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■SF今季第4戦は5月21日-22日の週末、九州に舞台を移して
日本のモータースポーツ界のトップカテゴリー、スーパーフォーミュラ(SF)は、4月に2イベント・3レースを戦い、富士スピードウェイの開幕緒戦では平川亮、翌日の第2戦では野尻智紀がそれぞれ優勝。
続く雨の鈴鹿では松下信治がSF初勝利を手にしました(それぞれのレースで何が起きていたかの”読み解き”レビューへのリンクを貼ってありますので、未読の方は試しに一読を)。
そして今週末は第4戦が九州・オートポリスで開催されます。そのスーパーフォーミュラ第4戦がどんな「段取り」と「約束事」で戦われるかを整理しておきますので、現地で、あるいはリモートでの観戦の”参考”にしていただければ、と。
ここオートポリスは、阿蘇外輪山の山肌に広がるレーシングコース。晴れていれば緩やかな斜面を駆け下り、駆け登り、その中に次々とコーナーが現れる、一般車で走っても楽しい、おもしろいコースが、高台に席を取れば広々と、そしてコースの遠近複数のポイントを同時に見渡せる一方、コースサイドで観戦すればトップ・フォーミュラの圧倒的な”速さ”、動きの”鋭さ”を、マシンが切り裂く空気の震えと、そしてエキゾーストノートとともに満喫できる。そういう”舞台”です。
が、山岳地ならではの問題がひとつ。天候が変わりやすい。近年のスーパーフォーミュラのレースでもほぼ1年おきに雨と霧(現地の方々によれば「阿蘇山にかかる『雲』の中です」)に、満足な競争ができないことが起きています。
しかし今週末の気象予想は「曇り・晴れ」。2年ぶりにドライ路面の戦いが楽しめそうです。
また今回は、前戦・鈴鹿に続いて「2&4」レース。モーターサイクル・レースの国内最高峰クラスである「JSB1000」との併催。観る側としては、日本の異なるトップカテゴリーの競争を楽しめて「二度美味しい」のですが、走る側からすれば、2輪は前後のタイヤが直線上に並んでいて、多少「横すべり」するものの、コーナーでは路幅の外側いっぱいから内側ギリギリまでを斜めに交差するライン上を駆け抜けます。
これに対して4輪は、幅広いタイヤがまず四角い平面形を形作っているので、その軌跡は1.5mほどの幅のある「帯」を描きます。
それぞれに今日のレーシングタイヤはその表面が発熱によって溶け、ベタベタに粘着することで”グリップ”する。その「溶けゴム」が次々に路面に付着して残る。つまり、路表面にゴムの帯ができてゆく。2輪と4輪が入れ替わり立ち替わり周回を重ねると、それぞれに自分たちのタイヤとは異なる特質のゴムが残った帯をコーナーへのアプローチで、そして脱出で、斜めに交差して横切らざるをえません。
もちろんライダー、ドライバーたちはその微妙なグリップの変動を、それによるマシンの挙動の瞬間的な変化を、刻々と感じ取っているのです。だからじつは4輪と2輪のレースを同時開催すると、走る側はけっこう悩ましい。こんなことも知りつつ見ると、モータースポーツ観戦はさらに深みを増すはずです。
●スーパーフォーミュラ 2022年第4戦 オートポリス「レース・フォーマット」
・196.308km(オートポリス・インターナショナルレーシングコース 4.674km×42周)
・最大レース時間:75分、中断時間を含む最大総レース時間:120分
・タイムスケジュール:土曜日・午後2時50分〜公式予選、日曜日・午後2時30分〜決勝レース
・予選方式:ノックアウト予選方式
⚫︎2グループ(A組・B組)に分かれて走行する公式予選Q1、そのそれぞれ上位6台・計12台が進出して競われる公式予選Q2の2セッションで実施される。
⚫︎公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は7分間の走行。
⚫︎公式予選Q1のグループ分けは、第3戦決勝終了時のドライバーズランキングに基づいて、主催者(JRP)が決定する。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
⚫︎Q1の組分け(車番のみ記すと…) A組: 4,5,12,14,15,18,20,36,38,55,64(11車) B組: 1,3,6,7,19,37,39,50,53,65(10車)
⚫︎Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
⚫︎Q2の結果順に予選1~12位が決定する。
●タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク・ドライ1スペック、ウエット1スペック
ドライタイヤは、設計、構造・素材などについては、2019年2スペックあった中の「ソフト」が2019年以降使用されてきましたが、今季に向けてリアタイヤのみショルダー部の断面形状(プロファイル)がちょっと「ラウンド・ショルダー」に変更されている。これによって、コーナリングに入る最初の「過渡的な運動」で、リアタイヤに「体重を乗せていく」中から摩擦力が立ち上がるプロセスが穏やかになるはずだが、ドライバーにとっては「踏ん張り」が現れるが遅れる、という感触につながります。
基本的なサイズが変わらず、もちろん骨格(カーカス)構造も、トレッド・コンパウンドも変わっていないので、一気に「体重を預けて」旋回に入ってしまえば、グリップする感覚は「変わらない」。そう体感したドライバーも多いという。しかしその一方で、車両運動の、とくに旋回に入って行く過渡的なプロセスを大事にする、あるいはその中で起こることを敏感に感じ取れるドライバーは、ちゃんと過渡特性の変化を体感しています。
それ以上に、レース展開への影響が大きそうなのは、デグラデーション(タイヤの消耗によってラップタイムが低下する、その変化)の現れ方である。第1戦で優勝した大駅エンジニア、第2戦で優勝した一瀬エンジニアともに、「去年までのタイヤよりでデグラデーション傾向が現れるのが早い」と、実戦でレース距離を走った印象を語っています。
第3戦の鈴鹿は決勝日が雨。ウエット路面・ウエットタイヤでのレースになったことで「SFが開催されるサーキットの中で最もタイヤに厳しい」と言われる鈴鹿でのでグラデーション特性がどうなるか、は確認できていません。2019年にSF19が導入されてからオートポリスでドライ路面で決勝レースがフルに行われたのは2020年だけ。さらにリアタイヤの微妙な特性が変わった、ということで、今戦のタイヤ消耗がどうなるかの予想は難しい。ここがレースの「鍵」のひとつになるのは間違いありません。
●決勝中のタイヤ交換義務:あり
⚫︎スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
