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■ステップワゴンのあちらこちらに広がる室内収容を見る
今回のリアル試乗・ステップワゴン・ユーティリティ編はストレージ編です。
特徴的なものはありませんが、現代のクルマに要求されるひととおりのものは揃っています。
●室内収容スペース
・チケットホルダー
サンバイザーは、どちらがおもて面でどちらがうら面なのか知りませんが、とにかく受け取った駐車券などをスムーズにはさめるよう、バイザーを格納した状態で使えるようになっています。
バイザーを下げて初めて使えるバニティーミラーのふたにホルダーを設置しているメーカーは見習いなさい。何でもないようでこの違いは大きいでっせ。
ホルダーはベルト状になっており、反対側から挿せるのが便利な半面、使っているうちに帯がたるんでくると窓を開けて走っているときにはさんだものがすっ飛んでしまわないかと心配になるので、心情的には袋状にしてくれたほうがいいと思いました。
それはそれとして、ベルトは区切られており、種別ではさめるようになっています。
・サングラスボックス
緊急通報スイッチの手前にはサングラスボックスがあります。
フラットなふたを押すとスッと開く・・・特に目新しい点はありません。
そういえば、以前のステップワゴンにはこの入れものを途中停止させ、ここに室内全体を眺めることのできる曲面ミラーがついていましたが、あれ、どこいった?
・助手席アッパーボックス
天井から下に目を移して、助手席エアバッグ手前は開くともの入れが現れるふたになっています。
ヴォクシーでも同じ場所に同じものがありましたが、あちらはこれがもの入れとは気づかなかったほど周辺と一体化したふただったのに対し、こちらステップワゴンはいかにも開きそうな形をしている・・・「こんなところにこんなものが!」と驚かせるならヴォクシーが上。いっぽう、ふたの造りはAIRなら布張り、スパーダ以上ならパッド仕立てになっており、造り込み感はステップワゴンのほうが上。別にもの入れのふたの造りでクルマを選ぶひとはいないと思いますが、お好きなほうをどうぞ。
・インパネトレー
助手席正面はトレイになっています。高級車にはたぶん皆無、いわゆるミニバン型や小さなエントリーモデルのような、生活感のあるクルマほど備わっているものですが、高級車にだってあってもおかしくないのに。
それはともかく、この手のトレイには、「こんなもんがこんなに?」と思うほどの値段がするすべり止めマットが販社オプションで用意されているものですが、このトレイ、ステップワゴンではのっけからすべり止めのやわらかマットトレイになっていました。
・ポップアップフック
前記トレイと空調パネルの間のわずかなエリアをも無駄にはしていない! ここにフックを用意しています。わざわざピアノブラックにした細長いパーツ下部を押すとポップアップしてフックになります。見た目も造りもがっちりしているわけではありませんが、その割に3㎏と、なかなかの耐荷重性を有しています。
・グローブボックス
グローブボックスは、蓋とボックスが一体となってユニットごと出てくるタイプ。
計器盤奥行きの割に小さく見えるのは計器盤奥行きが大きすぎるための目の錯覚。絶対容量は充分だし、造りが薄っぺらではないのも〇でした。できれば内部に照明があると親切だと思います。
・スマホトレー&センターロアポケット
計器盤センター下には2段のもの入れを用意。
上段は名のとおり、主にスマートフォンや携帯電話を置くために用意されたトレイで、その上の12VやUSB電源との併用も前提となっています。これら電子機器を充電する際は、コードをすぐ上のポートに挿せばよろしい・・・フロア付近にポッとひとつ12V電源を置くばかりで、充電中の機器をどこに置けというのか、なーんも考えていないクルマが多かったものですが、そのような無配慮のクルマもいまは少なくなりました。
その下段には大きめのもの入れがもうひとつあり、小間もの手まわり品を入れるのによし、コンパクトデジカメをしのばせるのもよし。ご自由にどうぞ。
・インパネトレー
