輸入車市場に新潮流 ? 小型車導入に力を入れ始めた米国勢 !

財政再建で揺れる米国で今後の日本車販売はどうなる ?」でお伝えしたとおり、「財政の崖」に伴う経済リスクが懸念される米国ですが、日本車の販売は昨年に続き好調で、2013年に入っても2月までの累計販売台数でTOP10に5車種もランクインしいます。  

シボレーソニック
シボレーソニック

2月末までのランキングは以下のようになっており、日本車のコンパクトセダンが目立ちます。

米国自動車販売台数ランキング

そのような背景を踏まえて「TPP協定交渉参加を正式表明 ! 自動車業界への影響度は?」でも触れたとおり、米国車メーカーは日本車への関税撤廃は自国の自動車産業や雇用に打撃を与えるとの懸念から、こぞって日本とのTPP協定締結に反対しており、関税(乗用車2.5%、トラック25%)の現状維持を主張。

それだけでは無く、「日本の自動車市場は閉鎖的」として、日本の輸入車認証制度や日本国内で30%以上のシェアを占める軽自動車の優遇税制を「非関税障壁」と指摘。勿論、これには日本自動車工業会も「こじつけ」として反論しています。

シボレーソニック
シボレーソニック

とは言え、確かに日本の自動車市場は圧倒的に国産車が主体で、2012年度の国産乗用車の年間販売台数(軽自動車含む)約457万台に対して、輸入乗用車の総販売台数は約24万台(シェア率約5%)といった状況。

しかも人気の輸入車と言えばVW、Benz、BMW、Audiなどの欧州車が主流で、米国車はJEEPの約5,000を台を上限に総計1.2万台程度と、輸入乗用車の中でもさらに5%程度の少数派となっています。

フォードフォーカス
フォードフォーカス

ではなぜ日本で米国車は欧州車のように販売が伸びないのでしょうか。

その答えは当然ながら、日本人自身が一番よく知っている訳ですが、大きな要因として60~70年代の大きくて燃費が悪かった当時の米国車のイメージが定着化しており、オイルショックを機に一気に米国車への関心が薄れてしまった事が挙げられます。

実際、日本に今まで導入された米国車の大半は車幅が1.8mを超える大型セダンや大型SUVが多く、左ハンドルだったり燃費も10km/Lに満たない車種が殆どでした。

フォードフォーカス
フォードフォーカス

その一方で、日本市場への参入を本気で目指した欧州車は初代レクサス(セルシオ)をつぶさに研究してボディパネルの間隙を詰めたり、エンジンルームの臓物をカバーで覆い、インテリアの質感や建付け精度を大幅に向上させ、日本車では常識のカップホルダーをいち早く装備、更にはルーフハンドルやコンソールの蓋類の動きもダンパーでしなやかに動くように制御するなど、とにかく日本人の細やかな感性や合理性に合わせる努力を惜しみませんでした。燃費の向上にも積極的です。

同様に日本勢も米国のトレンドを研究して現地に適応させる数々の努力をしたことで米消費者に受け入れられている訳で、米国車が日本で売れないのはそうした努力が見えず、余り日本で「売る気」が感じられなかったからに他なりません。

クライスラーイプシロン
クライスラーイプシロン

軽自動車が日本の道路環境に特化したクルマであるように、ビッグサイズな乗用車やSUVも米国の道路環境に特化したクルマ。そんな大型車を日本に輸出しても販売が伸びないのは最初から明白。一部の米車マニアにウケる程度です。

ところが最近では米国でも経済情勢の悪化により、ようやく販売の主力が大型SUVから燃費の良いコンパクトカーへ移行し始めているようで、それに伴い日本への輸出車も従来の大型車から欧州系列会社のコンパクトモデル(シボレー・ソニックフォード・フォーカスクライスラーイプシロン等)へ切り替えるケースが見受けられるようになって来ました。 

クライスラーイプシロン
クライスラーイプシロン

そうした日本の道路事情に合ったクルマがリーズナブルな価格で多数導入されるようになれば米国車が数十年ぶりに再び日本の顧客の関心を引く可能性も十分に有り得そうです。 

・日本では知られざる実力派、フォード フォーカス3代目が今春 国内発売へ!
https://clicccar.com/2013/02/13/212726/

・TPP協定交渉参加を正式表明 ! 自動車業界への影響度は?
https://clicccar.com/2013/03/16/215328/ 

・自工会豊田会長が米の軽自動車「非関税障壁」指摘に言及 !
https://clicccar.com/2013/03/26/216146/

・財政再建で揺れる米国で今後の日本車販売はどうなる ?
https://clicccar.com/2013/03/05/214388/

 (Avanti Yasunori) 

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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