最高速360km/hへ。新幹線E956形「ALFA-X」の走行試験は第2段階へ

■JR東日本の新幹線試験車両E956形「ALFA-X」のすべて

●次世代型新幹線へ向けて

JR東日本の新幹線試験車両E956形ALFA-Xの走行試験のプログラムが2022年度から新しい段階に移行しました。

ALFA-X
東北新幹線仙台〜新青森間で試験走行を行っている新幹線試験車両ALFA-X

試験走行の第1段階は2019年5月〜2022年3月に実施。走行試験は主に営業列車が走らない深夜帯に行って各種開発品の性能を確認しました。

走行日数は計182日。走行距離は約14.5万km。期間中には最高速度400km/h程度の試験走行も実施。また、北海道新幹線の新函館北斗駅にも乗り入れています。

走行試験の第2段階では、地震対策を始めとした各種開発品の耐久性の確認と、車内におけるお客様サービスの研究開発と将来の自動運転を実現するための基礎的な研究開発を目的としています。

●ALFA-Xの役割と特徴

ALFA-X(Advanced Labs for Frontline Activity in rail eXperimentation=最先端の実験を行うための先進的な試験室)は、JR東日本のグループ経営ビジョン「変革2027」における「次世代新幹線の開発」を、「さらなる安全性・安定性の追求」「快適性の向上」「環境性能の向上」「メンテナンスの革新」の4つのコンセプトで進めるために開発されました。

ALFA-Xの目的のひとつは、最高速度を現行の320km/hから360km/hへ引き上げることの可能性を検証すること。そのために騒音を低減させるためにデザインされた先頭部や、新型の低騒音パンタグラフを開発し、ブレーキディスクの裏面フィンの形状を最適化しています。

乗り心地向上策としては、半径4000mのカーブを360km/hで通過するために車体を2度傾斜させる車体傾斜装置を搭載するほか、新たに上下制振装置を搭載しました。また、地震発生時に早く安全に止まるための空気抵抗増加板ユニットやリニア式減速度増加装置と、脱線を防止するための地震対策ダンパを装備しています。

そのほか、着雪しにくい車体構造や北海道の寒さから機器を守る工夫。台車モニタリングシステム。そして車両状態を地上でモニタリングすることによる状況把握や故障予知把握、CBM(Condition Based Maintenance=状態基準保全)によるメンテナンス性の向上を図っています。

●ALFA-X走行試験の第2段階は耐久テストが中心

第2段階の試験走行は、主に営業列車が走る時間帯に東北新幹線仙台〜新青森間で実施。今のところ最高速度は営業列車と同じで、1日3往復しています。試験内容によってはそのほかの区間でも試験走行を行う予定で、すでに那須塩原〜仙台間で試験走行をしています。今後大宮や東京への入線にも期待したいところです。

ALFA-X
ALFA-Xの試験メニューは耐久テストに移行。今のところ仙台〜新青森間を3往復して走り込んでいます

ALFA-Xを使用して開発する次世代新幹線は、東北・北海道新幹線向けの車両となると思われます。ALFA-Xは2030年度末に開業を予定している北海道新幹線新函館北斗〜札幌間も視野に入れて、スピードアップや接客設備の快適性の向上に取り組んでいます。

そんなALFA-Xの試験結果を反映させた新型車両が、どのような姿で登場するのか。今から楽しみです。

ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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