運転席側吹出口の袂にもトレイが設けられています。ごく小さな面積ですが、あるとないとでは違いは大きい。助手席用トレイ同様、ゴムマット仕立てになっています。助手席用も同じですが、端っこにタブがあったので引っ張って外してみたらボルトの頭が顔を(というのも変ですが)出しました。インパネ固定ボルトのひとつかと。
・ドアポケット
ナビ普及で地図を入れるケースが少ないせいか、ボトル置き+言い訳ていどのサイズしかないポケットのクルマが多い中、いまどきめずらしくA4サイズのものが入れられる容量を持っています。フロントドア左右に設置。
・シートバックアッパーポケット
後席乗員がスマートホンや携帯電話を収容するためのポケット。隣に充電用USBポートがあり、収容しながら充電することもできます。
・コンビニフック付シートバックテーブル
こんなものは観光バス、新幹線、旅客機でぐらいしかお目にかからないものでしたが、ミニバン普及以降、この種のクルマの常套装備になりました。前席左右シートバックに設置。
テーブル面両脇はカップ収容可、テーブル回転軸両端はフックになっており、ごみ入れとして使う袋をひっかけることができます。このへん、他社の同類モデルと大同小異。
下から起こしたテーブルを、カチッとしたステーで支えるのではなく、フリクションで固定するだけなので、上面にそう重量のあるものは置けないし、置くこともないでしょう。耐荷重は、テーブルは2kg、フック側は1kgです。
・シートバックポケット
前述アッパーポケットもそうですが、前席のシートバック(背もたれ)のさらに背面にあるので、「シートバックポケット」ではなく、「シートバックバックポケット」というのが正しいような気がしますが、とにかくこのポケットは助手席側のみに備えられています。地図帳を入れるひとはもはや少数でしょうが、ほかに雑誌やファイル、バインダー・・・いまならタブレット端末を入れるのにも適切でしょう。
・コートフック
2列目の右側および3列め左右のアシストグリップに取り付けられています。もっともこのフックを使っているひとを見たことがありませんな。
・ドリンクホルダー
3列シート車だけに豊富に用意されています。
前席にはインパネに引き出し式が両脇とセンターに計3つ、そして左右のドアポケット前方にひとつずつ・・・前席は5つ。
2列めに移りまして、シートバックテーブル面の両脇に2つ、このテーブルが左右前席背もたれにあるのでテーブル分だけで4つ。そして左右スライドドアにひとつずつあるので、2列目の合計は6つ。
3列めは左右にふたつずつの計4つ。
いずれの席も着座人数分の倍以上の数が用意されており、ステップワゴン全体では5+6+4で、何とまあ15にも!
●トランクルーム
フル乗車時の荷室スペースは僅少。8人乗るときはひとりひとりの荷物は少なめにするかひざ上に抱えるしかない・・・3列シート車に共通する矛盾点です。
それはともかく、荷室拡大は2列め、3列めを移動させて行うわけですが、3列めだけ動かして広げるのが日常的な使い方でしょう。
・簡単・きれい・まっ平ら! 3列めシートの格納法
ノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴン・・・3台を比べると、その3列めシートの格納方法は3車3様ですが、格納の容易さだけでの結論からいうとホンダの勝ち。ノア/ヴォクシー、セレナの2車を大きく引き離してステップワゴンが圧勝です。
ノア/ヴォクシーは座面下レバーを引っ張るとフロアの足がフリーになり、ばね仕掛けで軽々サイドに起こすと同時に脚も自動で引っ込みますが、格納(といっていいものか)後はクオーターガラスをふさいでしまい、昭和時代のライトエース/タウンエースから進歩していません。
セレナも操作が簡便とはいえず、ロックを外したら脚の格納はマニュアル操作、シート本体をサイドに向けて起こした後はベルトによる固定操作が待っています。格納(といっていいものか)後のシート位置はノア/ヴォクシーより低いものの、クオーターガラス下部とのラップを免れ切れていないのと、たたんだ後の姿がノア/ヴォクシーより分厚いため、荷室幅をかなり狭めています。全体的に荷室の使用性はセレナが3車中いちばんどっちつかずで中途半端。