⚫︎先頭車両が10周目の第1セーフティカーラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること(オートポリスの第1SCラインは最終コーナーの曲線部が終わり、コース図面としては直線に移行した先に引かれた白線。左側の縁石の中間部でその外ではグラベルベッドの幅が縮小し始めている地点。ちなみに第2SCラインはピットロード出口レーンが本コースと合流、コース幅員が一定になるところに引かれた白線)。
⚫︎タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
⚫︎レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は、交換義務の対象として認められる。
⚫︎レースが(42周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
⚫︎決勝レースをウエットタイヤを装着してスタートした場合、およびスタート後にドライタイヤからウエットタイヤに交換した場合は、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、決勝レース中にウエットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行った時に限られる。
●タイヤ交換義務を消化するためのピットストップについて
・ピットレーン速度制限:60km/h
・ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム
オートポリスのピットレーンに進入して速度制限区間が始まるのは、シケイン状の入路の最初の左カーブを曲がったところ、左右の縁石が切り替わるところに引かれた線であり、出口側の速度制限解除はピットビル端のパドックとの通路の幅中央・ピットウォール端で、この区間の長さをGoogle Map上で測ると317mと短め。
これを時速60km/hで走行し、途中に停止・発進が入った走行時間の机上概算値はおよそ20秒。これにピットロード手前の減速と本コースに戻る加速のロスを加えた走行時間と、レーシングスピードでメインストレートを駆け抜けた場合との差、いわゆる「ピットインによるロスタイム」は24〜25秒ほどと推定される。
これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが1周弱で失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えた最小で32秒、若干のマージンを見て33〜35秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間となる。この時間差が、ピットストップによって順位変動が起こるかどうかの目安になるのです。
●タイヤ使用制限:ドライ(スリック)タイヤに関して
・大会週末2日間を通して、各車に新品・3セット、前戦までに入手したものの中から「持ち越し」3セット。
新品タイヤは予選Q1、Q2、そして決勝スタートにそれぞれ装着、が基本。予選でQ2進出を逸した車両は、決勝レース途中で交換する2セット目にも新品が残るが、Q2まで走った車両はこれが予選を走った「1アタック品」になる。
というのが通常のパターンなのですが、前戦・鈴鹿の決勝日が雨だったため、ドライであればスタートに履いたはずの新品を各車が残しているし、予選がQ1止まりだった車両は新品をもう1セットと「1アタック品」1セット、Q2に進出した12車も「1アタック品」2セットが手持ちに残っているはず。ということは、今回は土曜日からドライ路面でもコンディションの良い持ち越しタイヤでフリー走行から走り始め、その後半で新同品を投入して予選シミュレーションができる、はず。
走行前のタイヤ加熱:禁止・決勝レース中の燃料補給:禁止
●燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(122.1L/h)
燃料リストリクター、すなわちあるエンジン回転速度から上になると燃料の流量上限が一定に保持される仕組みを使うと、その効果が発生する回転数から上では「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇に反比例してトルクは低下します。一瞬一瞬にクルマを前に押す力は減少しつつ、それを積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになります。
●オーバーテイク・システム(OTS)
・最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)
・作動合計時間上限:決勝レース中に「200秒間」
⚫︎ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
⚫︎作動開始後8秒経過してからロールバー前面のLEDおよびテールランプの点滅開始。ロールバー上の作動表示LEDは当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。残り時間がなくなると消灯。
⚫︎一度作動させたらその後100秒間は作動しない。この状態にある時は、ロールバー上のLED表示は「遅い点滅」。なお、エンジンが止まっていると緑赤交互点滅。 OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度まで、この出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
⚫︎富士ラウンドから、予選で各車・人がアタックラップに入っていることを知らせるべく、このロールバー前面LEDを黄色に点滅させる「Qライト」が導入されている。
これらを踏まえつつ、スーパーフォーミュラ第4戦 オートポリスの2日間を、リアルでも、オンラインでも楽しんで下さい!
(文:両角 岳彦/写真:JRP、 両角 岳彦)
【関連リンク】
・スーパーフォーミュラ公式ウェブサイト「2022年のLIVE中継について」
https://superformula.net/sf2/headline/34862
・SF公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/superformulavideo/featured
・SF公式サイト「ライブ・タイミング」
https://superformula.net/sf2/application
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