思いました。20年近く前に乗ったフォルクスワーゲン・バナゴンの日本車と違うドイツ車っぽいシッカリ感を思い出しました。
では、次回はいよいよ本格的に走った感想です。
(小林和久)