トライアルとは?岩や崖などの障害物をいかに上手く乗り越えられるかを競う【バイク用語辞典:バイクレース編】

■速く走らせる技術でなく、バイクを意のままに操る技術が問われるオフロードレース

●障害物が設定されたいくつかのセクションをいかにミス(減点)なく通過するかを競う

スピードを競うスプリントレースでなく、岩や壁などの障害物をミスなく乗り越えられるか、バイクを意のままに操る技術を競うレースです。レースは、障害物を設定したいくつかのセクションを倒れず足をつかずに走行できるかを、減点法で競います。

モータースポーツの中では珍しい、スピードでなく、ライディング技術を競うトライアルについて、解説します。

●トライアルとは

オフロードレースの分類(トライアル)
オフロードレースの分類(トライアル)

速く走らせる技術ではなく、バイクを意のままに操る技術が問われる競技がトライアルです。大きい岩や崖、人工的に作った障害物が設定された、「セクション」と呼ばれる競技区間を、いかに倒れず、バイクに乗ったままミス(減点)なく乗り越えるかを競います。

セクションの入口から出口まで、足を着かずにスムーズに乗り越えれば、減点は0(「クリーン」と呼ぶ)です。

例えば、セクション通過中に1回足を着くと減点は1点、2回で2点、3回以上の足着きは3点の減点。セクション内でバックさせた場合や足を着いた状態でエンジンを停止させた場合などは、5点の減点が課せられます。また、セクションでは、スタートしてからゴールまで1分程度の制限時間が決められており、それをオーバーすると失敗とみなされ、5点減点されます。

このような10~15ヶ所のセクションを2~3回走行し、トータルの減点をいかに少なくできたかで、順位が決まります。

●トライアル用バイク

トライアルは、駆動力を発生してない状態でも車両を停止させ続けたり、静止状態から前輪を一気に高く持ち上げたり、前輪と後輪の両方を浮かせて方向転換したり、といった通常とは全く異なる曲芸的なライディング技術が必要です。

ホンダRTL300R
ホンダRTL300R

トライアル用バイク(トライアラー)は、オフロード用バイクをベースにしています。セクションで競技中のライダーは、基本的にステップバーに立った状態でバイクをコントロールするので、シートは実用性のない最小限の大きさに設計されます。また自在に操るためには軽量化が重要で、世界選手権で使用する専用バイクの重量は70kg程度です。

トライアル風景
トライアル風景

エンジンは、モトクロス同様に瞬発力が必要なので低速トルクが大きく、軽量コンパクトな単気筒エンジンが使われます。かつては、空冷2ストロークエンジンが主流でしたが、現在は環境問題を考慮して250cc前後の水冷4ストロークエンジンが増えつつあります。

●FIMトライアル世界選手権

トライアルの最高峰がFIM(国際モーターサイクリズム連盟)トライアル世界選手権です。

世界8カ国で年間8大会が開催されます。最上位クラスはトライアルGPクラスと呼ばれますが、搭載エンジンの排気量に制限はありません。これは、エンジン排気量が大きくなると出力は上がりますが、一方で重量が増加するのでトライアル競技にとって必ずしも排気量増大が一概に有利と言えないからです。

FIMトライアル世界選手権シリーズの日本開催は、トライアル世界選手権日本グランプリと呼ばれ、ツインリンクもてぎ(栃木県)で開催されます。残念ながら2020年はコロナウィルスの影響で中止になりました。MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)主催の日本最高峰の大会は、全日本トライアル選手権で、シリーズ7戦で競います。


最近は、体育館など屋内型の施設の中に人工的なセクションを設定して行われるインドア・トライアルという競技も行われています。世界選手権シリーズもあり、観客はスタンド席からコースのすべてを見ることができるので人気を呼んでいます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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