EVレースの面白さは、プロトタイプのワークスカーが走るEV-Pクラスや身近なEVの走るクラスだけではありません。
モーター出力無制限、バッテリーの仕様にも指定の無いEV-Cクラスには、往年の名車AE86 レビンやRX-7(FC3S)等をベースに自動車大学の生徒さん達が手作りでEVにコンバージョンしたマシンがエントリーしていました。
以前にもクリッカーで取り上げられ、名車や旧車が音も無く走るその姿をお伝えしてますが、今回の注目はテスラロードスターでEV-1クラスにエントリーしている東京自動車大学校がEV-CクラスにFC3S RX-7をベースとしたコンバージョンEVを投入していました。
こちらのRX-7はリチウムイオンバッテリーを搭載し、40kwの交流モーターで駆動しています。
この交流モーターは水冷式となっており、モーターから伸びるパイプの先にはラジエターが装備されています。
水冷式とはいえ、ガソリン車のラジエターと比べるとかなりコンパクトで、サイズ的にはアフターパーツメーカーのオイルクーラーくらいのサイズです。
搭載されるリチウムイオン電池は中国製の100Ahタイプを90セル搭載しています。
ピットでは学生さんが額に汗を浮かべながら真剣な眼差しで入念にバッテリーのコンディションをチェックしたりする姿に、未来のエンジニアの姿を垣間見た気がします。
ボンネット内部の衣装ケースに収まるコントローラー等は、まさに手作りEVと言った感じです。
今回EV-CクラスにFC3S RX-7でエントリーした東京自動車大学校はクラス2位を獲得。
クラス優勝を果たしたのは、オリジナルの赤黒ツートンカラーのAE86レビンをベースとした、その名もEV86。
こちらは千葉県自動車大学校の一級自動車研究科の学生さん達による手作りEVで、10年前から教材として使われてきたEV86を、先輩たちが改良し、それを後輩が受け継ぐことで進化し続けているそうです。
今シーズンからはバッテリーが鉛タイプの物から、リチウムイオンに変更され、さらに戦闘力が上がっているそうです。
ちなみにEV86は9月30日に開催された2012年第4回全日本EV-GPでクラス優勝を果たし、4戦中3度のクラス優勝を達成した事で、最終戦を待たずして今シーズンのEV-Cクラスのタイトルを獲得しました。
同じレビンでもAE111型をベースとしたEV111レビンで参戦するのは千葉県自動車総合大学校の1級整備科の学生さんの作品で、昨年1年をかけ制作されたこのマシンは、今年から参戦しているそうです。
今回EV-GP第4戦のEV-Cクラスにエントリーしたのは自動車大学校3校のみで、コンバージョンEVの戦いは、大学対抗戦となりました。
学生さん達が教材としても使用するベース車両は、かつてサーキットを賑わしたAE86やFC3S等を選択している為、サーキットでは最新のリーフやi-MiEVに混じって走行する姿に、懐かしさと斬新さを感じる事が出来ました。
自動車大学校の生徒さん達による手作りEVはこれからのEV時代に合わせた技術習得だけでなく、EVレースを観戦に来るギャラリーも楽しませてくれる重要な役割を持ったマシンと言えそうです。
(井元 貴幸)