スバルの”ぶつからない”技術、アイサイトVer.2の機能とは?

ぶつからないクルマとして、すっかり定着したスバルの運転支援システム【アイサイト Ver.2】ですが、その機能について考察してみましょう。

クルマの運転をする時に、ドライバーは目で見て、前方の状況を認識し、頭で判断をし、ブレーキやアクセルを操作します。
アイサイトも同様に、ルームミラー両側に設置されたCCDカメラで前方の状況を立体的に監視、CCDカメラから立体的に取り入れた前走車の車間距離や相対速度、歩行者、自転車等の情報を3D画像処理エンジン/画像認識ソフトウェアが瞬時に認識、 ブレーキが必要なのか?シフトチェンジは必要か?等の判断を車両制御ソフトウェアが行い、状況に応じてブレーキ、アクセル、トランスミッション、VDC等を制御します。

 つまり、アイサイトは人間と同じように目で見て認識し、判断して、クルマの各部を制御します。

アイサイトに備わる機能は大きく分けて4つあります。


プリクラッシュブレーキ制御

いわゆるぶつからない機能で、アイサイトのカメラが前方を監視し、クルマや障害物などを認識、衝突の恐れがあると判断したら、ディスプレイと警報、警報ブレーキでドライバーに警告。
ドライバーが回避操作をしなかった場合、VDCとブレーキを制御し、緊急ブレーキを作動させる事により、衝突の被害を回避、もしくは減速させる事で被害を軽減させます。

警告にドライバーが気付いてブレーキングをした場合、プリクラッシュブレーキアシストを作動させ、ブレーキングをアシストします。

感覚的には危険を感じたらドライバーに声をかけ、衝突の恐れがあれば補助ブレーキを踏む教習所の教官を助手席に乗せているような機能です。

 

AT誤発進抑制制御

 アイサイトはエンジン始動後カメラにより常に前方を監視していますが、最近多発しているシフトの入れ間違えによる事故を避ける為に、前方に障害物がある状態でアクセルを強く踏み込むとディスプレイと警報でドライバーに警告、さらにスロットルを制御する事で、アクセルペダルを踏み込んでも出力を抑え、発進を緩やかにする機能です。

簡単に言えば、前方に障害物がある状態で発進しようとしたら、障害物の存在とギアの入れ間違いを教えてくれた上、無視してアクセルを踏み込んだ場合、クルマを暴走させないように押さえつける怪力のレスラーが同乗してると言った感じでしょうか?(笑) 

 

警報&お知らせ機能

ふらつき警報
アイサイトは前方の障害物や、クルマ、バイク、歩行者等だけでなく、路面に書いてある車線も認識します。
白線内を蛇行すると、警報とディスプレイでドライバーに注意を喚起。
市街地や低速走行時の警報の煩わしさを回避する為、時速50キロ以上で作動します。 

車線逸脱警報
車線も認識するアイサイトはふらつきだけでなく、車線をはみ出しそうになった場合にも警報とディスプレイの表示でドライバーに注意を喚起、ふらつき警報が作動した後の場合は、居眠り運転の可能性もある為、より早いタイミングで警報が作動します。
こちらも市街地での駐車車両回避等の際の煩わしさを回避する為に時速40キロ以上で作動します。

先行車発進お知らせ機能
信号待ちや渋滞で停止状態が長く続くと、止まっている安心感からか前方から目をそらし、ナビを確認したりする方を良く見かけますが、このような時にありがちなのが先行車の発進に気が付かないケース。 
このような時に役に立つのが先行車発進お知らせ機能。
先行車が発進して約3m離れても自車が発信しない場合、警報とディスプレイでお知らせしてくれます。

これらの機能は助手席で常に前方から目を離さ ず、普段と違う運転をしたら声をかけてくれる優秀なナビゲーターを乗せているような機能です。

 

 

全車速追従機能付クルーズコントロール

アイサイトは時速0キロ~100キロまでの間で、設定した車間距離を保ちつつ前走車に追従する機能を備えたクルーズコントロールを装備しています。
これまでも追従機能付のクルーズコントロールは存在しましたが、ステレオカメラを用いた物はアイサイトが世界初となります。
ステレオカメラを用いる事で、レーダー式では判別しにくかった2輪車やカーブでの同一車線内のクルマ等も識別します。 

こちらの機能はアイサイトがドライバーに代わりアクセルとブレーキ、トランスミッションを制御。
レガシィに至ってはパーキングブレーキも制御する事からも、ステアリング操作以外の運転操作をしてくれる機能です。
但し、ブレーキ操作を初めアクセルやトランスミッションの操作等、ドライバーの操作が優先される為、これまでの機能とは逆に、アイサイトの運転操作をドライバーが監視し、必要に応じてドライバーが手伝うと言った機能です。 

アイサイトの仕組みはとても人間的である事からも、優秀な教官や気が利くナビゲーター、ステアリング以外の操作を手伝ってくれるドライバーと3役をこなしてくれる頼もしいシステムですが、全ての動作はドライバーがフットブレーキを操作したり、スイッチを切る事でそちらが優先されます。

 アイサイトに備わる機能の数々は、あくまで運転支援システムであり、自動運転とは違います。
全ての動作はドライバーの操作が優先であり、運転操作の負担軽減や、ヒューマンエラーを回避してくれるものと言った認識が必要です。
アイサイトにもカメラでの認識や制御に限界がありますので、感覚的には人間の判断に頼らざるを得ない状況もあります。
アイサイトが制御しきれない部分等、機械が苦手とする部分を含めドライバーがしっかり判断しなくてはいけません。

ドライバーが主役の運転支援システム、アイサイトはステレオカメラと言う2つの目を持つ優秀な助手と言えそうです。 

(井元 貴幸)