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■新しい「クルマの定額制サービス」をユーザー調査
最近話題のクルマの「サブスク(サブスクリプションサービス)」や「カーリース」。カーシェアリングと並び、新しいクルマの所有方法として注目されていますが、実際に一般ユーザーの認知度や利用動向などはどうなのでしょうか?
特に、コロナ禍の影響により最近は「密」を避ける移動手段としてクルマが注目されていますが、サブスクやカーリースの利用者なども増えているのでしょうか?
リサーチ・コンサルティング企業のJ.D.パワー ジャパン(以下、J.D.パワー)では、2021年6月に「コロナ禍でのカーライフやクルマの意向」に関するアンケート調査を実施。
その調査内には、クルマの定額制サービス「サブスクリプション」と「カーリース」に関する一般消費者の考えを聞いたものもあり、いずれも認知度はかなり高いものの、まだまだ利用を検討する人は少ないことなどが分かりました。
●クルマのサブスクとカーリースの違いは?
今回の調査は、20〜69歳の計2800名を対象に、インターネットによるアンケート形式で行われたものです。
なお、ここで紹介する「サブスクリプション」と「カーリース」は、いずれも月額制でクルマを利用できる定額制サービスのこと。税金や点検整備代、車検代などの維持費も含まれた料金設定をしているところも多く、基本的に両者は非常に似ているサービスです。
サブスクは、音楽や動画、ファッション、食品などではすでにおなじみですが、クルマに関してはここ数年で登場してきました。
特に、注目なのは、2019年にトヨタが開始した「KINTO(キント)」をはじめ、ホンダの「ホンダマンスリーオーナー」、日産の「クリックモビ」、スバルの「SUBARUサブスクプラン」など、自動車メーカーが参入していること。
また、メーカー以外では「「NOREL(ノレル)」などのサービスも有名です。
一方、カーリースは昔から企業向けとしてはありましたが、最近は個人向けサービスも登場しています。
コスモ石油の「コスモMyカーリース」など石油元売り企業が運営するものや、損保会社のSOMPOホールディングスとDeNAが運営する「SOMPOで乗ーる」、スタートアップ企業ナイルが運営する「定額カルモくん」など、さまざまな企業が参入しています。
サブスクとカーリースは、どちらも新車を提供するものから、中古車をリーズナブルに乗れるものなど、各社の契約内容によりサービスもさまざま。
どちらも、契約期間の所有者は提供会社で、ユーザーは使用者になるなど、似ている面も多いのですが、一番の違いは契約期間でしょう。
サブスクは、最短1ヵ月など月単位で契約できるものも多い一方、カーリースでは3年、5年、7年など年単位の契約が一般的です。ただし、トヨタのキントなど、サブスクでも契約期間は年単位のものもあります。
●クルマのサブスクを知っているのは56%
話を調査内容に戻しましょう。アンケートでは、まず「クルマのサブスクリプションサービスについて知っているか」を質問。結果は、
「名前は見聞きしたことがある」33%
「サービス内容を何となくは知っている」18%
「サービス内容を詳しく知っている」5%
「知らない」45%
で、全体の半数以上(56%)の人が、クルマのサブスクについて存在を少なからず認識していることが分かりました。
また、この結果を世代別に見てみると、どの世代で見てもサブスクの認知率(「名前は見聞きしたことがある」「何となくは知っている」「詳しく知っている」の合計)が55〜56%という結果に。
調査を行ったJ.Dパワーでは「サブスク各社は主に若者やクルマを保有していない層をターゲットにした施策を実施している印象」があるものの、「世代による開きは見られなかった」と言及。
一方、調査のレポートでは、サブスクを「知っている」人たちを、現在クルマを「保有している層」と「保有していない層」で比較したところ、
「保有している」59%
「保有していない」45%
となり、「クルマを保有している層のほうがサブスクに馴染みがある」と分析しています。
●カーリースを知っている人は74%
次に、調査では「カーリースについて知っているか」も質問。結果は以下の通りです。
「名前は見聞きしたことがある」39%
「サービス内容を何となくは知っている」26%
「サービス内容を詳しく知っている」9%
「知らない」25%
以上から、カーリースのことを何らかの形で知っている人は全体の7割以上(74%)を占め、認知度はかなり高いことが分かります。
また、この結果を世代別に見ると、シニア層(60~69歳)では85%が認知しているのに対し、若年層(20〜34歳)では67%となるなど、世代により開きがあることも判明しています。
さらに、カーリースを「知っている」人たちを、現在クルマを「保有している層」と「保有していない層」で比較したところ、
「保有している」80%
「保有していない」58%
と、保有の有無で大きな開きがあることも分かっています。
J.D.パワーは、これら結果について「サブスクと異なり、クルマを保有している層やシニア層では特にその存在が認識されている」と分析しています。
●利用を検討する人はどちらも1割未満
今回の調査では、「クルマの保有や利用の仕方について今後検討するもの」についても質問。結果は次の通りです。
「新車の購入」51%
「中古車の購入」32%
「レンタカーの利用」15%
「カーシェアリングサービスの利用」6%
「カーリース利用でのクルマの保有」5%
「サブスクリプションサービス利用でのクルマの保有」4%
「個人間カーシェアリングサービスの利用」2%
以上により、サブスクもカーリースも、「利用を検討する」と回答した人が全体の1割に満たないことが分かります。
調査を行ったJ.Dパワーは、これら結果により、「認知率はサブスクリプションサービスで2人に1人、カーリースで4人中3人」と大きいことが判明したとコメント。
ただし、内訳は「名前を見聞きしたことがある」程度にとどまっている人が過半数を占めていることから、「現状ではカーリースやサブスクといったサービスへの馴染みが薄いことがうかがえる」と分析しています。
また、「利用に関する関心度についても、世代やクルマの保有有無を問わず、まだ低い水準にある」ことが明らかだといいます。
さらに、「各社が消費者に向け、幅広いモビリティスタイルを提案していく中で、サービス内容やメリットをどう効果的に訴求していけるかが、今後クルマのサブスクリプションサービスやカーリースの普及のカギとなる」としています。
新しいクルマの所有手段として出てきたサブスクやカーリースですが、いずれにしろ、今回の調査をみる限りでは、普及にまだまだ時間がかかりそうな印象です。
(文:平塚 直樹 *写真はイメージです)