「トヨタ2000GT」が238万円でデビュー。大卒初任給2.5万円時代、現代なら2000万円相当の国産スーパーカー【今日は何の日?5月16日】

■日本を代表する高性能スポーツの名車中の名車トヨタ2000GT

1967年にデビューした名車中の名車トヨタ2000GT
1967年にデビューした名車中の名車トヨタ2000GT

1967年(昭和42年)5月16日、トヨタから伝説のスポーツカー「トヨタ2000GT」がデビューしました。

ヤマハ発動機と共同で開発されたトヨタ2000GTは、発売前にプロトモデルによる鈴鹿1,000kmレースでの優勝や高速耐久トライアルでの世界記録樹立などで、その実力を実証済みでした。


●1965年東京モーターショーで衝撃のデビュー

トヨタは「トヨペットクラウン」の発売から10年後の1965年、第12回東京モーターショーにヤマハと共同開発したトヨタ2000GTのプロトタイプを出品。この時、2000GTに関する詳細なメカニズムは公表されませんでしたが、純白のバランスの取れた流線形のスタイリングと豪華なインテリアは、見るものを魅了しました。

1966年にスピードトライアルで世界記録を樹立、1967年富士24時間レースで優勝したトヨタ2000GT
1966年にスピードトライアルで世界記録を樹立、1967年富士24時間レースで優勝したトヨタ2000GT

当時は、1963年に始まった日本GPを頂点にモータースポーツが盛り上がりを見せ、レースに勝つことが販売促進に直接つながるため、各メーカーにとっては高性能スポーツを開発し、レースで勝つことが至上命題だったのです。

展示されたのは、プロトタイプ第1型の6台のうちの1台で、その中には後にスピードトライアルに挑戦した1台も含まれていました。

●スピードトライアルや富士24時間レースで卓越した性能を実証

東京モーターショーの翌年、また発売の前年となる1966年10月1日~4日、トヨタは2000GTの性能の高さを実証するため、谷田部の日本自動車研究所高速試験場で、日本初のスピードトライアルに挑戦。スピードトライアルとは、FIA(世界自動車連盟)の公認のもとで、文字通りスピードを競うチャレンジです。

ポップアップ式ヘッドライトを装備したトヨタ2000GT
ポップアップ式ヘッドライトを装備したトヨタ2000GT

10月1日、2000GTは3日後のゴールを目指してスタートし、最終的に48時間/72時間/1万5000kmの世界記録と、13のEクラス国際記録を樹立しました。

さらに、翌年の発売1ヶ月前の1967年4月7日~8日には、ル・マン24時間レースを日本で再現させた富士24時間レースに参戦。このレースでも、トヨタ2000GTは、余裕の1-2フィニッシュを飾り、発売前に2000GTの性能が世界トップであることを実証したのです。

●数々の実績を上げてトヨタ2000GTがついに市販化

2000GTは、そのスポーティかつ高級な佇まいで多くの人の目を引きました。ロングノーズにリトラクタブルライトを組み込んだ流線型ボディに、インテリアはローズウッド材のインパネやレザーのバケットシートなどを装備して、圧倒的な存在感を放ったのです。

ショートデッキスタイルに実用的なファストバックに上開きのテールゲートを持つ2000GT
ショートデッキスタイルに実用的なファストバックに上開きのテールゲートを持つ2000GT

ヤマハ主導で開発したエンジンは、2.0L直6 DOHCにソレックス・キャブ3連装の組み合わせたM型エンジンで、最高出力は150PSを誇りました。トランスミッションは5速MT、ステアリングはラック&ピニオン、サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン、ブレーキは4輪サーボ付きディスクと、当時の先進技術を投入。最高速度220km/h、0→400mは15.9秒、0→100km/hは8.6秒と、数々のレースでも実証された卓越した動力性能は、世界トップクラスでした。

車両価格も破格で当時のクラウンの約2倍の238万円、大卒初任給が2万5000円の時代だったので、今なら2000万円程度でしょうか。3年間の販売台数は337台、まさしく庶民には手の届かないスーパーカーだったのです。


当時の先進技術の粋を集結したトヨタ2000GTは、50年以上経った今でも多くの伝説が語り継がれる、日本の名車中の名車として位置づけられています。国産車の技術レベルが世界レベルに到達したことを実証した歴史的なクルマだったのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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