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■3代目フェアレディZに世界初のセラミックターボを搭載
1985(昭和60)年10月2日、日産自動車は1983年にデビューした3代目「フェアレディZ」(Z31型)に、世界初のセラミックターボ搭載モデルを追加。当時のターボの課題であったターボラグを軽減したモデルとして注目されました。
●世界レベルの走りを誇った3代目フェアレディZ
1983年にデビューした3代目フェアレディZは、排ガス規制やオイルショックを乗り越えたという時代背景もあり、高性能化とハイテク化を追求。“較べることの無意味さを教えてあげよう”という自信のキャッチコピーで登場しました。
初代から続くロングノーズ/ショートデッキの基本スタイルは踏襲しつつも、パラレルライジング式リトラクタブルヘッドライトや、バンパーとエアダムスカートの一体化など、空力を意識したフォルムを採用。
エンジンは、当時国内最高の230PSを発揮する3.0L V6 OHCターボ(VG30ET)と2.0L V6 OHCターボ(VG20ET)の2種、ちなみにV6エンジンのターボ搭載は日本初でした。
その走りは、国内では敵なし、ポルシェ911にも迫るほどでした。
●ターボラグ改善のために世界初のセラミックターボ搭載
3.0L V6 OHCターボが高性能で高い評価を得た一方で、2.0Lのターボは走りがおとなしいと評価は良くありませんでした。その評判を覆すために、2年後の1985年に2.0L直6 DOHC にセラミックターボを搭載(RB20DET)したモデルが追加されました。
最近は、ターボの過給圧遅れ(ターボラグ)はほぼ問題ないレベルまで改良されていますが、当時はターボラグが大きな課題でした。
加速時にアクセルを踏み込んでも一瞬応答せず、その後遅れて急加速するので“ドッカンターボ”と揶揄されていました。特に、高出力を目指した大型ターボほど、ターボラグは目立ちます。
これを解消するには、ターボのタービン回転部の慣性重量を減らすことが効果的で、軽量かつ耐熱性に優れたセラミックが選ばれたのです。タービンローターのインペラ部をセラミック化したセラミックターボによって、低速からでも過給圧が立ち上がるようになり、加速性能が30%以上も改善されました。
●1980年代の“ドッカンターボ”は、どのように解決されたのか
当時は、とにかく高出力・高トルクの時代だったので、大型のターボを使って高い過給圧に設定するのが一般的でした。その分、過給遅れのターボラグが目立ったのです。
最近も、ダウンサイジングターボというコンセプトでターボが使われています。目的は、高出力でなく燃費向上なので、低中速トルク重視の小型ターボが使われ、ターボラグは目立ちません。
さらに高温での機械的強度が高いNi基超合金製やTiAL製のタービンホイールが開発され、軸受にボールベアリングを使うタイプなども採用され始めています。これらの技術進化によって、ターボラグはほとんど気にならないレベルまで解消されたのです。
セラミックターボは、軽量で高温での機械的強度が強いというメリットの反面、脆いという欠点があります。最近は、前述のように新しい材料が開発されたこともあり、使用されなくなりました。
“ドッカンターボ”は、レスポンスが悪いということで敬遠されましたが、バックシートに押し付けられる急激な加速Gを体感できるので、それを楽しむ人も結構多かったですね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)