ステップワゴンはまったく別で、4代めから始めた床下収納の道を今回も選びました。3列め背もたれを倒してからは手前の深掘りフロアにずり落とすだけで格納(と確実にいえる)できるのが秀逸で、これは先代譲りの機構。4代めは同じ床下収納でも背もたれを倒した後に、シートをこちら側(開口部側)にゴロンと転がして収容する回転式でした。新型ももうちょいばね力を強くして軽くしてもよさそうですが、やろうと思えば片腕に荷物を抱えていても他方の腕1本で格納できるのは、他の2車にはない大きな優位点です。クオーターガラスをふさぐはずがないので後方視界にまったく影響なし。
この3列めシート、座れば視線は高いし、造りが貧弱なわけでもない。それでいて簡単に収容できて、フロアはまっ平らになる・・・実にうまく造ったな、よく仕上げたなというのが感想です。苦労したことでしょう。
しおりさんに実践してもらった写真を、ちょっと点数が多いですがごらんください。しおりさんは両手で操作していますが、いかに簡単にたためるか、一目瞭然でしょう。
もっとも、これだけきれいな仕上がりも荷室床下にスペアタイヤがないからできたのであり、スペアタイヤレス化を嘆いている筆者としては思うところがないではありませんが、スペアタイヤレスはノア/ヴォクシーもセレナも同じだから、ま、いいか。
・パワーテールゲート
新型ではパワー開閉式が起用されました。スパーダ以上の機種に標準となります。ただし、リヤバンパー下に足先をかざしてオープンするといったハンズフリー機能はなし。
スイッチ操作は3とおりで、スマートキーリモコンスイッチの長押し、運転席のスイッチ、バックドア本体のハンドルにて行います。
<テールゲートインナーボタン>
バックドア下端にはスイッチがあり、荷を出し入れした後のボタン押しでクローズ、電動開閉中に押すと一旦停止し、再度押しで反対側に動きます。
また、このボタンは電動オープンの開度を自在にセットするためのスイッチも兼ねています。
1.任意の位置にまでゲートを開ける。
2.テールゲートインナーボタンを長押しする。
「ピー」の後に「ピピッ」のブザー音が鳴るとセッティング完了。
ところで旧型ステップワゴンのバックドアは、最廉価機種を除き「わくわくゲート」と称するドアを持っていました。上にはね上げられるほかに、左右をタテ不等分割したうちの左側(サブドア)が、荷室内外からスイングオープンできるようにもしたドアで、その良さを知ったひとはたぶん5代めを手放せないだろうし、筆者もおもしろいと思っていたのですが、全体的には市民権を得られなかった(であろう)のと、察するにバックドア単体は通常のものより格段に重かったはずで、当然コスト面でも不利だったのでしょう、今回はオーソドックスなはね上げ式に戻されました。
わくわくゲートは後ろにスペースがなくてもわずかにスイングさせれば荷の出し入れ、3列めへの乗り降りが直接できるのが他車にないメリットでしたが、それができなくなったわけ。
新型セレナは、先代に続いてバックドアの上半分が開くようになっており、荷室空間の有効性は3車中いちばん中途半端なのに、バックドアの使用性は3車中ピカイチ。狭い場所でも後ろのクルマを気にすることなく荷の出し入れが行えます。
結局は重量増になるでしょうが、ステップワゴンもわくわくゲート廃止の代わり、セレナのような工夫を与えてもよかったのではと思います。
・カーゴサイドボックス
最後は荷室左サイドにあるボックスを。
きれいに面一にはめられたふたを外すとちょいとした収容スペースが現れます。
それほど大きなサイズではありませんが使用性はよさそうで、ガススプレーではない小容量のケミカル材や布切れ、軍手を入れておくのにふさわしいでしょう。
ストレージ編はこれでおしまい。
次回、「整備性編」でまた。
(文:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm) 写真:山口尚志/本田技研工業)
【試乗車主要諸元】
■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕
●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)