■欧州ではSUVが新車販売の4割以上を占める
●トヨタのベーシックモデルがクロスオーバー化するのは必然か?
トヨタヨーロッパが、次期コンパクトカーのデザインスタディといえる「アイゴクロスプロローグ」を発表しました。アイゴ(AYGO)というのは2005年のデビュー以来、欧州市場でのエントリークラスであるAセグメントモデルとして、トヨタブランドにとって重要な役割を果たしてきたモデルです。
アイゴクロスプロローグをデザインしたのは、フランス・ニースに拠点を置くトヨタのデザインスタジオED2(EDスクエア)。従来のアイゴはオーソドックスなハッチバックスタイルのコンパクトカーですが、アイゴクロスプロローグは見ての通り、いかにもなクロスオーバーSUVスタイルとなっています。
そのフォルムは大径タイヤを軸に、末広がりなスタンスが効いているもの。ひとめでアクティブな雰囲気を持ち、サイズ感を喪失するかのようなダイナミックなスタイルを実現しています。
次期アイゴがすべてSUVになるのか、ヤリスに対してヤリスクロスが出たようにSUVのバリエーションが増えるのか、現時点での発表内容を見る限りは不明ですが、欧州自動車市場において4割以上がSUVになっているという状況を考えると、完全にSUVにシフトすることで付加価値を高めていくのが得策といえるかもしれません。
アイゴクロスプロローグのスタイリングでテーマとなっているのが六角形。フロントグリル、フォグランプ、スキッドプレート、テールランプなどが六角形をモチーフにした形状となっています。
2トーンに塗り分けられたボディはアクティブなイメージ。リヤのスキッドプレートに自転車を搭載するためのホルダーマウントが収納されているというのも、行動的なユーザーを意識したアイデアといえるでしょう。
さらにユニークな装備といえるのが、ドアミラー部に見えるレンズでしょう。なぜここにレンズがあるのかといえば、けっして先進安全機能のためではなく、アクションカメラを内蔵しているためということです。
アイゴクロスプロローグとのカーライフで、印象的な瞬間があれば逃すことなく共有できることが可能というわけです。
ちなみに、アイゴクロスプロローグのボディカラーは「スパイシー」をキーワードにしたもので、まさに唐辛子をイメージした「スパークリングチリレッド」というカラーを生み出しています。レッドの中に、ブルーメタリックフレークを混ぜることで色に深みを与えているのもポイントです。
外観での特徴は翼のようなイメージのヘッドライトですが、もっと気になるのはグリルレスデザインを採用していることではないでしょうか。こうしたデザインは電気自動車を想起させるものです。
なにしろ欧州の自動車市場全体でいっても、新車販売の5台に1台はプラグイン(電気自動車など)になっていますし、前述したようにSUV比率も高まっています。
近距離ユースがメインのAセグメントだからこそ電気自動車との相性もよいというのは、よく言われることです。アイゴクロスプロローグのコンセプトからは電気自動車を想定している可能性も十分にあり得ると感じさせられます。
床下にバッテリーを積んでも、スタイリングやパッケージにネガを生まないボディスタイルとしてSUVが選ばれたと考えると、アイゴクロスプロローグのデザインは次世代コンパクトの商品企画をも示すものとして捉えることができるのかもしれません。
(山本 晋也)