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■新型ランドクルーザー、巨大だけどデカく見えない手法とは?
2021年8月2日、14年ぶりにモデルチェンジされたトヨタの「新型ランドクルーザー(300シリーズ)」は、発売直後から数年待ちのバックオーダーを抱える人気ぶりと聞きます。その好評の理由について、ここではデザインの面から紐解いてみたいと思います(GRシリーズを除く)。
●ランクルらしさを継承する
新型のデザインコンセプトは「Brutal & Sensual all-roader」。「タフで強靱」であることと「洗練された大人の魅力」という相反する要素の、高い次元での両立です。そのため「ランクルヘリテージ」を掲げ、歴代を継承した造形を目指しました。
そのひとつが、先代の4950mmという全長と2850mmのホイールベースを変えなかったこと。全幅と全高は拡大していますが、基本となるスタンスに関しては、いわはランクルの「黄金比」を継承したわけです。
もうひとつが、キャビンを後ろ寄りに配置する「キャビンバックワードプロポーション」です。これによりフードの長さが強調され、より力強い走りをイメージさせるプロポーションとしています。
さて、その上でフロントからじっくり見てみます。まず、写真では超巨大な「顔」が印象的ですが、それを演出する4段の派手なグリルは、実車を見ると思ったほど巨大ではありません。実際には、グリル左右のエアインテークと組み合わされることで「デカさ」を感じるようです。
とくに白いボディなどは、このエアインテークの外側をさらにボディが被うので、膨張してより大きく感じます。逆に、たとえばブラックのボディでは、このエアインテークの黒とボディが溶け込み、顔のデカさは「ほどほど」に感じられるのです。
また、実車では左右のランプ部が斜めにカットされ、フロントが意外に絞られていることにも気が付きます。これもまた、写真のような巨大さを感じさせない理由のひとつと言えそうです。
●サイドにも軽快さの理由が
次にサイドビューですが、要素としては台形ホイールアーチと、ショルダーの柔らかいラインがメイン。大きなホイールアーチは4輪の存在感を強調した表現ですが、それでもサイドビュー自体に過剰なデカさは感じられません。それは、後端に加え、Aピラーの根本でも持ち上げられたサイドウインドウの形状によると思われます。ウインドウ前後がピックアップされることで、一種の軽さを感じるのです。
ひとつ気になるのは、リアランプの上からフェンダーに向けてナナメに引かれた1本の線です。さまざまな要素が大きくシンプルに表現されている中、なぜこんな細くて弱い線をわざわざ入れたのか? ちょっと最近のトヨタの「クセ」が出てしまった感じです。
最後にリアビューですが、真後ろから見ると、どっしりしたボディの上に載るキャビンは意外なほど絞られています。これはプロユースと同時に、オンロードも意識された同車らしいところ。ただ、縦横比がほぼ正方形に近いこともあり、もう一歩安定感が欲しい気がします。横長のランプはシンプルでいいのですが、よりワイド感を出す工夫があってもよかったと思えます。
●突き詰めるか、ハジケるか?
さて、新型の好評な売れ行きは、おそらくこのボクシーなイメージによるところが大きそうです。筆者も最初に写真で見たときは、いまどき随分思い切ったなと感じました。ただ、実車を前にすると、想像以上に先代のイメージを残していて、決して「巨大な四角い箱」でないことが分かります。
それもあり、個人的にはもっと振り切ってもよかったと感じています。たとえば、よりボクシーさを極めて個性を強めるか、あるいは歴代を現代的に大きく再構築するなどです。とくに後者は、悪路走破性がウリであっても、たとえばランドローバーの新しい「ディスカバリー」のようなアプローチもあり得るのですから。
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