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■ACボタンをつけても、つけなくても暖房温度は同じ
車のACボタンは「Air Conditioner(エアーコンディショナー)」を作動させるためのボタンです。ACボタンを押すと冷房が働き、冷たい風が出てくることは誰もが知っているでしょう。
寒い部屋で家庭用エアコンを冷房にして使う人はいませんよね。ですが車では、冬でもACボタンが使われます。特にオートエアコンの車に乗る人は、冬でもACボタンをつけっぱなしの人がほとんどでしょう。
これは暖房と冷房の同時使用で明らかなムダに思えます。冷房を働かせることによる燃費悪化も気になります。
なのに、なぜ冬でもACボタンを使うのでしょうか。その疑問の答えはカーエアコンと家庭用エアコンの構造の違いにあるようです。カーエアコンの構造と、冬場のACボタンの使い方を調べてみました。
●カーエアコンは家庭用エアコンとちょっと違う
車用のエアコンも家庭用エアコンも使い方は同じですが、暖房の構造が少し違います。
家庭用エアコンは、冷媒(エアコンガス)を圧縮した時に発せられる熱を暖房として使い、圧縮されたエアコンガスが膨張するときに温度が下がる気化潜熱という現象を使って室内を冷やします。
同じ構造で冷房と暖房の両方をこなせるのが、家庭用エアコンの大きな特徴と言えるでしょう。その代わり、エアコンガスの圧縮には強力なモーターを使用する必要があるので、家庭用エアコンは冷房も暖房も駆動には大きな電力を消費します。
それに対して車は、暖房と冷房が異なる仕組みで動作しているのが特徴です。
エンジンが搭載された車の暖房は、エンジン内を流れる冷却水の熱を利用して車内を暖めます。冷房は家庭用エアコンと同じ仕組みですが、エアコンガスを圧縮するのにエンジンの動力を用いる点に違いがあります。
つまりカーエアコンの場合、ACボタンを押して作動するのは冷房のみで、ボタンを押しても押さなくても暖房能力は変わらないのです。これがカーエアコンと家庭用エアコンのもっとも大きな違いと言えるでしょう。
●燃費が悪化する冬場のACボタンは除湿目的で使う
エンジンが備わる車の暖房は、ただ捨てられてしまうだけの排熱を利用できるので、使用にあたってデメリットはありません。
一方、ACボタンを押すと冷房装置の稼働に必要な電力消費量が増えることに加え、エンジンパワーの一部も失われてしまうので、車の加速が鈍くなり燃費も悪化します。
車内の暖かさに影響しないうえ、燃費も悪化するカーエアコンのACボタンは、冬に使うメリットがほとんどありません。
冬場にACボタンが使われるもっとも多い理由は、車内の除湿です。ACボタンをオンにすると冷房装置の働きにより車内の湿気が急速に除去されて、窓ガラスの曇りを素早く消し去ることができます。
●冬はACボタンオフが基本! ただし使った方がよい場合も
以上の理由から、冬場はACボタンをオフにしておくのが一般的なようです。だからといって、ACボタンを常時オンのままで使う理由がないわけではありません。
オートエアコンが搭載された車なら、室内温度や設定温度に応じて風量や風向きなどを自動調整してくれるので、オンのままにしておく方が便利でしょう。なかには、外気導入と内気循環を自動で切り替えてくれる車もあります。
また、冬場の使用のように設定温度が高い場合は、冷房装置の稼働率も下がるのでエンジンのパワーダウンや燃費悪化も夏場の使用に比べて小さくなります。
オートエアコン搭載車の場合は、ACボタンを常時オンにしておいてもデメリットはほとんどないようです。
その一方で、マニュアルエアコンの車やエンジンパワーに余力がない車は、わずかとはいえACボタンを使うことで起こる加速の鈍さや燃費の悪化が気になりやすいので、スイッチオフを基本として必要なときにだけ使うのがよいでしょう。
ただし冬の間にエアコンを一切使わないと、冷房装置が固着するなどのトラブルが発生しやすくなるそうなので、冬でも定期的に作動させることをおすすめします。
使用しないと必ず壊れるわけではないようですが、自動車メーカーによっては「月に2〜3回程度はACボタンを押して作動させてください」と取扱説明書に明記されている場合があります。
いざ冷房が必須になる時期に、壊れて使えなくては一大事です。冬は普段ACボタンを使わない人も、カーエアコンの故障予防として、ときどきACボタンをオンにするのがよさそうですね。