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■燃料電池車「ミライ」の2台分の燃料電池システムを搭載したFCバス
2019(平成31)年2月25日 、京浜急行バスが3月から運行する燃料電池バス「SORA」を公開しました。
SORAは、地球の水の循環を表す”Sky、Ocean、River、Air”の頭文字をつなげたもの、トヨタが2018年から販売を開始した78人乗員の燃料電池(FC)バスです。
●SORAの燃料電池システムのベースとなったFCV「ミライ」
燃料電池車「ミライ(MIRAI)」は、2014年12月に世界初の量産型燃料電池車としてデビューしました。
ミライは、大気中から取り込んだ酸素と車両後方に搭載する2本の高圧水素タンク(70MPa、容量122.4L)に圧縮した水素を、最高出力114kWの固体高分子型FCスタックに送り込み、そこで酸素と水素を反応させて電気と水を発生。その電気を使って、最高出力113kW/最大トルク335Nmのモーターで走行します。
また、発生した電力の一部は回生ブレーキで回収する回生エネルギーとともにニッケル水素バッテリーに蓄えられ、急加速時にアシスト電力として使われます。
FCVは、EVよりも満充填(EVは充電)時の航続距離が長い、水素充填時間がEVの充電時間の1/10と短いというメリットがあります。しかし、まだEVと比べて価格が高く、水素ステーションの数が少ないという課題から乗用FCVの普及はまだ限定的です。
●ミライのFCシステムを2セット搭載したSORA
FCバスは、日野自動車のバス「ブルーリボンシティハイブリッド」をベースにして、ミライに搭載しているFCシステムをちょうど2セット搭載して仕立てられました。
その結果、FCバスのFCスタックは、最高出力114kW(155PS)×2で、後輪を駆動するモーターは最高出力113kW(154PS)×2、最大トルク335Nm(34.2kgm)×2と、ミライの2倍の出力を発生します。
またミライ同様、発生した電力の一部は回生ブレーキによる回生エネルギーとともにニッケル水素バッテリー(「プリウス」が搭載するバッテリーを4個搭載)に蓄えられ、急加速時にアシスト電力として使われます。
水素を充填する70MPaの高圧水素タンクは合計10本搭載してタンク容量は600L、水素満充填での航続距離は200km。航続距離は短めですが、路線バスは巡回コースで一般に1日で走行する距離は150km程度なので特に問題になりません。
また外部への電源供給能力としての最高出力は9kW、供給電力量は235kWhを備えており、災害などの停電時、避難所や家電への供給等で活躍できます。
●東京オリパラなどで活躍
SORAのベースとなったFCバスは、2017年から東京や大阪市、名古屋市、神戸市、豊田市などで実証試験走行を開始していました。そのFCバスが、2018年に「SORA」というネーミングで、燃料電池バスとして国内で初めて型式認証を取得し、車両価格は約1億円で市販化されたのです。
SORAは、2021年東京オリパラのモビリティの目玉として、バス周辺監視機能などの運転支援技術の搭載や自動格納機能付き横向きシートなどによって、より快適にそして安全な運行ができるように改良が進められました。オリパラ開催時には、東京を中心に100台以上導入されて、世界中から集まった外国のお客様や会場では選手やスタッフの移動用として活躍しました。
2023年2月時点でFCバスは124台ですが、2030年には1200台が目標とされています。さらなるコスト低減も必要ですが、一般の乗用FCV同様に今後水素ステーションが増えないと目標達成は難しいのではないでしょうか。2023年12月時点で、水素ステーションはわずか161箇所とされています。これが、大きな普及の障壁となっていると思われます。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)