■最後の最後まで死闘を繰り広げた末の優勝!
2023年5月4日(木祝)に決勝レースが行われた、2023 AUTOBACS SUPER GT Round2 FUJIMAKI GROUP FUJI GT 450km RACE。予選日含めた延べ8万200人、決勝日だけでも4万8600人という大観衆の前で見事にGT300のポール to ウィンを決めた56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R。
ピットタイミングと作戦の違いから、一度はトップを2号車 muta Racing GR86 GTに明け渡してしまったリアライズ日産メカニックチャレンジGT-R。
しかし最終スティントで名取鉄平選手が素晴らしい追い上げを見せ、70周目にmuta Racing GR86 GTの背後、2秒ほどの位置まで追い上げての2位のポジションまで迫ってきます。
そこからmuta Racing GR86 GTとリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの1秒前後の攻防が繰り返されていったのです。
そして、80周目にGT500マシンが追い抜きにかかろうというタイミングに引っかかってしまったmuta Racing GR86 GTは、若干ペースが落ちてしまいますが、そこからすかさず並んでいこうとしたのが、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rの名取選手。ダンロップコーナーでも果敢に追い抜いていこうとする様子を筆者のカメラは捉えます。
その後、81周目のTGRコーナーで、muta Racing GR86 GTを抜いてトップに立ったリアライズ日産メカニックチャレンジGT-R。
しかし、そこから独走態勢というわけにはいかず、muta Racing GR86 GTは1秒未満の場所でリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rを追い立てていきます。
そんな激闘もあと数周というタイミングのピットガレージ内では、名取選手にステアリングをつないだJ.P・デ・オリベイラ選手が、タイミングモニターと中継映像が映し出されるモニターを注視しています。
そのオリベイラ選手を囲むように、KONDO Racing Teamのメカニックやスタッフ、メカニックチャレンジに参加するディーラーメカニックや日産自動車大学校の学生メカニック、広報役の学生、マネージメントサービスなどの学生たちが固唾をのんでモニターを注視しています。
トップを譲ったとはいえ執拗に食らいつく2番手。それを見事に抑え込んでいく名取選手。その様子にピットガレージの中は一喜一憂していきます。
そして、ファイナルラップで最終パナソニックコーナーを立ち上がってくるリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rの姿を見たJ.P・デ・オリベイラ選手はゆっくりと立ち上がり、チェッカーの様子を確認すると両手を広げて優勝を喜びます。
ピットロードでは、優勝を見届けた近藤真彦監督がJ.P・デ・オリベイラ選手と優勝を喜び合います。
2022年のGT300チャンピオンだったリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rと言えども、今期が楽に戦えるわけではありません。そして、監督やドライバーだけで勝ちが狙えるというものでもありません。
この近藤真彦監督とJ.P・デ・オリベイラ選手が優勝を喜び合う姿は、そんな当たり前だけど忘れがちな大事なことを思い出させてくれます。
●自分が関わったマシンが優勝するという気持ちを味わった日産自動車大学校の学生たち
今回の第2戦富士は450km、100周というフォーマットで戦われます。開幕戦の岡山でのレース距離は300kmでしたので、1.5倍の距離を走ることになります。
ドライバーもメカニックもスタッフも、300kmレースも450kmレースも正確さという面では変わりないかもしれませんが、気持ちの上ではプレッシャーが多くかかるかもしれません。
そんなプレッシャーを押しのけてもぎ取った優勝は、スタッフみんなで掴んだものであると、近藤真彦監督は語ります。その中には当然、日産自動車大学校の学生も含まれます。そして、その優勝を掴うために奔走した学生はメカニック体験をした学生だけではありません。
450kmというレース距離は、スタートからフィニッシュまで約3時間という長丁場です。一つのチームに関わるメンバーの中には、チームスタッフだけではなく、スポンサーやゲストの方々もいるわけで、そういった方々がレースを快適に観戦できるようにするのもチームの役割の一つと言えます。
ピットビルの屋上には、そんなゲストの方々を迎えるホスピタリティエリアが設置されました。そのホスピタリティエリアでゲストの方々をおもてなしするのも、日産自動車大学校の学生たちでした。
こういったホスピタリティの充実もまた、チームがレースに集中していくうえで非常に重要になってきます。
また、ピットウォークでの配布物や、スターティンググリッドでの旗持ちなどでも学生たちは活躍します。
そんな学生たちの姿を動画や写真で撮影し、学内や外部に向けて発信し、広報するのも学生たち。
そんな彼ら全員が活躍したことも、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが優勝したこととは切っても切り離せません。
彼ら学生とメカニックチャレンジのディーラーメカニック、チームスタッフ、レースクイーン、名取選手、オリベイラ選手、近藤監督がベストを尽くし、それが完全に一体でかみ合ったときにも優勝できるかどうかはわかりません。
しかし、今回はその先の優勝を手に入れました。
優勝をチームの一員として経験できることは、決して多くはありません。その少ない機会にこの場にいることができるのは幸せです。しかしそれは、常にレースの現場での体験を大切にしている日産自動車大学校が毎戦、スーパーGTやスーパー耐久の現場で、メカニックだけではない様々な役割を実習としているからこそ、優勝という体験ができるのです。
スーパーGTの次戦は6月3日(土)、4日(日)に鈴鹿サーキットで開催される2023 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 450km RACE。
リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rと学生たちのチャレンジは、まだまだ続きます。
(写真・文:松永 和浩)