国沢光宏がルノー・ルーテシアを選んだわけとは?走りが楽しい!パーツも安心!ラリー勝利のポテンシャルがあった

■国沢光宏がルノー・クリオ ラリー5マシンでラリージャパンを走った!

●FIA WRC世界ラリー選手権 第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」は2022年11月10日(木)~13日(日)愛知・岐阜にて開催!

ヨーロッパでは、ラリーは人気のあるスポーツで競技人口も多いもの。ルノーはF1だけでなく、幅広いモータースポーツ活動をしていて、市販車をベースとするのが基本のラリー用の競技車両を供給しています。

国沢光宏×ルノー クリオRally5
念願の「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」が開催! 国沢さんもルノー・クリオRally5でエントリー/Photo:高橋学

そのラリーの最高峰である世界ラリー選手権FIA WRC「ラリージャパン」が12年ぶりに日本で開催されました。

ラリーが好きで、WRCをもっと日本で広めたいと思っている自動車評論家の国沢光宏さんは、そのラリージャパンにぜひともチャレンジしたいと考えました。そのために選んだのが、ルノー・クリオ(日本名はルーテシア)をベースに開発され、非常にポテンシャルが高い競技専用車両、クリオ・ラリー5。その車両でラリージャパンに参戦することを決めました。

なぜ、ルーテシアを選んだのかお聞きすると、

国沢光宏×ルノー クリオRally5
さぁ、いよいよラリージャパンで走りますよ!/Photo:青山義明

「まず、このクラスのベースとなる車両で“売っているクルマ”でいうと、ルノーかフォードくらいなんだけど、競技に出場するからには勝てる可能性のある車両、つまりポテンシャルがあるものを選ぶと、ルノーのほうが圧倒的に速いんです。もうひとつ上のラリー4(※ラリー5よりひとつ上のカテゴリー)でもルノーとプジョーとフォードがあるんですけど、やっぱりルノーが速いんです。自分でお金出して買って出場するんだから、そりゃポテンシャルが高いのを選びたい。

国沢光宏×ルノー クリオRally5
リエゾン(移動区間)では観客の皆さんに手を振る。これもラリーの楽しみのひとつ/Photo:高橋学

それに、ルノーは日産と関係あるので日本に関係が近い。せっかく日本でやる競技だから、少しでも日本に関係のある車両で出たいですよね。まだまだわかってないですが、きっと日産の車両との共通部品もあるはずなので、様々な部品が手に入りやすいと思ったんです。多分、オイルフィルターなどは共通じゃないかな〜」(国沢)

そういう理由があったんですね。けれど、それでいきなりヨーロッパで買ってきたんでしょうか?

国沢光宏×ルノー クリオRally5
フォーラムエイト・ラリージャパン2022は、綺麗な紅葉の中で開催された/Photo:高橋学

「このクルマが出たのが2020年、ラリージャパンが開催されるはずだった2020年を目指して、Rカテゴリーの車両を買おうと思ったんです。ご存知の通り、ラリージャパンはコロナの影響で2020年、2021年と、2年間行われませんでした。ヨーロッパに見に行くこともできず、先に注文しちゃいましたよ。

初めて同じクリオ(ルーテシア)ラリー5を見たのはオーダーした後、ポルトガルラリーに行ったときです。乗ったのは日本に来てから。ラリージャパンの直前、ハイランドマスターズに出たときでした」(国沢)

コロナ禍で世界中の物流が非常に困難となり、クリオ・ラリー5を新車で購入したものの、到着は遅れに遅れたそう。なんとか走れるような状態になったのが、WRC直前。2022年10月の「第49回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ 2022」でした。

初めてハイランドマスターズで運転してみて、どうでしたか?

国沢光宏×ルノー クリオRally5
セレモニアルスタートでは、安全祈願の大太鼓を叩いていざ、出陣!/Photo:高橋学

「全日本ラリーでR車両(ラリー5)を使う場合、性能の低いFIAタイヤを履かなければならないというレギュレーションです。国内のラリー車はハイグリップタイヤを履けます。なので、正直言って、ハイランドマスターズでは、どれくらい速いのか、ポテンシャルがどれほどなのか、その時点では未知数でした」(国沢)

国沢光宏×ルノー クリオRally5
スタート直前インタビュー。「私が最年長ドライバーだって!」/Photo:高橋学

初めてステアリングを握ったハイランドマスターズでのクリオ・ラリー5。その高いポテンシャルの開花は、ラリージャパン当日へお預けとなりました。

●準備万端!…ではなく、ほぼぶっつけ本番状態

いよいよWRCの日本ラウンド、ラリージャパンが開催となりました。愛知県名古屋のルノー販売店からもメカニックが応援で参加することに。レッキやシェイクダウンを終わらせ、期待は膨らみます。

国沢光宏×ルノー クリオRally5
初日SS、行ってらっしゃ~い!/Photo:青山義明

豊田スタジアムでのセレモニアルスタート後に、ラリージャパン初のSS(スペシャルステージ)が始まります。しかし、競技はアクシデントで中断となり、後半スタート予定だった国沢さんのクリオ・ラリー5のWRCラリージャパン初SSは、2日目に延期となりました。

実際に走ってみていかがでしたか?

