オールシーズンタイヤを2シーズン使ってわかった課題・デメリット「意外にコストは高い」【週刊クルマのミライ】

■2022年1月から2023年5月までオールシーズンタイヤを使ってみて

自動車コラムニストの経験となるべく愛車にオールシーズンタイヤを履かせて一年半でわかったこととは?
自動車コラムニストの経験となるべく愛車にオールシーズンタイヤを履かせて一年半でわかったこととは?

2020年代のカーライフにおいて、ひそかにブームとなっているのが「オールシーズンタイヤ」ではないでしょうか。

降雪地域であれば冬季を迎えるときにスタッドレスタイヤへ履き替えることは常識といえますが、さほど雪の降らないエリアに住んでいて、とくにウインタースポーツを楽しむわけではないという方にとってはスタッドレスタイヤは宝の持ち腐れとなってしまうことも珍しくありません。

そうした「1シーズンで数回だけある雪の日の安心」をカバーしてくれるタイヤとして注目されているのがオールシーズンタイヤといえます。簡単にいえば、舗装路での走りを十分に考慮した上で、雪道(凍結路を除く)での走行性能も確保したタイヤといえます。

名前の通り、オールシーズン(一年を通じて)履いておくこができるということで、季節ごとのタイヤ交換が不要となるのがメリット。そのため、タイヤが減ってきたときに次のタイヤとしてオールシーズンタイヤを選ぶユーザーも増えているといいます。

筆者は「自動車コラムニスト」という肩書でメディアに寄稿していますから、職業柄オールシーズンタイヤを経験しておくべきと思いました。そこで、2022年1月に愛車へオールシーズンタイヤを履かせてみたのです。

それから1年半弱が経って、どんな経験をすることができたのか報告したいと思います。

●自分の経験としては2年弱で寿命になってしまう

夏用タイヤとしての限界を示すスリップサインはまだまだ余裕がある
夏用タイヤとしての限界を示すスリップサインはまだまだ余裕がある

筆者の愛車はスズキの軽バン「エブリイ」です。駆動方式はFR、タイヤサイズは145/80R12、純正ではバン用エコタイヤが装着されています。

タイヤ交換時にインチアップすることも考えましたが、純正タイヤとオールシーズンタイヤの違いを知るために同じサイズとしてみました。選んだのはダンロップの商用車用オールシーズンタイヤ『ALL SEASON MAXX VA1』です。

案件と邪推されるかもしれませんが、自動車コラムニスト風情がタイヤメーカーから提供を受けるなんてことはできません。当然ながら自腹で購入したタイヤです。忖度する必要はありませんので、正直な感想&印象をお伝えします。

タイヤを履き替えたのは2022年1月。多くの方がスタッドレスタイヤに交換するタイミングでオールシーズンタイヤを選んだといった感じでしょうか。それから2023年5月まで、オドメーターは1.5万km以上増えましたが、その間ずっと同じタイヤを履き続けてきました。

季節でいうと「冬・春・夏・秋・冬・春」を経過しています。

スタッドレス寄りのタイヤパターンだが舗装路で頼りなく感じることはなかった
スタッドレス寄りのタイヤパターンだが舗装路で頼りなく感じることはなかった

こうして使ってみてわかったのは、「オールシーズンタイヤは意外に高くつくかもしれない」ということです。

言うまでもありませんが、タイヤの寿命というのは経年劣化によってゴムが傷んだとき、もしくはタイヤが摩耗して溝が浅くなってしまったときです。

一年半ほど使ってみた状態で、溝の残り具合をチェックしてみたところ、サマータイヤとしての限界を示すスリップサイン(溝のところどころにある少し盛り上がっている部分)はまだまだ余裕がありましたが、スノータイヤとしての限界を示すプラットフォーム(同じく溝の数か所に置かれた3本筋の目安となる部分)は、かなりギリギリといった状態でした。

駆動輪であるリヤに使っていたタイヤはプラットフォームからの残りが1mmくらい、フロントに使っていたタイヤは2~3mm程度が残っているといった具合です。

この感じでいうと、次の冬を迎える前にはスノータイヤとしての寿命を迎えていることは確実です。季節でいえば「冬・春・夏・秋・冬・春・夏・秋」でオールシーズンタイヤとしての寿命は終わってしまうといえそうです。

●一年を通して使えるタイヤとしての性能には大満足

後輪駆動の軽バンで使っていたこともあり、フロントタイヤの摩耗には余裕がある
後輪駆動の軽バンで使っていたこともあり、フロントタイヤの摩耗には余裕がある

まとめると、オールシーズンタイヤは冬から履き始めたとしても2年ごとに履き替える必要があるといえます。

あくまでバン用オールシーズンタイヤを使った自分の経験だけの話ですから乗用車用オールシーズンタイヤでは異なる結果になるかもしれませんが、サマータイヤとしての機能は維持していてもスノータイヤとしての機能が先にデッドラインを超えてしまうのは変わらないでしょう。

つまり舗装用タイヤとしてのライフと、本当の意味でのオールシーズンタイヤとしての寿命が異なるというわけです。

オールシーズンタイヤは通常のサマータイヤよりちょっと高価だけれど、冬場にスタッドレスタイヤを買うことを考えたら割安…と思っていましたが、2年ごとにタイヤを買い替えることになるのであれば、サマータイヤとスタッドレスタイヤを履き替えつつ、それぞれ4~5年を使うほうがコスパはいいといえるかもしれません。

タイヤの溝はまだまだ残っていても冬用タイヤとしての性能は先に限界に近づいてしまう
タイヤの溝はまだまだ残っていても冬用タイヤとしての性能は先に限界に近づいてしまう

オールシーズンタイヤとして雪道機能が先に寿命を迎えるというのは、ランニングコストを計算する上では覚えておく必要があるといえそうです。

ところで、ダンロップ『ALL SEASON MAXX VA1』を使ってみての感想ですが、想像以上にサマータイヤとしての機能が高かったことが印象に残ります。具体的なシチュエーションでいえば、高速巡行では純正のバン用エコタイヤより安心感がありました。

スタッドレスタイヤ寄りのパターンから想像するよりも舗装路での走りはしっかりしているものでした。パターンノイズもほとんど気にならないレベルで、サマータイヤとしてみたときも非常に高いレベルにあると感じます。燃費についても純正タイヤよりもよくなったくらいの印象ですから、自分のタイヤ選びとしてはコストに対する満足度は十分に高いというのが結論です。

なお、タイヤの寿命を延ばすには前後のタイヤを入れ替えるローテーションという手段があります。今回は、あえて摩耗具合を見たかったのでローテーションをせずに使ってみての結果です。その点はご了承いただければ幸いです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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