■木質資源を活用したCNF強化樹脂とは?
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、植物由来の次世代素材「セルロースナノファイバー(以下、CNF)強化樹脂」を、北米向け水上オートバイ「ウェーブランナー」などに採用したことを発表しました。
ヤマハが、CO2削減や環境負荷低減に対する取り組みの一環として、日本製紙との協業により開発したのがCNF強化樹脂です。輸送機器部品でこの素材を使った量産部品は世界初。
しかも、今後は、バイクなどを含めたヤマハ製品に幅広く採用していくことも検討しているといいます。
植物由来の樹脂といえば、なんとなくエコなことは分かりますが、ヤマハによれば、水上オートバイやバイクなどに使っても問題ないだけでなく、軽量化などにも貢献するなど、メリットも多いといいます。
では、実際に、この新素材は一体どんなものなのでしょうか?
●リサイクルもしやすいバイオマス素材
ヤマハが今回発表したCNF強化樹脂は、木質資源を活用したバイオマス素材であるCNFを活用したもの。それを、ポリプロピレンなどの樹脂へ混練・分散することにより製造が可能で、エコなだけでなく、部品に使えるほどの高強度も両立した新素材なのだそうです。
メリットは、まず、既存の樹脂材料と比較して25%以上の軽量化が図れること。また、マテリアルリサイクル性に優れるため、プラスチック使用量の削減とCO2を主とした温暖化ガス排出削減につながるといいます。
ちなみに、マテリアルリサイクルとは、廃棄された部品などを新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法のこと。つまり、CNF強化樹脂は、植物由来の素材を使ったエコな樹脂というだけでなく、一度製品化したものを再び別の製品に転用しやすいことで、二重に「環境へ優しい素材」だということですね。
今回、ヤマハでは、CNF強化樹脂を水上オートバイ「ウェーブランナー」と、ウォータージェット推進機を搭載する「スポーツボート」の2024年モデルに採用。いずれも、エンジン部品の一部である「エンジンカバー」に採用した新型モデルを、北米で販売開始したといいます。
なお、このCNF強化樹脂は、前述の通り、将来的にはマリン製品だけでなく、バイクなど、さまざまなヤマハ製品への採用を検討しているのだとか。
ちなみに、ヤマハは、すでに「環境対応型リサイクルPP材」というエコ素材を、アセアン市場など海外向けスクーターなどの2023年型に採用しています。
これは、石油化学メーカーや成形メーカーの工程内で発生するパージ材(樹脂合成切替時に発生する中間材)や端材などを使ったリサイクルPP材のこと。スクーターの場合は、インナーフェンダーやアンダーカバー、サイドカバーなどに使われているようです。
また、2024年に発売する大型バイクなどには、CO2の排出量が少ない再生可能エネルギーを用いて製錬された「グリーンアルミ材」を採用した部品も投入することも発表しています。
これは、水力発電や風力発電など、クリーンな発電方法で作られたアルミのことで、火力発電で精錬する従来のアルミよりも、製造段階でのCO2排出量を少なくすることが可能。
ヤマハでは、フレームやホイール、アンダーブラケットなどに使う部品に採用するといいます。
このように、すでに、バイクに関しても、さまざまなエコ素材の採用を行っているヤマハですが、今回のCNF強化樹脂が、これからどんなバイクのどんな部品に投入されるのかも気になるところです。
(文:平塚 直樹)