「ラリージャパン直前になって、タイヤをダンロップに変えて出場したんです。そうしたらとても速くなって、同じカテゴリーの車両と比べてはもちろん、ひとつ上のラリー4よりも速いくらいのタイムが出たんです。タイヤもワンランク上、ブレーキもでかい、エンジンパワーもあるラリー4よりも速く、GRヤリスや86に近いかそれ以上くらいで走れたんです。もっとも、これが結果的に速すぎて(リタイアの原因となって)良くなかったのかも(笑)」(国沢)

国沢光宏×ルノー クリオRally5
国沢光宏×ルノー クリオRally5/Photo:青山義明

ラリージャパン2日目、満を持してSSに臨んだクリオ・ラリー5は、同クラスを大きく引き離す走りで徐々に順位を上げていきます。一方、初開催のラリージャパンでは世界有数のラリードライバーをもってしてもクラッシュが相次ぎます。

順調にSSで順位を上げたクリオ・ラリー5ですが、攻めた走りで右リヤをヒットさせてしまい、リヤハブベアリングのパーツ交換を余儀なくされることに。競技車両用の部品に予備はなく、チームはリタイヤも予感しますが、ここでミラクルが起きます。

国沢光宏×ルノー クリオRally5
フォーラムエイト・ラリージャパン2022/Photo:青山義明

応援で参加した名古屋の販売店が乗ってきた市販車のパーツを外して取り付けるという、ダメもとの解決策と現場のメカニックの奮闘でなんとか競技に復帰、チームから歓声が上がります。

そして迎えた3日目、リヤハブの交換はできたもののセッティングを完了するまでの時間が取れず、調子がなかなか上がりません。お昼のタイミングでアライメントを完調とすることができ、いよいよポテンシャルが高まります。

国沢光宏×ルノー クリオRally5
こんな狭い道も多かったラリージャパン。縁石、側溝、苔…敵は多いゾ/Photo:高橋学

上位クラスのラリー4をも凌駕する走りで順位を上げますが、そのポテンシャルをすべて出し切る走りを目指すあまり、砂に乗ってしまい、左コーナーで右フロントをヒットさせてしまいます。奇跡の復活を遂げた前夜でしたが、今回はドライブシャフトを含む競技車両専用部品を破損したため、残念ながらここでリタイヤとなってしまいました。

●ルノー・クリオ(ルーテシア)は運転好きの人も満足できるクルマ!

国沢光宏×ルノー クリオRally5
ヒットし壊してしまったパーツを市販車から移植したのだが…/Photo:青山義明

モータースポーツはチャレンジとリタイヤが紙一重のスポーツです。結果は残念でしたが、そこまでのチャレンジは称賛に値します。

ラリージャパンというWRCの舞台を走らせて、改めて、ルーテシアはどんなクルマだったでしょうか?

国沢光宏×ルノー クリオRally5
クリオ(ルーテシア)はいろんな意味でバランスのとれた、安全で楽しいクルマですね/Photo:高橋学

「実はポルトガルに行った時、レンタカーで借りたのがクリオ(ルーテシア)でした。普通のグレードでしたが、とても走りがよかったんです。今のモデルはヨーロッパで非常に売れているそうですが、それもよくわかりました。正直言ってルーテシアってあまり意識したことなかったんですけど、だいぶ認識が変わりましたね」(国沢)

ルーテシアはどんな人に似合いそうですか?

「以前は、フランス車やルノーが好きな人が乗るクルマだと思ってたんですが、今のモデルは人と違うクルマに乗りたい人、中でも運転が好きな人におすすめですね。フォルクスワーゲンのゴルフとかと比べてもパワー感が違ったり、ADAS性能などもルーテシアのほうがバランスが取れている気がします。新しいハイブリッドのE-TECHも魅力的です。まずは乗ってみてほしい。きっと運転が好きになると思います。この記事を読んでくれるような人なら“お、これは運転が楽しい”と感じてくれるハズです」(国沢)

国沢光宏×ルノー クリオRally5
来年も出たいぞ!?/Photo:高橋学

国沢さんは、このクリオ・ラリー5であと2年は日本でのWRCに出場すると明言しています。日本を舞台に開催される世界的なラリーで日本人が活躍する、そんな姿を応援していきたいですね。

(文:クリッカー編集長 小林和久/写真:高橋 学、青山義明)

【関連リンク】
ルノー・ジャポン公式ルーテシア https://www.renault.jp/car_lineup/lutecia/

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この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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