萩原 文博 
■最高出力320psを発生する2Lターボエンジンを搭載したゴルフ8最強モデル
2021年6月に第8世代となる現行型ゴルフが日本市場に導入されました。
現行型ゴルフは、プラットフォームをはじめ全てを一新。新しいデザインを纏い、コンパクトカーカテゴリーに革命をもたらしています。
今回、その現行型ゴルフに追加された最強モデル“ゴルフR”に試乗することができましたので、インプレッションを紹介します。
ゴルフ史上最もパワフルなハイパフォーマンスモデルとして、現行型ゴルフR／ゴルフRヴァリアントは2022年10月に導入されました。
ゴルフR／ゴルフRヴァリントの注目ポイントは3点。まずは数多くの専用パーツを採用したスポーティな内外装。2点目は最高出力320ps、最大トルク420Nmを発生するゴルフ史上最もパワフルなエンジン。そして、ビークルダイナミクスマネージャーやパフォーマンストルクベクタリングの採用による走行性能の向上です。
まずは、スポーティな内外装からです。
外観はR専用デザインの前後バンパーの採用をはじめ、ボディカラー同色の専用サイドシル。そして、グロスブラックのリアディフューザーと、4本出しのマフラーによってスポーティな雰囲気を演出しています。
インテリアは、カーボン調のデコラティブパネルの他、鮮やかなブルーの“R”ロゴをあしらったR専用のヘッドレスト一体型トップスポーツシートを採用しています。
メーターパネルのデジタルメータークラスター“Digital Cockpit Pro”には、ドライビングプロファイルでスポーツもしくはレースモード（R専用）を選択すると、デジタルメータークラスターにR専用の表示が可能です。
ゴルフR／ゴルフRヴァリアントに搭載されている2L直列4気筒直噴ターボエンジンは、最高出力320ps・最大トルク420Nmを発生。先代モデルより最高出力は10ps、最大トルクは20Nmアップしています。
また、420Nmという最大トルクを2,100回転から5,350回転というワイドバンドで発生。0-100km/h加速はわずか4.7秒というハイパフォーマンスを発揮します。
ハイパワーなエンジンに組み合わされるトランスミッションは、瞬時の変速で切れ目のない滑らかな加速を生み出す7速DSG。レーシングドライバー並の0.03〜0.04秒という素早い変速を可能としました。
またハンドルから手を離すことなく、指先だけの操作でシフトチェンジが行えるパドルシフトも採用しており、ハンドル操作とシフトアップを同時に行うワインディングやサーキット走行で威力を発揮します。
最後は高い走行性能に寄与する最新の電子デバイスです。現行型ゴルフRに搭載されているビークルダイナミックマネージャーは、単に電子制御式ディファレンシャルロック“XDS”とアダプティブシャシーコントロール“DCC”（オプション）を統合制御するのみではなく、Rパフォーマンストルクベクタリングを採用した4MOTION と高度に連携することにより、ドライビングダイナミクスの最大化と快適性の向上を高次元で両立させているのが特徴です。
運転操作が行われている間は、絶えずこのビークルダイナミックマネージャーが4MOTION（R パフォーマンストルクベクタリングシステム）、XDS、DCCをコントロールするとともに、各ホイールへの最適なトルク配分を実行するための完璧なクラッチコントロールを実現し、機敏で正確なハンドリングを実現します。
また、クルマのロールを抑え、わずかなステアリング操作に対してもより速く反応し、高速度域でのヨーおよび荷重変化の減衰を最適化することで、ドライビングダイナミクスと快適性を向上させています。
そして、Rパフォーマンストルクベクタリングは、リアアクスルに配置された2つの多板クラッチが左右後輪のトルク配分を適切にコントロールすることで、リヤの外輪により多くのトルクを配分し、コーナリング性能を高めるシステムです。
トルク配分はステアリングの角度、アクセルペダルの踏み込み具合など、様々な要素を元に瞬時に算出。右カーブの時は左側後輪に、左カーブの時は右側後輪に多くのトルク配分を行い、思い通りのコーナリングを実現します。
今回試乗したのは5ドアハッチバックのゴルフRで、車両本体価格は639万8000円。オプションとして22万円のDCCパッケージ、3万3000円のラピスブルーのボディカラー。そして3万6300円のフロアマットを装着し、合計668万7300円という仕様です。
●安定感抜群の走行性能はゴルフを超えたパフォーマンス
現行型のゴルフでは1Lエンジン＋マイルドハイブリッドを皮切りに、1.5Lエンジン＋マイルドハイブリッド、2Lディーゼルターボエンジンを搭載したTDI、そして最高出力245psを発生する2Lガソリンターボエンジンを搭載したGTIと、4種類のパワートレインを試乗する機会を得ました。これまで試乗した4つのパワートレインでは、2Lディーゼルターボ＋7速DSGが最もバランスが良いと思っていました。
そして、現行型ゴルフ最強のゴルフRに試乗することができましたが、結論を先に言ってしまうと、これまでのゴルフとは一線を画すパフォーマンスを体感することができました。
試乗は箱根で行いましたが、最高出力320ps・最大トルク420Nmを発生する2Lターボエンジンは、勾配のキツイ登り坂でもまるでフラットな路面のように駆け上がっていきます。
235/35R19という偏平タイヤが、高出力エンジンのパワーを路面に余すことなく伝え、路面をガッチリと捉えてくれます。2WDのGTIが路面を滑るように走るのに対して、4WDのゴルフRはタイヤで路面を削るのではないか!?と思うほど、路面を捉えたパワフルな走りが特徴です。
特に圧巻なのは、ゴルフRに搭載されているRパフォーマンストルクベクタリングの効果が絶大なこと。前後輪のトルク配分だけでなく、後輪は左右のトルク配分も最適化してくれるので、タイトなカーブが続く箱根ではその威力は抜群です。
特にダウンヒルでは、ドライバーのハンドル操作とアクセルペダル操作に合わせて、思いどおりのラインをトレースしてくれるので、気持ち良く走ることができます。
その曲がり方は、電子デバイスが積極的に行ってくれているのが分からないほど自然な動きで、圧倒的に速く走ることができるのが魅力です。
GTIとの価格差は約150万円あるゴルフRですが、その走行性能の高さや装着されている装備などを考えると、決して高くはないと言えるでしょう。
（文・写真：萩原 文博）
