ヤマハ発動機のロボティクス事業部で気付いた産業用ロボットとバイクの意外な共通点とは?

■クラス世界最速レベルの産業用ロボットなどを開発

ヤマハ発動機の広報グループが発信しているニュースレターは、同社の幅広い事業領域について触れられています。今回のテーマは、異色のロボットエンジニアです。

ヤマハ発動機は、産業用ロボットを手がけていて、今回の主人公は、ロボティクス事業部に所属しているエンジニアの荒井將崇さん。

ヤマハ発動機 ニュースレター
6台のバイクと使い込まれた工具が並ぶ荒井さんのガレージ

オートバイのマニアだという荒井さんは「週末は、夫婦でツーリングに出かけるか、ガレージに籠ってバイクの部品をイジっているかのどちらかです。実家の家族もオートバイが好きで、子どもの頃からバイクに囲まれて育ってきました。高校を卒業して初めて買ったバイクはセロー250。楽しい道だらけの四国の大学に進学したので、財布にお金が残っていたことがなく、すべてガソリン代と消耗品代に消えていきました(笑)」とオートバイへの愛を語っています。

当然ながらヤマハ発動機への入社動機は、「オートバイを作りたかったし、ヤマハが好きだったから」だそう。

最終面接でも情熱的にバイク愛を伝えたそうですが、配属されたのはロボティクス製品の開発職場。入社以来、約10年間、スマホやクルマの電装部品に使われる基板に、微細な電子部品を装着する産業用ロボットの開発に打ち込んでいます。

「そういう事業をこの会社がやっているということは、就活中に初めて知りました。でも、自分とは無関係の世界だと切り離して考えていました(笑)」と、当時を振り返っています。

同社は、二輪車やマリン製品、自動車用エンジンやプール、このロボティクスの領域まで、幅広い事業を展開しています。広報担当者によると、それぞれの事業、製品によって、働く人たちには、醸し出す匂いや顔つきというものがあるような気がするそうです。スマートなイメージのある同事業部にあって、荒井さんからは「あ、バイクの人だ!」という印象を受けたとのことです。

ヤマハ発動機
プレミアム高効率モジュラー「YRM20」。高速ロータリーヘッドの採用により、クラス世界最速の小型チップ搭載能力を実現した

さて、電装エンジニアとして、荒井さんたちが開発した「YRM20」は、0.2×0.1mmほどのごく小さな部品を、わずか1秒間で32個もピッキングし、それを正確にプリント基板に装着することができる産業用ロボットです。

この速度は、クラス世界最速レベル(2ビーム・2ヘッドクラスの表面実装機における最適条件下での搭載能力比較。同社調べ)で、スマート化が進む電子製品の生産現場に劇的な効率化、高品質化をもたらしています。

荒井さんは、「プリント基板をサーキットに例えるなら、全力で加速してフルブレーキング、折り返してまたフル加速。この速度や挙動は、レーシングマシンにも通じます。フィールドは違っても、やっぱりヤマハ発動機が作るならそのあたりは譲れない。どうしても追求したくなります」と、オートバイ好きらしい喩えで説明しています。

荒井さんのガレージに並んでいるのは、旧いオートバイばかりの計6台。油で手を汚しながら整備していると、当時の開発者の苦悩や知恵の足跡を見つけることがあると言います。

「バイクは、灼熱や風雨の中を走って、熱や衝撃と戦っています。だからこそ、機能美を感じるんです。ロボティクス開発にも活かしたい学びや気づきがたくさんあります」と続けます。

成長する事業の第一線エンジニアとして活躍する荒井さん。もう入社当時の思いは消えましたか?と尋ねてみると、「そんなことはないです。いつかやっぱりバイクを作りたいです。ロボティクスの技術を極めていけば、オートバイの開発でもきっと貢献できるはずです。いまのところは、ガレージの中で欲望を満たしておきますけど…」と想いを披露しています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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